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カイゴ、“トロピカルハウスの旗手”が持つソングライターとしての才覚 ベスト盤発売を機に考える

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リアルサウンド

 トロピカルハウスの新星として世界を席巻した初期を経て、2017年末に2ndアルバム『Kids In Love』をリリース。この2018年はモダンR&B界のスターのひとり、ミゲルとタッグを組んだ「Remind Me to Forget – Kygo ft. Miguel」や、Imagine Dragonsとの「Born To Be Yours」が話題となったノルウェーのプロデューサー、カイゴ。彼が10月27日にさいたまスーパーアリーナで開催する単独公演を前に、自らの選曲でこれまでのキャリアをまとめた日本限定のベストアルバム『Kygo Hits Collection 2018 -Japan Only Edition』をリリースした。2016年と2017年の『ULTRA JAPAN』でヘッドライナーを務めるなど日本でも大会場でのライブ経験があるだけにイメージがないかもしれないが、彼が日本で単独公演を行なうのはこれが初めて。日本に向けてそのキャリアをまとめるには最適の機会と言えるだろう。

KYGO KIDS IN LOVE TOUR 2018 ドキュメンタリー ~日本語訳付~

 そもそも、カイゴのこれまでのキャリアは大きく考えて3つの時期に分けられる。ひとつ目はトロピカルハウスの旗手として登場し、2016年にデビュー作『Cloud Nine』をリリースするまで。そして2つ目は、その後乗り出した大規模な世界ツアーを回る中で、急激に巨大化した会場に映える表現を模索しながら、同時にトロピカルハウスにとどまらない音楽性を追求しはじめた2017年のEP『Stargazing EP』と同年の2ndアルバム『Kids In Love』まで。そして3つ目は、2018年に入ってより顕著になっている、ジャンルを超えた幅広い層へとアプローチするような楽曲群だ。本作ではそうした楽曲が時系列に並べられるのではなく、全体の流れを意識した形でランダムに再構築され、「カイゴの個性とは何か?」ということが改めて浮き彫りになるような作品になっている。

 ひとつ目の時期にあたる初期のカイゴ=「トロピカルハウス期」の楽曲では「Stole The Show feat. Parson James」「Firestone(feat.Conrad Sewell)」、「Carry Me  ft. Julia Michaels」、「Raging ft. Kodaline」、そして自身最大のヒット曲となる「Stay  ft. Maty Noyes」の5曲を収録。「Stay」を筆頭にしたヒット曲はもちろんのこと、今聴くと出色なのは、当時は見落とされがちだった「Carry Me」。この曲ではDJ的ではなくシンガーソングライター然とした作曲スキルをEDM以降のクラブミュージックに持ち込んだ彼の魅力が、この時点で完成を見ていたことを伝えてくれる。

Kygo – Stay ft. Maty Noyes
Kygo – Carry Me ft. Julia Michaels

 そして『Stargazing EP』とアルバム『Kids In Love』からなる2017年の楽曲からは、セレーナ・ゴメスとの「It Ain’t Me」、エリー・ゴールディングとの「First Time」、「Stargazing ft. Justin Jesso」、そして「Stranger Things ft. OneRepublic」を収録。中でもボーカルエディットを取り入れることで逆に際立つ「Stargazing」の幻想的な歌詞は、彼のベストリリックと言えるようなものになっている。

Kygo, Selena Gomez – It Ain’t Me
Kygo, Justin Jesso – Stargazing ft. Justin Jesso

 2018年以降の最新モードを伝える楽曲としては、海外ではデジタル&ストリーミング配信のみの形態だったため初CD化となるImagine Dragonsとの「Born To Be Yours」と「Remind Me to Forget  ft. Miguel」の2曲を収録。「Remind Me to Forget」では、うっすらとヒップホップ/R&Bの影響がうかがえる音が加わっていて、カイゴのさらなる進化を感じさせるものになっている。

Kygo, Miguel – Remind Me to Forget
Kygo, Imagine Dragons – Born To Be Yours

 そうしたこれまでの歩みを改めて聴いて感じるのは、彼がクラブミュージックのプロデューサーでありながら、むしろその本質はポップミュージックにおける優れた「ソングライター」であるということだ。実際、筆者が現時点での最新アルバムとなる2作目『Kids In Love』に際して話を聞かせてもらった際には、ジャンル/年代を問わず様々なポップ職人の名前を挙げながら、「トロピカルハウスは自分の音楽性のひとつではあってもすべてではない」と語ってくれていたが、ビッグルームハウスを筆頭に「上げて」「落とす」音の落差を際立たせてクラブミュージックの快楽原則を追求したEDMのメインストリームとは異なり、カイゴの楽曲には一貫してEDM由来のドロップと普遍的な歌メロとをよりスムーズに繋ぎ合わせるような感覚があり、それが夏らしいシンセと相まってトロピカルハウスの“チルアウト”する感覚に繋がっていた。

 そのルーツと言えるのが、ドキュメンタリー作品『Stole the Show』で父が回想する、小さい頃熱心に弾いていたピアノだったと考えると、彼が初期から追求していたのは、やはり普遍的なソングライターとしての魅力だったのだろう。その雰囲気はジャンルを横断する形で日に日に増し、現在ではミゲルを筆頭にしたモダンR&Bのスターを筆頭に、メインストリームからアンダーグラウンドまであらゆる音楽性を飲み込んだものに発展している。ジャンルも出自も、知名度も多岐にわたる本作のゲスト陣の顔ぶれを見れば、その特異性を改めて感じることができるはずだ。

 ジャケット写真はカイゴのライブセットから見渡した会場の景色=観客の姿になっており、ここからも、この作品が自分の音楽を聴いてくれるリスナーのために向けて作られたことが伝わってくる。トロピカルハウスでのブレイクを経て、世界を回り、その中での経験を反映させた『Kids In Love』発表以降はさらにジャンルの壁を越えたサウンドを馴らしつつある彼のキャリアが、本人の選曲によってまとめられたこの作品は、目前に迫る日本での初の単独公演を前に、現在のカイゴの音楽の幅広さを伝えてくれる作品と言えそうだ。

This Is Kygo

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

■リリース情報
『HITS COLLECTION 2018 -JAPAN ONLY EDITION-』
発売中
¥2,200+税
解説&歌詞対訳付き
ブックレットに本人メッセージ・コメント入り 

<収録内容>
1. It Ain’t Me (Kygo & Selena Gomez) | イット・エイント・ミー(カイゴ&セレーナ・ゴメス) Composed by Kygo, Brian Lee, Ali Tamposi, Selena Gomez, Andrew Watt / Lyrics by Brian Lee, Ali Tamposi, Andrew Watt / Produced by Kygo, Andrew Watt
2. Born To Be Yours (Kygo & Imagine Dragons) | ボーン・トゥ・ビー・ユアーズ(カイゴ&イマジン・ドラ ゴンズ) Composed by Dan Reynolds, Wayne Sermon, Ben McKee, Daniel Platzman, Kygo / Lyrics by Dan Reynolds, Wayne Sermon, Lyrics by Ben McKee, Daniel Platzman, Kygo / Produced by Kyrre Gørvell-Dahll
3. Stole The Show feat. Parson James | ストール・ザ・ショウ feat. パーソン・ジェームズ Composed by Kygo, Ashton Parson, Kyle Kelso, Michael Harwood, Mali Harwood, Vocal Arranger Kyle Kelso / Lyrics by Ashton Parson, Michael Harwood, Marli Harwood / Produced by Kygo
4. Firestone feat. Conrad Sewell | ファイアーストーン feat. コンラッド・スーウェル Composed by Kygo, Conrad Sewell, Martijn Konijnenburn / Lyrics by Conrad Sewell, Martijn Konijnenburg / Produced by Kygo
5. Remind Me To Forget feat. Miguel | リマインド・ミー・トゥ・フォーゲット feat. ミゲル Composed by Alex Oriet, David Phelan, Phil Plested, Kyrre Gørvell-Dahll, Miguel Jontel Pimentel / Lyrics by Alex Oriet, David Phelan, Phil Plested / Produced by Kygo
6. First Time (Kygo & Ellie Goulding) | ファースト・タイム(カイゴ&エリー・ゴールディング) Composed by Kygo, Henrik Meinke, Jonas Kalisch, Alexsej Vlasenko, Jeremy Chacon / Lyrics by Sara Hjellström, Fanny Hultman, Jenson Vaugn, Ellie Goulding / Produced by Kygo
7. Stay feat. Maty Noyes | ステイ feat. マティー・ノイエス Composed by Kygo, Maty Noyes, William Larsen / Lyrics by Maty Noyes / Produced by Kygo, William Larsen
8. Stargazing feat. Justin Jesso | スターゲイジング feat. ジャスティン・ジェッソ Composed by Kygo, Justin Stein, Jamie Hartman, Stuart Crichton / Lyrics by Kygo, Justin Stein, Jamie Hartman, Stuart Crichton / Produced by Kygo
9. Carry Me feat. Julia Michaels | キャリー・ミー feat. ジュリア・マイケルズ Composed by Kygo, Julia Michaels, Justin Tranter / Lyrics by Julia Michaels, Justin Tranter / Produced by Kygo
10.Stranger Things feat. OneRepublic | ストレンジャー・シングス feat. ワンリパブリック Composed by Kyrre Gørvell-Dahll, Ryan Tedder, Casey Smith / Lyrics by Ryan Tedder / Produced by Kygo
11.Raging feat. Kodaline | レイジング feat. コーダライン Composed by James Bay, Derek Fuhrmann, Mark Williams, Kygo, Steven Garrigan / Lyrics by James Bay / Produced by Kygo
12.Nothing Left feat. Will Heard | ナッシング・レフト feat. ウィル・ハード Composed by Kygo, Will Heard / Lyrics by Kygo, Will Heard / Produced by Kygo

■ライブ情報
KYGO KIDS IN LOVE TOUR 来日公演
日時:10月27日(土)
OPEN 15:00 / START 16:00
会場:さいたまスーパーアリーナ
SPECIAL GUEST: ドン・ディアブロ / ジャスティン・ジェッソ / TJO
<チケット情報>
アリーナ・スタンド自由: 9,000円(税込)
GOLD チケット: 16,000 円(税込/特典付) SOLDOUT
企画・招聘・制作:クリエイティブマン
チケット情報はこちら

カイゴ公式サイト