millennium parade、ずっと真夜中でいいのに。……自己プロデュース能力発揮された新譜5作をピックアップ
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常田大希率いる音楽集団・millennium paradeの1stアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』、話題の映画主題歌、アニメ主題歌を含むずっと真夜中でいいのに。のニューアルバム『ぐされ』などを紹介。自己プロデュース能力を発揮したアーティストの濃密かつハイクオリティな最新作を楽しんでほしい。
「Fly with me」(『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)、「FAMILIA」(綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)などでも奔放かつ高品質なクリエイエティブを発揮していたmillennium paradeが、待望の1stアルバムを完成させた。セルフタイトルによる本作は、「失われたものへの“弔い”と、新しい年を迎えた“祝い”」をテーマに据え、コロナ禍に襲われた現代を見つめながら、普遍的なストーリーを描き出す壮大な作品となった。エレクトロ、オルタナヒップホップから現代音楽までを自在に取り込んだ音楽性、楽曲によって編成が大きく変わる自由度の高さ、そして、常田大希の優れたディレクションが発揮された本作は、2021年における、東京発のもっとも刺激的な音楽として世界に発信されるはずだ。「Fireworks and Flying Sparks」「FAMILIA」には井口理(KingGnu)がボーカルで参加。
3rdミニアルバム『朗らかな皮膚とて不服』のリリース、全国ツアー『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』の開催、アニメ『約束のネバーランド』の実写映画版の主題歌「正しくなれない」、そして、岡田将生、志尊淳、平手友梨奈などが出演する映画『さんかく窓の外側は夜』の主題歌「暗く黒く」、オープニングテーマ「過眠」の制作など活動の幅を大きく広げ続けてきた、ずっと真夜中でいいのに。が2ndフルアルバム『ぐされ』を完成させた。儚く、流麗なピアノ、快楽的な4つ打ちのビート、葛藤を抱えたまま生きる姿を綴った歌詞が溶け合う「胸の煙」、心地よいファンクネスを交えたベースと情緒的な三味線の音色、ラップを取り入れたACAねのボーカルが刺激的なケミストリーを生み出す「機械油」など、新曲も充実。独創的なポップスネスのさらなる進化が実感できる。
前作『Grow apart』(2020年7月)以来、わずか7カ月のインターバルでニューアルバム『Grower』をリリーするAwesome City Club。前回のアルバムは、メンバーの脱退などに伴う活動基盤の再構築からはじまった作品だったが、「勿忘」(菅田将暉、有村架純の主演映画 『花束みたいな恋をした』インスパイアソング)を含む本作ではatagi、PORIN、モリシーによる体制がしっかりと確立され、バンドという枠を超えたポップミュージックを表現している。特に印象的なのは、最新鋭のオルタナR&Bを経由したトラックのなかでatagi、PORINが切ない恋愛感情を映し出す「tamayura」、80’s風デジタルファンクの進化型とも言える「記憶の海」など、ポピュラリティと独創的なアイデアを組み合わせた楽曲。本作によってACCは本当の意味でリスタートを切ったのだと思う。
BiSHのアユニ・DによるバンドプロジェクトPEDROによる、初の日本武道館単独公演(2月13日)に向けたニューシングル。表題曲「東京」(作詞:アユニ・D/作曲:松隈ケンタ/編曲: SCRAMBLES)は、超アッパーなビートと歪んだギターサウンドを軸にしたオルタナロックチューン。自分自身を肯定できなかった女の子が状況をきっかけに好きなこと、やりたいことを見つけ、〈恥ずかしがることなんて 何もない〉という思いに至るプロセスを刻んだ歌詞には、アユニ・D自身のドキュメントのようだ。カップリングの「日常」は、PEDROの音楽的な要である田渕ひさ子が作曲・編曲を担当。きらびやかで繊細なギターフレーズ、穏やかさと激しさを内包したメロディとともに、かけがえのない日常の大切さを歌ったこの曲は、当たり前の日常の素晴らしさが失われた現在の社会のなかで美しく響く。
「大迷惑星。」がTikTok、Twitter、YouTubeなどで拡散され、知名度が一気にアップ。「くしゃくしゃ。」「ケロケ論リー。」などもネットを中心にヒットし、新世代シンガーソングライターとして大きな注目を集めている泣き虫☔︎の初のCD作品『rendez-vous』は、奥深く、鋭利な歌心がたっぷりと込められている。ロックナンバー「からくりドール。」、攻撃的なギターリフと語りを取り入れたボーカルが一つになった「アイデンティティ。」、シティポップ的なサウンドを取り入れた「アルコール。」など、バリエーションに富んだ楽曲のとともに、韻を重視したリリック、独特のハスキーボイスをじっくりと堪能できる作品だ。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。