加藤シゲアキ、“表情のない”演技がなぜハマった? 『ゼロ 一獲千金ゲーム』で見せたひたむきさ
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日本テレビ7月期日曜ドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』が9月16日に最終回を迎えた。勝てば賞金1000億円、負ければ死が待つ命懸けのサバイバルゲームに挑む若者たちの姿が描かれた。主人公の義賊・宇海零を演じたのは、ゴールデン・プライム帯のドラマ初主演を果たした加藤シゲアキだ。
加藤は男性アイドルグループ・NEWSのメンバーだ。2012年には小説『ピンクとグレー』を発表し、以後、小説家としての活動も目覚しい。ドラマ出演・主演自体は初めてではなく、『時をかける少女』(日本テレビ系)、『嫌われる勇気』(フジテレビ系)などに出演経験がある。今作では、原作とは違うストーリー展開やキャラクター設定に視聴者が戸惑うことも多かっただろう。しかし自身の役にひたむきに向きあった加藤の姿に改めて注目したい。
今作の原作は、『カイジ』『アカギ』などでおなじみの福本伸行の人気コミック『賭博覇王伝 零』。原作では、零が義賊であるということ以外の素性は明かされず、人の心に働きかけるときの「ニコッ」という笑顔が、得体の知れない“天才勝負師”としての雰囲気を醸し出していた。原作では、堂々とした態度でギャンブルゲームに隠された答えを解き明かしていく零。他のゲーム参加者はそんな零に対し、徐々に心酔していく。
一方ドラマ版の零は、普段はうだつのあがらない塾講師として働いている。現代社会に生きる弱者を助けるという優しさが強調され、得体の知れなさはあまり感じられない。そのためか、ドラマ開始直後は原作と比べて零の印象が薄いように感じられた。原作のような零の清々しい謎解きを楽しみにしていた視聴者にとっては、ゲーム参加者の命を守ることを最優先で考える加藤の演技に違和感があったかもしれない。
しかし加藤は、ドラマ版の零に込められた設定を貫き通した。「自分が勝つことよりも他人が負けないことを選ぶ」という設定が、第1話から最終話までブレたことは一度もない。それは加藤が「表向きは塾講師」「現代社会に生きる弱者を守ろうとする義賊」という設定を大切にし続けてきたからではないだろうか。
加藤の表情は決して豊かなわけではない。義賊仲間との対話で見せる力の抜けた笑顔と、謎解きの中で見せる険しい表情ばかり印象に残っている。原作の台詞を活かした演出には、どうしても説明台詞になってしまう場面もあった。しかし、加藤が見せる強い目力やハキハキとした台詞回しには、仲間を守ろうとする零の正義感の強さが感じられた。加藤の演技に嫌味が感じられないのは、「零ならこの時、どうやって相手に語りかけるだろう」と、加藤が“宇海零”という青年と真摯に向き合ってきたからではないだろうか。
零の演技には、加藤自身のひたむきさを感じることができる。アイドルグループの活動だけでなく、役者や小説家など、クリエイティブな肩書をいくつも持つ加藤だが、現在の加藤の姿にいたるまでにはたくさんの苦悩があったようだ。
2016年8月に放送された日本テレビ系の番組『チカラウタ』に出演した際には、「NEWSとしてデビューした当時の自分は『補欠扱い』だった」と話している。誰でもできる仕事に立候補しても、仕事が与えられることが少なく、周りから見た自分と自身が思う自分との差に苦しむようになったようだ。しかし、嵐の二宮和也が自らオーディションに参加していることを知り、自発的に行動することを決意。「書くことだったらジャニーズの誰よりもやって来たかもしれない」と処女作『ピンクとグレー』を書き上げたのだ(参考:モデルプレス|NEWS加藤シゲアキが涙 関ジャニ∞錦戸亮への複雑な心境吐露「好きだけど嫌い」「でも、すごい嬉しかった」)。そんな過去があるからこそ、彼のひたむきな姿勢には嫌味がない。人気コミックが原作のドラマ主演には並大抵ではないプレッシャーがあったと思うが、加藤はそれをはねのけ、あくまでもドラマ版の“宇海零”を最後まで丁寧に演じきった。
8月23日に更新されたNEWSの連載「NEWS RINGS」(ジャニーズ公式携帯サイト・Johnny’s webより)によると、『ゼロ 一獲千金ゲーム』の撮影の空き時間に執筆活動を行っていたことが明かされている。加藤の次回ドラマ出演は未定だが、自身の役割に向き合い続ける真摯な姿を今後の作品でも見届けていきたい。(片山香帆)