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浅野忠信、小栗旬、柳楽優弥……若手女優を支える主役級キャストたちの名演に注目

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リアルサウンド

 芳根京子に土屋太鳳、平手友梨奈、さらには有村架純と、若手女優が主役を張った作品が立て続けに公開されている。映画の顔として作品を背負って立つ彼女たちの好演もさることながら、それらを支える俳優陣の活躍にも注目したい。

 芳根と土屋の激しい演技バトルが話題の映画『累-かさね-』では、彼女らを結びつける存在として浅野忠信が登場。マンガを原作とした愛憎劇の発端は、浅野が演じる舞台演出家にして女優のマネージャー・羽生田釿互にあると言っていい。

【画像】それぞれの出演シーン

 本作での浅野は、狂言回し的ポジションであるのと同時に、2人の女の間に立つレフリー的な存在でもある。しかし公平な判定を下さない彼は、軽薄でいて慎重な、そして優しさと卑しさが同居した声音と目つきで、彼女たちをぶつかり合いと駆け引き合戦へ導いていく。直情的な2人に対し、浅野のミステリアスで内面が見えない佇まいはこのポジションに見事にフィット。“狂気”を演じる女優2人も凄まじいのだが、それらに翻弄される浅野のリアクションがあってこそ、この“狂気”はより緊迫感を湛えたものとなっている。

 『累-かさね-』と1週違いで公開された、同じくマンガ原作の実写化作品『響 -HIBIKI-』では、映画初出演にして初主演の平手を取り巻く存在として、北川景子、小栗旬、柳楽優弥らが脇を固めている。常識はずれの女子高生作家・響(平手)を前に、彼らは右往左往する姿を見せながら、土台をがっしりと支えている。

 響の才能の第一発見者である編集者を演じた北川は、響役に大抜擢された平手と二人三脚で歩んでいくポジション。監督である月川翔作品には、『君の膵臓をたべたい』や『センセイ君主』で顔を見せている彼女にこそ、経験の少ない平手と作品をリードしていくこの役回りはふさわしい。凛としたその姿には、後輩の手を引く存在として十分な貫禄がある。

 『隣人13号』(2005)や『キツツキと雨』(2012)など、これまでにもネガティブ寄りな演技に定評のあった小栗だが、『銀魂』シリーズをはじめとし、華のある役どころを演じることが多い。しかし、もともと華があるだけに、本作での陰鬱な印象の小説家役などだと、それが“存在感”として作用している。響を取り巻く多種多様な人々が形成する、社会の縮図のようなこの物語には、社会的な各ポジションでの象徴的存在がなければならない。小栗もその一部分を、一手に引き受けている。

 そういった見方をすると、新人小説家を演じた柳楽も出番は短いながらも社会の一部分を体現し、平手を支えている。『ゆとりですがなにか』(2016・日本テレビ系)などをはじめ、たびたび問題児キャラを演じる彼だが、本作でもその存在感はピカイチ。彼の言動・行動の異常さもまた本作を盛り上げている。柳楽が演じるこの役は、響と“最も似ているようで、決定的に違う”という人物。彼の演技があってこそ、響の“ヤバさ”や“ホンモノ感”が浮き彫りになる。そして何より、北川、小栗、柳楽をはじめとする脇役陣の見事なリアクションがあるからこそ、響の魅力は引き立つのだ。

 「4回泣けますーー」というキャッチコピーが印象的な有村主演作『コーヒーが冷めないうちに』では、若手では波瑠と林遣都、そして吉田羊に松本若菜、さらには薬師丸ひろ子や松重豊といったベテラン勢が脇を固めている。主人公・時田数(有村)が働く、とある喫茶店を舞台にした物語なだけに、客を演じるこれらのキャスト陣から有村は終始囲まれる形となる。

 この立ち位置での有村は、みなを見守る存在だ。キャスト陣の並びを見れば、誰も彼もが手練の演者であることはお分かりだろう。喫茶店という限られた空間で進行する物語だからこそ、個性豊かな彼らが賑やかな彩りを添え、有村演じる数を中心にしながら、3つの「泣ける物語」を展開させていく。

 数とは、どちらかといえば受け身な人物。この3つの物語を彼女は見守り、やがて4つ目の物語に自ら身を投じていく。彼女にとって最重要人物を演じる石田ゆり子や、メインキャストとしては最年少である伊藤健太郎の有村との並走も見事である。

 今後は齋藤飛鳥や、吉岡里帆、門脇麦、川栄李奈といった若手女優が中心に立つ作品が次々と公開される。彼女らの奮闘だけでなく、それらを支える者たちの存在にも目を光らせていきたいものだ。

(折田侑駿)