IZ*ONE、グループ誕生から現在までの歩み 第3回:グローバルアイドルを目指し本格始動、突然の活動休止へ
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衝撃のデビューから間もない2019年1月。IZ*ONE(チャン・ウォニョン、宮脇咲良、チョ・ユリ、チェ・イェナ、アン・ユジン、矢吹奈子、クォン・ウンビ、カン・ヘウォン、本田仁美、キム・チェウォン、キム・ミンジュ、イ・チェヨン)は、『ゴールデンディスクアワード』や『ソウル歌謡大賞』といった韓国の有名な授賞式で次々と新人賞を手に入れる。結成から半年も立っていないニューフェイスにも関わらず、最終的に新人賞5冠を達成。グループの勢いの凄さを国内外に強くアピールした。
同時期にクォン・ウンビは米ビルボードのインタビューに対して、「私たちは(活動が終わるまでに)より多くの賞をもらうために努力し、より多くのステージに上がりたい」と答えている。残された時間を濃密かつ有効に使いたいーー。そんな熱い気持ちが賞レースにおける好成績につながったのだろう。
12人のメンバーは韓国でのブレイクに満足することなく、早くも次のフェーズに進んでいく。1月20日、IZ*ONEは日本1stシングル『好きと言わせたい』の発売記念イベントを東京(TOKYO DOME CITY HALL)で開催した。
「好きと言わせたい」は、高揚感と切なさが混じり合うJ-POPならではの音作りと、K-POPシーンで“カルグンム(刃群舞)”と呼ばれるキレのいいダンスをミックスした理想的なアイドルポップスだ。そのおかげもあって同曲はリリースされた途端にオリコンデイリーシングルランキング1位を獲得し、続いて主要な音楽配信サイトでもトップに輝く。
日本でも大きな成功を収めた彼女たちは、韓国の活動もさらに盛り上げようと、4月1日に2枚目のミニアルバム『HEART*IZ』を発表し、約5カ月ぶりにカムバックすることをアナウンスする。
『HEART*IZ』は前作以上にインパクトのある作品が多く収められている。大ヒットを記録した「Violeta」は、トロピカルハウスというIZ*ONEとしては初めて挑戦するジャンルの曲だが、「La Vie en Rose」の哀愁路線をしっかりと継承している点が興味深い。キム・ミンジュと本田仁美が作詞に参加した「Really Like You」は、メンバーとの出会いをテーマにした歌詞が目頭を熱くさせる。元Wanna Oneで現在はAB6IXのメンバーであるイ・デフィが作詞・作曲に関わった「Airplane」や、一緒に雲の上まで飛んでいこうと歌うファンソング「空の上」は、このグループにしか出せない魅力にあふれており、ファンを喜ばせた。
充実した内容は、当然のごとく良いセールスに結びつく。ガールズグループのアルバム初動売上で『HEART*IZ』は歴代1位(当時)に。ほどなくしてアジア地域の各種チャートでもトップになるなど大物ぶりを見せつけた彼女たちは、この時点でグローバルアイドルのポジションを確実に手に入れたと言えよう。
それでもIZ*ONEの快進撃は止まらない。アルバムのヒットの余韻が冷めやらぬ5月上旬、ファンミーティングを日本武道館で開催。翌月にはデビュー初の単独コンサート『EYES ON ME』をソウルで行い(以降は台湾や香港、日本などを巡回)、6月26日には日本2ndシングル『Buenos Aires』を発表して関連のプロモーションもこなすなど、活動期間限定のグループの宿命なのか、過密スケジュールが続いていく。
9月25日、日本3rdシングル『Vampire』をリリース。しばらくして初のコンサートフィルム『EYES ON ME : THE MOVIE』の公開スタート日や、初のフルアルバム『BLOOM*IZ』の発売日が決まり、周囲の期待が膨らむ一方だったこの時期、K-POPシーンを大きく揺るがすニュースが飛び込んでくる。
11月5日、Mnetの人気オーディション番組『PRODUCE X 101』の投票操作問題で、同番組の演出をしたアン・ジュニョンプロデューサーとキム・ヨンボムチーフプロデューサーが逮捕。アンプロデューサーは警察の取り調べに対し、『PRODUCE X 101』だけでなく、IZ*ONEを生み出した『PRODUCE 48』でも投票数の操作があったことを認めたのだ(その後『PRODUCE』全シリーズの操作が明らかになる)。
だからと言って12人のメンバーに罪はない。むしろ被害者と言って良いかもしれない。にもかかわらず、事態が収束するまでは落ち着いた活動ができないと判断したのだろう。彼女たちの所属事務所は、直後に開催するはずだったイベント『COMEBACK IZ*ONE:BLOOM*IZ』およびアルバム『BLOOM*IZ』発売の延期を決定する。その後も12月に東京と大阪で予定していた「Vampire」関連イベントを中止し、宮脇咲良がDJを務めるラジオ番組『今夜、咲良の木の下で』も本人の一時的な降板を発表するなど、一気に自粛モードに突入する。
メンバーもファンも想像だにしなかった突然の活動休止。状況が好転するのは翌年の2月まで待たなければならなかった。
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■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。