“異種格闘技”な「藪原検校」が本日開幕、主演の市川猿之助「味わい尽くして」と自信
ステージ
ニュース
PARCO劇場オープニング・シリーズ「藪原検校」より。(撮影:加藤幸広)
本日2月10日にPARCO劇場オープニング・シリーズ「藪原検校」が東京・PARCO劇場で開幕。それに先駆け、ゲネプロが行われ、市川猿之助らキャストと演出の杉原邦生が思いを述べた。
「藪原検校」は「西武劇場オープニング記念・井上ひさしシリーズ」として1973年に初演された井上ひさしの戯曲。今回は新生PARCO劇場のオープニング・シリーズの1作として、杉原邦生の演出で上演される。盲目に生まれた主人公・杉の市が人を殺めて成り上がり、やがて検校になるまでをドラマチックに描く。
杉の市役の猿之助は、演じる役について「井上(ひさし)さんは稀代の悪人を描いてはいますが、必ずしも生まれたときからの悪ではない」とし、「今回のラストは杉原くんなりの解釈で、杉の市の悲しさがでていると思います」と分析。「異種格闘技のような、舞台の上での演技のいい意味での戦い、それが良いほうに化学反応を起こしている。若さと若いアイデアにあふれた古典作品と言っていいこの『藪原検校』を隅から隅まで味わい尽くしていただきたい」と意気込んだ。
また、杉の市の処刑を言い渡す塙保己市ほか数役を演じる三宅健は、「健ちゃん、猿ちゃんと呼び合い、健猿の仲です(笑)。渋谷の街と猿之助さんの技と、いろんなものが融合して、まったく新しいものが渋谷で生まれるんだなと感じています」と初日に向け感慨を語る。
一方、「最後まで無事に千秋楽まで完走できることを祈っております。精いっぱい杉の市に絡みついていきたい」と思いを表したのは杉の市の愛人・お市に扮する松雪泰子。また、物語の語り部・盲太夫役の川平慈英は本作を「ポップな『藪原検校』」と評し、「なかなか人に優しくなれない、寛容になれない毎日だと思いますが、観に来てくださったお客様には楽しんで、笑顔になって、寛容になれるような作品になっていると思います」と自信をのぞかせた。
演出の杉原は「劇場に来て、実際に舞台美術が立って、いい意味で我ながらこれは『やっちまったな』という気がしています。だれも想像しなかった世界観になっているので、いろんな批判も出てくるのではとドキドキしていますが、ぜひ楽しんでいただきたいです」と来場を呼びかけた。
公演は3月7日まで。その後、9・10日に愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、13・14日に石川・こまつ芸術劇場うらら、18日から21日まで京都・京都芸術劇場 春秋座でも上演される。
市川猿之助コメント
新しいPARCO劇場での「藪原検校」ということですが、この情勢の中なんとか初日を迎えられるようなので、あとはひたすら、無事に千秋楽を迎えられることをいまはただただ祈るばかりです。東京はもちろん、地方にも行きますので、最後はみんなで手を取り合って笑って、いい公演ができたねといえる芝居になることを祈っております。念には念を入れて、準備万端で、その場その場で燃えていきたいです。
健ちゃん(三宅健)には遊んでもらって、みなさんにも楽しくしていただいて、稽古も楽しく1カ月乗り切れました(笑)。 井上(ひさし)さんは稀代の悪人を描いてはいますが、必ずしも生まれたときからの悪ではないんです。悪人でも赤ちゃんの時の笑顔はあっただろうし、家庭環境もあっただろうし、悪人の様々な面を描いています。今回のラストは杉原くんなりの解釈で、杉の市の悲しさがでていると思います。スタッフさんも、照明さんもスーパー歌舞伎のときと一緒で、ツーカーの仲なので杉原くんがやりたいことの飲み込みが早く、みんなが同じ方向を向いていて、とてもやりやすかったです。いろんなジャンルの俳優が、異種格闘技のような、舞台の上での演技のいい意味での戦い、それが良いほうに化学反応を起こして、従来の藪原検校をご覧になった方々には驚きだろうし、初めて観るかたにも驚きだろうと思います。この時代にしかできない、杉原邦生が、やりたいことを 我々を使ってやった芝居ですので、若さと若いアイデアにあふれた古典作品と言っていいこの「藪原検校」を隅から隅まで味わい尽くしていただきたいです。
三宅健コメント
猿之助さんとの共演は本当に楽しいです。今は猫を被っていますが、チャーミングな方で毎日毎日笑顔が絶えない現場です。健ちゃん、猿ちゃんと呼び合い、健猿の仲です(笑)。僕が小学4年生なら、猿之助さんは小学2年生です。歌舞伎の技術、技がふんだんにこの舞台に活かされていて、そういった意味でも、これまで上演されてきた「藪原検校」とは違うと思いますし、渋谷の街と猿之助さんの技と、いろんなものが融合して、まったく新しいものが渋谷で生まれるんだなと感じています。猿之助さんのファンの方々も楽しくて楽しくて仕方がないのではないかと、そして観に来てくださった皆さんが猿之助さんの虜になって帰っていくんだろうなと思います。手放しでぜひ観に来てくださいといえる状況ではないですが、僕たちは粛々と芝居をやっていくしかありません。キャスト、スタッフはじめ、観に来てくださる方々も感染対策をしっかりしていらっしゃると思いますので、千秋楽の日まで無事に終えられるように努めたいと思います。
松雪泰子コメント
三宅さんもおっしゃったように、皆さん同じ気持ちだと思いますが、最後まで無事に千秋楽まで完走できることを祈っております。今回のカンパニーならではの「藪原検校」になっていると思います。今回は杉の市の愛人ということで、精いっぱい杉の市に絡みついていきたいと思っております。稽古場で生まれ積み上げてきたものを信じて演じていきたいです。
約20年ぶりに三宅さんとも共演させていただいて、映像と舞台の現場では環境も全然違いますから、稽古場では三宅さんの新たな魅力をたくさん拝見しながら、お稽古をしておりました。三宅さんの魅力はぜひ作品を観ていただければ感じていただけると思います。
川平慈英コメント
演出の杉原さんが大変エキセントリックで、猿之助さんバージョンの今作はポップな「藪原検校」です。僕は語り部なので1回舞台に上がったら1秒たりともはけない。役者になってはじめてくらいのセリフ量の多さで、今さらながら何で引き受けたんだろうと……(笑)。すごくチャレンジングなお仕事をいただいて感謝しています。僕は歌舞伎のカルチャーと舞台の上で組ませてもらうのは初めてなので、お稽古場では本当に目からうろこなことばかりでした。すごくセンセーショナルで稽古が楽しかったです。これをこうやってやるんだ!と発見が多く、すごく勉強になり、いろんなアイデアをいただけました。このご時勢、エンターテイメントを観に来るのは本当に難しいと思います。コロナ禍で、なかなか人に優しくなれない、寛容になれない毎日だと思いますが、観に来てくださったお客様には楽しんで、笑顔になって、寛容になれるような作品になっていると思います。この素敵なメンバーで完走できたら、こんな幸せなことはないです。
杉原邦生(演出)コメント
約1年前のラインナップ発表会見で舞台に立った時には、考えもしなかった社会状況になっているなと、いま改めて感じています。今回は素晴らしいキャスト、スタッフの皆さんが、僕のアイデアの種を稽古場でふくらませ、育ててくれて、現代の人に伝わる「藪原検校」になっていると思います。稽古中も稽古が終わってからも、猿之助さんにLINEでここはこうしようかとか、こうしたらいいんじゃないかとアイデアをいただいて、僕のほうで噛み砕いて演出に反映させた場面もありますし、猿之助さんが歌舞伎の演出を丸ごと持ち込んでいるような演技をなさっているところもあります。歌舞伎俳優の猿之助さんが主演で、周りにいろんな出自の俳優さんがいて、作品の芯に井上ひさしさんの本がある世界観で、いいバランスですべてが融合しているなと感じながら稽古をしていました。そして、劇場に来て、実際に舞台美術が立って、いい意味で我ながらこれは「やっちまったな」という気がしています。井上ひさしさんは地方と都市をテーマにずっと作品を描いてきた方で、今作も杉の市が東北から江戸に出てきて成りあがっていく話です。都市の象徴である渋谷の街の一角で上演したらおもしろいのではないかというアイデアから、このような現代的なセットになっていて、でも衣裳は江戸中期のもので、普通では融合しない二つが皆さんの力で融合しています。今までにない「藪原検校」だし、井上ひさしさんの作品がこんなふうになるとはだれも想像しなかった世界観になっているので、いろんな批判も出てくるのではとドキドキしていますが、ぜひ楽しんでいただきたいです。
PARCO劇場オープニング・シリーズ「藪原検校」
2021年2月10日(水)~3月7日(日)
東京都 PARCO劇場
2021年3月9日(火)・10日(水)
愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2021年3月13日(土)・14日(日)
石川県 こまつ芸術劇場うらら
2021年3月18日(木)~21日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座
作:井上ひさし
演出:杉原邦生
音楽・演奏:益田トッシュ
出演:市川猿之助、三宅健、松雪泰子、高橋洋、佐藤誓、宮地雅子、松永玲子、立花香織、みのすけ / 川平慈英
※高橋洋の「高」ははしご高が正式表記。