クリープハイプが観客を前に1年ぶりライブ「期間が空くと優しくなっちゃうな」
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クリープハイプ「大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう」東京・東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:冨田味我)
クリープハイプの東阪ライブ「大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう」が本日3月12日に大阪・フェスティバルホールで幕を閉じた。この記事では3月3日に行われた東京・東京ガーデンシアター公演の模様をレポートする。
「大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう」は当初1月に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえて3月に延期されたライブ。クリープハイプにとっては約1年ぶりとなる有観客公演となった。また東京公演の模様の一部は、尾崎世界観(Vo, G)に密着した3月7日放送のMBS・TBS系「情熱大陸」内でオンエアされた。
定刻を少し過ぎた頃、スモークが焚かれた舞台に登場した尾崎、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)。尾崎は開口一番「ステージに立ったときに、どんな気持ちになるのかなってずっと思ってたけど、うれしいって気持ちと悔しいって気持ちが半々くらいあるなと思ってます」と率直な気持ちを述べ、「ひさしぶりにお客さんの前に立ってライブができる喜びはあるんだけど、中止になったライブの悔しさは消したくないなと思いました」と複雑な思いを口にした。ライブの幕開けを飾ったのは、2018年9月に発売されたアルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」の収録曲で、映画「14歳の栞」の主題歌として再び注目されている「栞」。メンバーが疾走感あふれるバンドサウンドを鳴らすと、ほとんどのオーディエンスが立ち上がり、手を挙げ体を揺らした。続いて「鬼」「おばけでいいからはやくきて」でホール内をおどろおどろしい空気にした彼らは、「クリープ」で温かなアンサンブルを紡ぐ。観客の拍手が響きわたる中、尾崎は「今はしゃべれないから大人しくしてるようだけど、終わったらTwitterで『尾崎、序盤は緊張してたな』ってマウントとるんでしょ?」と集まったファンに投げかけるも、コロナの感染対策上、声を発せない観客はじっと話を聞くのみ。その後も一方通行のトークは続き、「リアクションがないから何言ってもスベってるみたいで……小3のときに転校したときのことを思い出します」と言った尾崎は「転校生」でノスタルジックな歌詞を歌い上げた。
ライブ中盤では、作詞を担当した長谷川もボーカルを務める「AT アイリッド」「かえるの唄」を経て、メンバーは変則的なリズムの「ニガツノナミダ」をパフォーマンス。「キケンナアソビ」では場内を不穏なムードに包み、「誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる」では思いを吐き出すかのような力強い演奏で観客の心を揺さぶった。インディーズ時代の楽曲「グレーマンのせいにする」のあと、ギターを置いた尾崎はスタンドマイクの前に立ち、長谷川はキーボードに手を置く。そして「5%」で情緒的なアンサンブルを響かせ、その音に観客は静かに耳を傾けた。ひと際大きな拍手がホール内を満たす中、4人は、日常の1コマを切り取ったような歌詞と軽快でグルーヴィなサウンドが合わさった新曲をお披露目した。
終盤で彼らは「大丈夫」「陽」と前向きなメッセージソングを畳みかけたのち、メジャーデビューアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」より「チロルとポルノ」「イノチミジカシコイセヨオトメ」を連発。合間には長谷川が客席を見渡し、「お客さんがマスクをしてても笑ってるのってわかるもんだなと思いました」と感慨深げに語る。尾崎もしみじみしながら「俺たちはもっととがったバンドなんだけどな。(ライブの)期間が空くと優しくなっちゃうな。書かれちゃうよ。(クリープハイプが)丸くなっちゃったって」と口にした。さらに名残惜しそうな表情を浮かべながら、オーディエンスに感謝の気持ちを伝えた。「社会の窓と同じ構成」「身も蓋もない水槽」と攻撃的なナンバーで観客を圧倒した4人は、ライブ定番のアッパーチューン「HE IS MINE」で最後のパフォーマンスへ。この曲ではオーディエンスが歌詞の一部を叫ぶ恒例のコールがあるが、この日の公演ではファンが心の中でそのフレーズを唱えたようだった。演奏を終えて充実した表情のメンバーは手を振ってステージをあとに。舞台に残った尾崎は「不自由な中、大変なことも多かったと思うけど、お客さんのおかげで楽しくやれました。また新しくライブを作っていきましょう」と声をかけ、深々と頭を下げた。鳴り止まぬ拍手を受けて、再び口を開いた彼は「今年中には新しいアルバムをなんとか作りたいと思ってるので、また会いましょう」とファンに再会を誓った。
クリープハイプ「大丈夫、一つになれないならせめて二つだけでいよう」2021年3月3日 東京ガーデンシアター
01. 栞
02. 鬼
03. おばけでいいからはやくきて
04. クリープ
05. 転校生
06. AT アイリッド
07. イト
08. ラブホテル
09. かえるの唄
10. ニガツノナミダ
11. キケンナアソビ
12. 誰かが吐いた唾が キラキラ輝いてる
13. グレーマンのせいにする
14. 5%
15. 新曲
16. さっきの話
17. 大丈夫
18. 陽
19. チロルとポルノ
20. イノチミジカシコイセヨオトメ
21. 社会の窓と同じ構成
22. 身も蓋もない水槽
23. HE IS MINE