「オトコ・フタリ」三人芝居の魅力とは、山口祐一郎「準備しないことが準備に」
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左から保坂知寿、山口祐一郎、浦井健治。
「オトコ・フタリ」の取材会が、去る11月12日に東京都内で行われ、山口祐一郎、浦井健治、保坂知寿が出席した。
本作は、NHK大河ドラマ「篤姫」の脚本、NHK大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」で知られる田渕久美子が脚本を書き下ろし、山田和也が演出を手がける三人芝居。作中では、画家・禅定寺恭一郎(山口)と、禅定寺の家政婦・中村好子(保坂)、そして禅定寺のアトリエに踏み込んできた若者・須藤冬馬(浦井)によるコメディが展開する。
ミュージカルの大作を何度も経験している3人だが、本作はストレートプレイとなる。記者から少人数の舞台ならではの魅力を尋ねられると、浦井は稽古中に山口が「毎回新鮮に、違っていてもいいよね」と話していたことを挙げつつ、「三人芝居なので、その日の気分や天気、お客様の反応でお芝居が変わるかも。いい意味で余白がたくさんあると感じているので、自由に、遊ぶように舞台を“泳ぎ”回れたらいいなと思います」と意気込みを述べた。
保坂は小編成の舞台の特徴を「とにかく毎日稽古ができること」と答え、「大きな作品だと、自分が出ないシーンの稽古の日はお休みになったり、稽古したいのにできない時間があったりして……でもこの作品では、普通なら手薄になりそうな細かい部分まで突き詰めていけそうです。今は立ち稽古で、いろいろ探りながら決めている最中。稽古を繰り返すうちに、より楽しい舞台になる予感がしています」と目を輝かせた。
「出演者は3人ですが、大規模な舞台と同じように何十人もの方が関わっているのは普段と同じ」と言うのは山口。さらに山口は「今後ウィズコロナの時代では、少人数でなければ上演が難しくなる可能性もある。そういう意味で今回のような小編成の舞台は、最後まで生き残るタイプかなと思います」と所感を述べ、「田渕さんにはぜひ、シリーズで脚本を書いてほしいですね(笑)」と期待を寄せた。
取材会では、山口の役作りについての話題も。普段は作品の舞台となる国を訪れたり資料を読んだりといった準備を欠かさないと語る山口だったが、今回は「初めてですよ、まったく準備しないというのは」とのこと。今作で抽象画家の禅定寺役を担う山口は「『抽象画家は哲学者と同じで、“前提”がない』『そのときの自分の心情だけで大丈夫』と(演出の山田に)言われました。いつもは登場人物に共感するために舞台設定を勉強しますが、今回は逆に準備をしないことが準備になっています」と明かした。
なお本作はストレートプレイだが、あるヒット曲が物語のキーとなる。この日、取材会に先んじて行われた製作発表では、キャストたちがこの歌唱シーンに言及した。山口はこの曲がアカペラで歌われることを紹介し、「伴奏がないのに、健ちゃん(浦井)と保坂さんはオリジナルキーで歌い始めたことにジェラシーです。性能が違うというか……信号待ちをしていたら隣に来たすごい車がビューンと行ってしまい、いくら飛ばしても追いつけない感じ(笑)」と自分たちを自動車に例えて共演者を称える。
浦井は山口の絶賛に、「山口祐一郎さんを前にアカペラで歌うなんて、“処刑”に近い」と苦笑いを浮かべる。また保坂はその楽曲が物語の流れの中で「ぽそっ」と歌われると言い、「うまくない歌を、山口さんや浦井さんが歌われるなんてすごいですよね(笑)」とコメント。これを受けた山口も「そうそう、山田さんが『うまく歌わないで』って言ってた!」と同意し、「僕は浦井さんの歌を昔から聞いていますけど、今が一番いいんです。今回はうまく歌ってはいけないそうですが、こうしてまた(観客を)だますんだなあ……」といたずらっぽく微笑み、報道陣を笑いで包んだ。
「オトコ・フタリ」の上演は12月12日から30日まで東京・シアタークリエ、来年1月15日から17日まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、23・24日に愛知・刈谷市総合文化センター アイリスにて。
「オトコ・フタリ」
2020年12月12日(土)~30日(水)
東京都 シアタークリエ
2021年1月15日(金)~17日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2021年1月23日(土)・24日(日)
愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス
脚本:田渕久美子
演出:山田和也
出演:山口祐一郎、浦井健治、保坂知寿