『STRiKE!』編集長が語る、グラビア表現の最前線 「自己表現として取り組んでいる子が増えた」
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昨年誕生したオール水着グラビアマガジン『STRiKE!』。第1号は昨年10月に発売された後、即重版を記録。今年1月には第2号を発売し、4月22日は3号目が出るという新しい視点のグラビア誌だ。
グラビア誌のイメージを覆す可愛らしいデザインのカバーが目を引く。クオリティの高い写真と女の子の魅力溢れるインタビューページのみのシンプルな構成で、既存のグラビア誌とはどこか違う明るいオーラに溢れている。タイトルは、野球好きの編集長と副編集長にちなんで「あなたのハートにストライク!」のコピーとともに付けられたというが、まさに女の子の明るい存在に胸を打たれ、元気をもらえる。平面に表されたものではあるけれど、立体感をもって、心で深く楽しめるグラビアが展開されている印象だ。
グラビアの新しい価値を見出してくれそうなニューマガジン。コロナ禍で誕生した新しいグラビア誌は、なぜ生まれ、何を伝えようとしてくれているのだろうか。編集長の木村親八郎に『STRiKE!』やグラビアについてお話を伺うなかで、グラビアという表現について考えてみると、これからさらにグラビアの時代が始まっていくような予感がした。(とり)
『STRiKE』で表現したいグラビア
――まずは『STRiKE』創刊の経緯を教えてください。
木村親八郎(以下、木村):僕は現在、フリーで編集者、ライター、コンテンツプランナーをやっているのですが、もともとは東京ニュース通信社という出版社に在籍し、アイドルや女優を紹介する『B.L.T.』とカルチャー系の『TV Bros.』という二つのテレビ雑誌を担当していました。その当時から、写真表現としてグラビアが好きだったことが、グラビア誌創刊のきっかけです。グラビアは見るのも作るのも好きだったのですが、既存のグラビア誌では、ひとりの女の子につき多くても10ページ程度に収まるよう写真をセレクトしていると、もっと多くのページを割いて表現ができたらいいな、と思っていたんです。
あと、最近グラビアで活躍している女の子たちを見ていると、主体性を持って、自己表現としてグラビアに取り組んでいる子が増えた実感がありました。なら、ひとりあたり20ページくらい使って、より写真表現を楽しめて女の子自身の魅力を伝えられる、水着グラビアに特化した雑誌があったらいいんじゃないかと思ったことが大きな理由です。
――第1号、第2号と読ませていただきましたが、シンプルな構成なので、グラビアに集中できる印象を受けました。写真には、どのようなこだわりがあるのでしょうか。
木村:写真表現に妥協しないことを心がけています。1980年代にあった『写楽』や『写真時代』という雑誌では、カメラマンの篠山紀信さんや荒木経惟さんらが、エロスを追求しつつも常に写真表現に挑戦されていました。しかし、いいものを作りたい気持ちがあっても、時間がないなかで撮影をして雑誌を編んでいると、多少の妥協が生まれることがあります。僕も長く編集者をやっていますが、いつしか写真表現にこだわる純粋さを忘れてしまっていた気がしたので、新しく作る雑誌では存分にこだわりたいと思いました。もちろん、エロスの追求もグラビアの大切な側面ですが、セクシー=いいグラビアかと言われれば、そうではありません。写る人の魅力が引き出された写真が好きだし、グラビアという表現に挑戦し続けたいので、セレクトも写真そのものの良さを意識しています。
――どのグラビアにもストーリー性があって、女の子一人ひとりの個性がリアルに感じられる気がします。写真の並べ方や見せ方にも工夫はありますか?
木村:グラビアは、写真のその先が想像できるかが大事だと思っているので、統一感を持たせてストーリーを立てることも意識しています。明るい写真としっとりめの写真、いろんなパターンの写真を組み合わせたくなる気持ちもありますが、思いきって、どちらか一方に振り切ることもあります。写真の並べ方も、寄りの写真と引きの写真、ページを跨いだ横位置の写真を並べるといった定番のフォーマットを無視して、場合によっては引きの写真が5枚続いても構わないので、流れを壊さないようにしています。また、女の子の存在を身近に感じてもらうために、服を着た写真を必ず使うとも決めています。水着の写真だけの構成に比べて、すぐ隣にいそうなあの子が水着姿を見せてくれたという意味で、胸キュン度が変わってくると思うんです。それに、これから水着グラビアで頑張ろうとしている女の子の素に近い人となりを写してあげたい気持ちもあって、服の写真は必ず入れていますね。
――カバーやページのレイアウトが可愛いので、女の子主体に見えるのもいいですね。グラビアは「やらされ感」が見えることもありますが、それがないので安心して楽しめます。
木村:グラビアをポジティブに楽しく表現してくれる女の子が増えたからこそ、成立した雑誌かもしれません。もっと言えば、女の子がどんどん前に出て、制作側の存在を無くすことがベストですね。インタビューを一人語り形式で載せているのもそのためです。グラビアらしいポージングをリクエストすることもありますが、自然にポーズをとってもらうことで、カメラ視点を無くし、目の前に本当に女の子がいるんじゃないかと思えるくらい没頭できるグラビアを作りたいですね。女の子の存在をリアルに感じて、ファンになってもらえたら嬉しいです。
――写真表現を楽しんでもらうことと、出ている女の子を好きになってもらうことが大きな核となっているんですね。改めて、今までにないグラビア誌だと思いましたし、グラビア誌を手にとったことがない人でも読みやすそうです。
木村:グラビア誌に限らず、コアなファン以外でも読みやすい雑誌を作ることは、編集者として永遠のテーマです。なかには、グラビアは好きだけど週刊誌は手に取りづらいという人もいると思うので、堂々と手に取ってもらって、たくさんに人にグラビアの楽しさやグラビアで頑張る女の子の魅力を知ってもらいたい。昔ほど影響力はないにしても、雑誌から広がっていくことはありますし、グラビアのイメージだけで敬遠されたくなかったので、幅広い層の読者に読んでもらえるよう、見せ方やデザインはこだわりました。
――実際に反響はありましたか?
木村:予想以上でした。特に1号目はどれだけ売れるか読めませんでしたが、ありがたいことに増刷になりましたし、周りの編集者や芸能事務所さんからも連絡が来ました。1からメディアを作って、ここまで反響をいただいたのは本当にありがたかったですし、副編集長のおかげでもあります。
――それは、出てくれた女の子たちも嬉しいと思います!
木村:1号目は、表紙に沢口愛華さん、裏表紙に高崎かなみさん、中に十味さん、似鳥沙也加さん、古田愛理さん、華村あすかさんが出てくださったんですが、みんな単独で表紙を飾るほどネームバリューのある女の子たちなんです。まだ手探り状態だったにも関わらず、これだけ豪華なメンバーに出てもらえたことは非常にありがたかったです。もっと、出てくれた女の子たちに恩返しできるような雑誌になるよう、引き続き頑張ります!
グラビアは人を撮ること
――写真表現という言葉がよく出てきましたが、やはりカメラマンの人選にもこだわっているんですか?
木村:第一線で活躍しているカメラマンに依頼して、自由に撮っていただくことを主眼にはおいています。僕は『B.L.T.』を担当していた頃から、密かに「グラビアカメラマン最強説」を唱えていて、カメラマンにも注目して見てもらいたい気持ちがずっとあったんです。
――「グラビアカメラマン最強説」とは?
木村:グラビアカメラマンという括りも曖昧ではあるんですけど、グラビアの現場って柔軟性がものを言うので、そこで活躍しているカメラマンの表現力は信頼できると感じていて。急にスケジュールが決まって、時間も予算もないなか近場で撮影することもあれば、まるまる1日を使って、いろんな場所で撮影することもありますし、事前に打ち合わせはしますが、当日天気が悪くなることもあります。現場に向かう道中にいい写真が撮れることもあるので、そのときの状況に応じて柔軟にカメラを構えられるグラビアカメラマンは、やはり凄いですね。撮ることや表現に対する情熱を感じます。
――偶然性はグラビアの現場ならではですよね。グラビアのインタビューでも、気づかぬうちに撮られていた写真が使われていたと言う話をよく聞きます。
木村:もちろん狙って撮るグラビアもあるのですが、カメラマンで言うと細居幸次郎さんが出てきた頃を境に、「セクシーに撮るグラビア」から「人を撮るグラビア」に様相が変わった実感があります。細居さんは、今や坂道グループなどのアイドル写真集を多く手掛ける人気カメラマンですが、彼が撮った、2009年に発売された逢沢りなさんの写真集『Rina』に衝撃を受けたことを覚えています。これまでのグラビアには、カメラマンがグイグイ攻めるイメージがあったのですが、細居さんの写真からは、そこに写る女の子が中心となった世界を感じました。細居さんの照れ屋な性格もあってなのか、教室の外からしか女の子を見られない一歩引いた感じが写真に表れていて、女の子も自然体で。スナップ写真のようなグラビアを成立させたのが写真集『Rina』であり、細居さんだと思っています。
――確かに細居さんの写真は、不意の瞬間や遠くから覗いている感じが多い気がします。スナップ写真とグラビアの重なりはどこにあったんですかね。
木村:今はカメラの性能が高いですし、いいカメラを使ってタイミングよくシャッターを押せばそれなりの写真が撮れますよね。では何で差が出るかというと、演出だと僕は思っています。細居さんは演出がとてもうまくて、例えば机の上に置いてある鉛筆を女の子に取らせて、その動作の途中の仕草を写真に収めるんです。このような動作の合間にある瞬間を捉えた写真のよさは僕も感じていますし、想像力を掻き立たせるためにも、むしろグラビアに必要です。ページに制限があると、どうしても削られやすい写真ではあるのですが、『STRiKE!』では自然な流れを見せたいので、合間の写真をうまく使って違和感なくストーリーを展開させています。
――そう言われてみると、服を脱ぐ途中の瞬間や遠目から撮ったスナップっぽい写真が多く使われていますね。
木村:特に第2号に掲載されている細居さんが撮った篠崎こころさんのグラビアは、エポックメイキングで面白いと思いましたね。僕が担当したページではないのですが、普通だったら絶対使われない女の子の顔が見切れた写真を使っているんですよ。それにお風呂でのカットは濡れた体を写すのが定番ですが、浴槽に座っている姿を遠目から撮っているのが斬新です。外でも撮っていますが、基本的に6畳ほどの部屋のなかで撮影して、これだけ幅のある写真を撮った細居さんの表現力の凄さを感じましたし、自然と空気感が伝わってきて、夢中になりました。
――お話を伺って、グラビアの楽しみ方や見せ方の奥深さを感じました。では、木村さんにとってグラビアとは、どういうものですか?
木村:見る側としても、作る側としても、楽しいものですね。正解がないなかで、どうすれば女の子の魅力を引き出せるかをみんなで考える時間が好きです。それに、グラビアって日本独自の文化ですよね。ただ脱げばいいだけじゃない“侘び寂び”のような奥ゆかしさがあるのが魅力だと思います。とはいえ、独立前は『TV Bros.』の編集部にいて、少しだけグラビアから離れていた時期もあるので、今は改めてグラビアを勉強させてもらっている身でもあります・・・
――最近のグラビアを見るなかで、昔との変化を感じることはありますか?
木村:昔に比べて、いい意味で芸能人っぽさがなくなってきましたね。みんな可愛いけど意外と普通の女の子たちで、身近な存在だから人間味が感じられて、写真にもそれぞれの個性が写っているので、見ていて楽しいです。プライドを持ってグラビアをやっている女の子が増えた印象があるので、僕もグラビアを頑張っている女の子たちを微力ながら応援させてもらえたら嬉しいです。
――今後は『STRiKE!』をどんな雑誌にしていきたいと考えていますか?
木村:グラビアを頑張る女の子たちが、自分らしさを表現できる場所になることが、『STRiKE!』の目標です。今は既に名前が売れている女の子に登場してもらっていますが、ゆくゆくは僕ら編集部でいいなと思った子を取り上げることも考えています。女の子のこと、そして写真そのものを見てもらえる雑誌にすることは一貫して変わりません。雑誌はイメージづくりも大事なので、第3号、第4号と、頑張って作り続けていきます!
■『STRiKE! 2回表』各グラビアの扉ページ
■書籍情報
『STRiKE! 1回表』
定価:1,350円(税込)
出版社:主婦の友インフォス
公式サイト
『STRiKE! 2回表』
定価:1,489円(税込)
出版社:主婦の友インフォス
公式サイト