成田凌演じる一平の悪い予感は的中 『おちょやん』鶴亀家庭劇は波乱の幕開け
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「明日も晴れや」。観客から届けられた花を見てほほ笑む千代(杉咲花)。笑顔とは裏腹に、鶴亀家庭劇は初日から波乱の幕開けとなった。
筋書き通りに行かない『おちょやん』(NHK総合)第47回。やっとのことで舞台初日にこぎつけた鶴亀家庭劇。社長の大山鶴蔵(中村鴈治郎)が見守る中、最後の演目「手違い話」が始まる。しかし、会場の反応はいまいち。よそ見したり、あくびをする観客もいる。そんな空気を見て取った千之助(星田英利)は突然、台本にない即興芝居を始める。
「あんさん、出てきなはれ!」。舞台の上手に呼びかけるルリ子(明日海りお)。台本では、ここで千之助演じる商家の旦那が出てくるが、反応がない。仕方なく、もう一度「あんさーん、出てきなはれー!」
「あれれれれ!」。声がしたのは意外な場所。上手にいたと思った千之助が、下手の井戸から飛び出す。観客の笑い。体をくねらせながら「私はヘビでございます。にょろり」と千之助。あっけにとられる座員の中で、一平(成田凌)だけが眉を曇らせる。「大笑いさしてから、また強引に元の筋に話を戻した」。千之助のアドリブで、場内は爆笑に包まれた。
なんとか初日の興行を終えたものの、楽屋ではルリ子や小山田(曾我廼家寛太郎)が不満をぶつけていた。「台本も段取りも稽古で決めたことと全然ちゃうやないかい」(小山田)。「芝居を何だと思ってるの」(ルリ子)。徳利(大塚宣幸)は「あれが千さんのやり方や」と説明するが、新派や歌舞伎出身の座員にとって喜劇の作法は受け入れがたいものだった。「台本はただの見取り図」「お客さん笑かしてなんぼ」という千之助は、香里(松本妃代)たちと口論になり、ルリ子が出て行ってしまうのだった。
「ほんまに問題なんは千さん」という一平の予感が当たってしまった。寄せ集めの座員たちが要領を得ないのは仕方ないとして、自分のやり方に固執する千之助が、新たに立ち上げた一座のガンになってしまっている。千両役者である千之助がいなければ、そもそも座員も客も集まらないのだが、問題は千之助がいることで、一平の目指す新しい喜劇が遠のいてしまうことにあった。
お茶子だった千代の眼に、千之助の演技は見慣れた喜劇の芝居そのものに映る。しかし、長年同じ舞台に立った一平には欠点がよく見えるのだろう。ハナ(宮田圭子)の「変わってまへんな。あの人は」という言葉が、千之助の現状を言い表していた。
千之助に台本をボツにされ、本番でもいいように振る舞われながら、それでも一座を率いなければならない一平。結果が出なければ鶴亀家庭劇は解散で、旧天海一座の打ち切りの悪夢が蘇る。バラバラになった座員たちをまとめ、千之助を変えることはできるのか。千代自身も試されている。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/