江戸歌舞伎発祥之地で中村勘九郎・七之助が「再出発の気持ち」語る
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江戸歌舞伎発祥之地の記念碑前にて。左から中村七之助、中村勘九郎。
「三月大歌舞伎」の合同取材会が昨日2月16日に東京都内で行われ、第1部「猿若江戸の初櫓」に出演する中村勘九郎と中村七之助が参加した。
勘九郎が猿若、七之助が出雲の阿国を勤める「猿若江戸の初櫓」は、江戸歌舞伎の幕開きをモチーフにした作品。猿若の機転を利かせた働きが奉行に認められ、芝居小屋を建てることが許されるまでが描かれる。取材会当日は、勘九郎と七之助が、東京・京橋にある江戸歌舞伎発祥之地を訪ねた。
「猿若江戸の初櫓」は、1987年に行われた勘九郎と七之助の初舞台興行で初演された舞踊演目。これについて勘九郎は「父の襲名など区切り区切りで踊らせていただきました」と振り返り、「2月15日は江戸歌舞伎が始まった日と言われていて、江戸歌舞伎が始まったときの勢いとか、熱い情熱とか、そこから397年、歌舞伎が続けられているというのも、先人たちや歌舞伎を愛する人々の思いが詰まったパワーがあってこそ。そういったものをお見せできたら」と意気込む。また「このコロナ禍において、再出発というような気持ちでめでたく舞えたら」と目標を掲げた。
七之助は「中村屋にとって所縁のあるものを、兄弟で歌舞伎座の序幕からやらせていただけるのは本当に幸せ」と述べつつ「華やかさもありつつ、途中厳かに踊るところもあって、とても緩急があります。振付も面白くて、賑やかで綺麗ですので、まだまだいろいろある時期ですが、何も考えず明るく楽しんでいただけたらと思います」と観客に呼びかけた。
記者から江戸歌舞伎発祥之地の記念碑の前に立った感想を尋ねられると、勘九郎は「子供の頃に、父が『ここに中村座があったんだよ』と教えてくれたのを思い出します。初世勘三郎は、江戸の中橋に中村座を立てた。言ってみれば江戸の真ん中に建てるというプロデュース能力、座元としての手腕に優れていた人」と感慨を語り、「祖父も父もプロデュース能力に優れていた人でした。これは不思議な“中村勘三郎”という名前に宿った魂なのかな、と思います」「3年後の江戸歌舞伎400年の年が父の十三回忌なんです。なので3年後の2月に猿若祭ができたらな、という夢もあります」と続ける。さらに七之助は「ここから始まったんだ、という思い。改めて、兄弟で中村屋を背負うこと、また今月立派に勤めている勘太郎と長三郎の2人も背負っていくんだなというプレッシャーと楽しみと、半分半分な気持ちです」と答えた。
「二月大歌舞伎」で、息子である中村勘太郎、中村長三郎と共演していることについて勘九郎は「この状況の中、朝学校に行って、そのあと舞台に立っているというのは、褒めてあげたい」と思いを述べ、七之助も「勘太郎は責任感が強く、いろいろな制約がある中、すごくいろいろなことを考えて過ごしている」「長三郎もまだ7歳で小さいのに、1時間以上ほとんど出ずっぱりの芝居で、最近(出番前に)揚幕で支度を手伝ってくれたりして、彼なりに役を感じ取ってやってくれている」と、2人を称讃した。
「三月大歌舞伎」は、3月4日から29日まで東京・歌舞伎座にて上演される。
「三月大歌舞伎」
2021年3月4日(木)~29日(月)
東京都 歌舞伎座
第1部
一、猿若江戸の初櫓
作:田中青滋
猿若:中村勘九郎
出雲の阿国:中村七之助
若衆:澤村宗之助
若衆:市川男寅
若衆:中村虎之介
若衆:片岡千之助
若衆:中村玉太郎
若衆:中村鶴松
福富屋女房ふく:市川高麗蔵
福富屋万兵衛:坂東彌十郎
奉行板倉勝重:中村扇雀
二、戻駕色相肩
浪花の次郎作:尾上松緑
禿たより:中村莟玉
吾妻の与四郎:片岡愛之助
第2部
一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋
熊谷次郎直実:片岡仁左衛門
源義経:中村錦之助
熊谷妻相模:片岡孝太郎
梶原平次景高:片岡松之助
堤軍次:坂東亀蔵
藤の方:市川門之助
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清:中村歌六
二、雪暮夜入谷畦道 直侍
作:河竹黙阿弥
片岡直次郎:尾上菊五郎
三千歳:中村時蔵
寮番喜兵衛:嵐橘三郎
亭主仁八:市村橘太郎
暗闇の丑松:市川團蔵
按摩丈賀:中村東蔵
第3部
一、楼門五三桐
石川五右衛門:中村吉右衛門
右忠太:中村歌昇
左忠太:中村種之助
真柴久吉:松本幸四郎
二、隅田川(Aプロ)
斑女の前:坂東玉三郎
舟長:中村鴈治郎
二、上 雪 / 下 鐘ヶ岬(Bプロ)
「雪」
芸妓:坂東玉三郎
「鐘ヶ岬」
清姫:坂東玉三郎
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。