『おちょやん』松本妃代が座員・石田香里を好演 マルチな才能で劇団に新風吹かす?
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杉咲花が主演を務めるNHK連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)で、おかっぱ頭とハイカラな衣装が特徴的な、鶴亀家庭劇の座員・石田香里を演じる松本妃代。最近は『映像研には手を出すな!』(MBS/TBS)や『女子グルメバーガー部』(テレビ東京ほか)など出演作も増え、『おちょやん』をきっかけにさらなる活躍が期待される女優の1人だ。彼女はいったいどんな女優なのか、これまでのキャリアを振り返り、『おちょやん』での役どころに注目してみたい。
松本は、兵庫県生まれの現在25歳。2008年にエイベックス学生オーディションに合格して芸能界入りし、エイベックス・アーティストアカデミー大阪校で作られたダンス&ヴォーカルユニット「Krystal burnish dolls」にも加入していた。現在は、役者の活動が本格化。女優業の傍ら、絵画アーティストとして個展も開くなど、マルチな才能を持った女優だ。
『おちょやん』で松本が演じる石田香里は、天海一平(成田凌)が座長として道頓堀で新たに旗揚げする「鶴亀家庭劇」の座員で、今回の旗揚げのために招集された、当時アイドル的存在の元「鶴亀歌劇団」出身の女優。新派出身のトップ女優高峰ルリ子(明日海りお)や、歌舞伎出身の小山田正憲(曾我廼家寛太郎)らと共に、これまで喜劇とは無縁の世界で生きてきた1人だ。まだ歌劇団時代のプライドを捨てきれず、アドリブの多い喜劇を見下している部分もあり、それを察して劇団を仕切る須賀廼家千之助(星田英利)があえてアドリブをぶつけ喜劇の難しさを教え、特に香里と高峰には5流と罵り、プライドをズタズタにしていく。おそらくこれは過去を捨てろという千之助なりの愛の鞭だろう。
高峰が劇団を出た理由が分かった際に、香里は擁護するように「好きやった人から後ろ指さされるのが一番キツイ。それやったらはなから嫌われてた方が一番マシや」と感慨深げに語っていたシーンが印象的だ。おそらく香里も人間関係で歌劇団を追われた背景があるのだろう。この劇団の面白いところは、左遷されたメンバーで構成された、ある意味“ルーザー”たち。プライドが邪魔をしている彼らが、いかにして喜劇集団としてバラバラな個性を一致団結させ、人生を逆転させていくかが見どころになっていくはず。2月11日の放送では、千代が高峰や石田を庇う形で、座長の座を賭けどちらが笑いを取れるかの勝負となり、これまで喜劇を見下していた左遷組3人が千代と協力して試行錯誤し、早くもチームワークを発揮している。
その中で松本に期待するのは、やはり劇団の唯一のアイドルとしての役割。丸尾末広の『少女椿』に出てきそうな出で立ちで、チラッと見せた歌声は、アーティストとしての下積みがある松本だけに上手く、歌と踊りが自慢という香里役は運命を感じるハマり役。千之助に説教されてからは、得意の繊細な演技で迷いや同情を見せているが、喜劇女優に成長した先に、あえて浮世離れしたアイドル的なキャラになるのか、繊細でリアルなキャラになるのか、松本自身が役に対してどう成長した演技を見せるのか、こうした群像劇は『#声だけ天使』(AbemaTV)で経験しているだけに、期待が高まる。
『#声だけ天使』で松本が演じたボーイッシュな声優専門学校の生徒・小森茜役は、クールで、ドSな人見知りという、これまでの松本のイメージとは真逆の役柄だった。物語上のヒロインではないが、彼女の片思いや、人と壁のあった彼女が心を開いていく様が作品を彩、真のヒロインと言ってもいい魅力的な人物となっていた。声優役として少年のような声の演技も披露するなど、松本の女優としての可能性を広げた作品だ。
『おちょやん』に話を戻すと、千代の師匠である山村千鳥(若村麻由美)に千代と左遷組3人がアドバイスを受けている時に、熱くなる千代たちを余所目に、若者らしい冷静なツッコミ役をしているところも、物語に進行していく上で、さりげなく重要な役割を担っているようにも感じる。そして千代をライバル視しているという設定があり、今後劇団のアイドルの座をかけて争いが起これば面白い展開が生まれそうだ。
元々実力とオリジナリティがある女優だけに、朝ドラという国民的ドラマに出演し顔と名が売れることで、メジャーシーンでのさらなる活躍が期待できるだけでなく、今後朝ドラで主演ができる可能性も十分にある。松本は、それだけのポテンシャルと魅力を持った女優だ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/