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『エール』津田健次郎が“一人吹き替え”で語った「イヨマンテの夜」誕生秘話 華には恋の予感?

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リアルサウンド

 戦後の裕一(窪田正孝)は、作曲家として戦前以上に多忙を極めていた。歌謡曲以外にも、池田(北村有起哉)とのラジオドラマで作曲と演奏を担当。並行して映画の主題歌や現在も歌い継がれる多くの校歌・社歌を手がけた。

 『エール』(NHK総合)第112話では「イヨマンテの夜」の誕生秘話が明かされた。劇中で佐藤久志(山崎育三郎)が歌う「イヨマンテの夜」は、紆余曲折を経てヒット曲となる。その一部始終を、津田健次郎が裕一、池田、久志、杉山(加弥乃)の声を吹き替えて語った。津田は第97話でも久志の麻雀仲間・犬井として登場しており、反響が大きかったのか、今回は声優としてのポテンシャルをフルに発揮。声色だけでなく、抑揚や話し方のリズム、言い回しのクセなど、それぞれの特徴をうまく捉えていた。

 特に裕一の“完コピ”ぶりは徹底していて、何度か窪田本人ではないかと錯覚してしまったほど。杉山のパートではキャラを誇張して面白おかしく聞かせる遊び心もあり、耳に心地よいサプライズとなった。音楽が主役の『エール』で「声」が重要な役割を担ったことは特筆すべき点だ。朝ドラの原点であるラジオドラマとのつながりを示しながら、語りの幅を広げた『エール』は、今後の作品に大きなヒントを残したと思う。

 『鐘の鳴る丘』の挿入歌から生まれた「イヨマンテの夜」は「リズムが16分音符と8分音符の2拍子系なのにメロディーは三連符が続く」難曲。そのことは、オリジナルの伊藤久男(久志のモデル)の後に、細川たかしや秋川雅史ら抜群の歌唱力を持つ歌手にカバーされていることからもわかる。難しすぎてレコード会社がさじを投げたが、久志が執念でヒットさせたという逸話は史実どおりだ。

 看護婦の呼称が一般的だった1950年代、急速に移り変わる世相はドラマにも反映される。「テレビに洗濯機に冷蔵庫。スーパーマーケットもできたわ」と吟(松井玲奈)。海の向こうではエルヴィス・プレスリーが流行し、池田のシャツの柄も派手になる。

 変化の兆しは華(古川琴音)にも。25歳で仕事に一生懸命な華は疲れ気味な様子。そんな娘を見た音(二階堂ふみ)は「潤いが足りないのね。恋しましょう」とお見合い大作戦を勝手にスタート。猪突猛進な母が夏彦(坂口涼太郎)を思い出していた頃、華は病棟で霧島アキラ(宮沢氷魚)の腕に包帯を巻いていた。忘れてはいけない第23週のタイトルは「恋のメロディ」。さて、華とアキラの間には、どんなメロディが流れるのだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/