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始まりは“むちゃぶり”、読売文学賞に岡田利規「今後への励ましであり喜び」

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第72回読売文学賞 贈賞式に出席した岡田利規。

第72回読売文学賞の贈賞式が本日2月15日に東京・帝国ホテルで行われ、戯曲「未練の幽霊と怪物 挫波 / 敦賀」で戯曲・シナリオ賞を受賞した岡田利規が出席した。

「未練の幽霊と怪物 挫波 / 敦賀」は、岡田が能をモチーフに創作した、ドイツの劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリー作品「NO THEATER」の“進化版”。建築家ザハ・ハディドをシテにした「挫波」、高速増殖炉もんじゅを巡る「敦賀」の2作品が、霊的な存在が思いを語る“夢幻能”の構造を用いて描かれている。本作は昨年6・7月に劇場で上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響で中止に。劇場公演に代わって「『未練の幽霊と怪物』の上演の幽霊」と題したリーディングが、6月27・28日に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場のYouTubeチャンネルで配信された。

受賞者あいさつでまず岡田は、本作が誕生した経緯を説明。「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」(河出書房新社)のために、能の現代語訳に挑んだ岡田は、オファーを受けた際の感想を「僕からすると、むちゃぶりでした。能には全然詳しくなかったですから」と率直に述べつつ、依頼を引き受けた理由を「僕の訳が読者にとって良いものになるか確信は持てませんでしたが、自分の肥やしになることは間違いないというエゴイスティックな目論見でお受けしました」と語る。

岡田は能の現代語訳に挑む中で多数の謡曲に触れ、能のテキストが持つ構造に惹かれたと言う。その構造を用いて自分自身の演劇作品を創作したいと考えたことで生まれたのが、ミュンヘン・カンマーシュピーレでの「NO THEATER」だ。そしてその公演を観た神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場のプロデューサーからの打診をきっかけに、岡田は「未練の幽霊と怪物 挫波 / 敦賀」を書き上げた。

岡田は作品の足跡をたどりながら、「僕は今後も、能の構造で演劇作品を作る試みを続けたいと思っています。今回賞をいただけたことが、次の(創作の)チャンスにつながればうれしい。そのような期待を持たせてくださることは、僕にとって何よりの励ましであり、喜びです。このたびはありがとうございました」と感謝を口にした。

小説、戯曲・シナリオ、随筆・紀行、評論・伝記、詩歌俳句、研究・翻訳の全6部門からなる読売文学賞は、戦後の文芸復興の一助とするため、1949年度に創設された総合文学賞。第72回の受賞作には「未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀」のほか、著者と十八代目中村勘三郎の39年間の交流をつづった中村哲郎のエッセイ「評話集 勘三郎の死」、そして井上隆史「暴流の人 三島由紀夫」、坪井秀人「二十世紀日本語詩を思い出す」、池田澄子の句集「此処ここ」、角田光代訳「源氏物語」といった作品が選ばれた。

※「NO THEATER」の「O」は長音記号付きが正式表記。

第72回読売文学賞

戯曲・シナリオ賞

岡田利規「未練の幽霊と怪物 挫波 / 敦賀」(白水社)

随筆・紀行賞

中村哲郎「評話集 勘三郎の死」(中央公論新社)

評論・伝記賞

井上隆史「暴流の人 三島由紀夫」(平凡社)
坪井秀人「二十世紀日本語詩を思い出す」(思潮社)

詩歌俳句賞

池田澄子 句集「此処」(朔出版)

研究・翻訳賞

角田光代訳「源氏物語」全3巻(河出書房新社)

※小説賞は該当作なし。
※初出時より、見出しを変更しました。