[Alexandros]、吉澤嘉代子……音楽と映像作品が生み出すケミストリー 最新作をレビュー
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[Alexandros]の「rooftop」から生まれた岩井俊二監督のショートムービー『夢で会えても』、アニメ『ワールドトリガー』2ndシーズンディングテーマとして制作された神はサイコロを振らないの新曲「未来永劫」など4作品を紹介。音楽と映像作品が生み出す刺激的なケミストリーを堪能してほしい。
[Alexandros]から10周年の締めくくりとなるベストアルバム『Where’s My History?』が届けられた。「ワタリドリ」(映画『明烏 あけがらす』主題歌)、「Dracula La」(ドラマ『女くどき飯』主題歌)、「Girl A」(ドラマ『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』オープニング曲)「Mosquito Bite」(映画『BLEACH 死神代行篇』主題歌)など映像作品との関りの多い彼ら。岩井俊二監督とのコラボレーションが実現した「rooftop」も大きな話題を集めている。LINE NEWS VISIONで公開された ショートムービー『夢で会えても』は、岩井監督が「rooftop」にインスパイアされた脚本を書き下ろし、映像化した作品。アコギ、ピアノを中心としたオーガニックな音像と〈When the world comes back/また会えるように〉という切実な願いが込められた歌詞、そして、緊急事態宣言下のもと、大切な人との関係性を描いた映像が一つになった本作は、先が見通せない世界を希望の光で照らし出している。言葉、サウンド、映像の融合から生まれた、豊かで前向きなメッセージをぜひ享受してほしい。
前作『女優姉妹』以来、2年4カ月ぶりとなる吉澤嘉代子のニューアルバム『赤星青星』には、シングル「サービスエリア」、配信リリースされた「刺繍」「鬼」など10曲を収録。「違う星に生まれた二人が出会う“10の物語”」をコンセプトに、映像喚起力と繊細なストーリーを共存さしせた歌、そして、ゴンドウトモヒコ、野村陽一郎、sugarbeansなどのアレンジによる先鋭的なポップセンスを堪能できる。「刺繍」は、ドラマ『おじさまと猫』(テレビ東京/Paravi)オープニングテーマ。最後の瞬間に初めて気づく“運命の貴方”への想いを繊細なメロディとともに映し出す、儚くも尊いミディアムチューンだ。フラジャイルな手触りと大らかなスケールを同時に感じさせる編曲は、君島大空が担当。石若駿(Dr)、越智俊介(Ba)による独特の“揺れ”を感じさせるリズムセクションも、彼女の感情豊かなボーカルと見事に共鳴している。
ギターのフィードバックからはじまるバンドサウンドにグッと引き込まれ、〈久しぶりにさ、夢を見たんだ月が綺麗な夜に〉というラインによって、切なさと愛らしさが胸のなかに広がる。フレンズのニューシングル『約束』の表題曲(作詞:えみそん 作曲:ひろせひろせ)は、TVアニメ『ホリミヤ』エンディングテーマ。“当たり前だと思っていたことこそが、じつはもっとも愛しく、大切なものだった”という気づきをテーマにした歌詞は、青春の甘酸っぱさを描いたアニメの物語と重なりながら、青い季節を経験したすべての人の感情を揺さぶるエモーショナルな楽曲に仕上がっている。これまでの楽曲と同じく、メンバーのプレイヤビリティが活かされ、“全員が主役”なサウンドメイクにも注目してほしい。メインキャラの堀京子を演じる声優・戸松遥の歌唱による「約束<堀 京子(CV:戸松遥)Ver.>」も必聴だ。
「夜永唄」がSNS、ストリーミングを中心にヒットし、昨年、メジャーデビューを果たした神はサイコロを振らないの1stシングル『エーテルの正体』は、光の波動を伝える媒体“エーテル”に“自分たちの音楽がリスナーの光になってほしい”という願いを込めた作品。リード曲「未来永劫」はアニメ『ワールドトリガー』2ndシーズンディングテーマとして制作されたロックチューン。作詞・作曲を手がけた柳田周作は、アニメの主要キャラクターたちの関係を自らの友人たちと重ね、“身近な人たちとの絆を大切にしてほしい”という普遍的なメッセージに昇華させている。強い感情をダイレクトに反映させたボーカル、歌に寄り添い、増幅させるバンドサウンドサウンドも素晴らしい。「クロノグラフ彗星」(ドラマ『星になりたかった君と』主題歌)、「1on1」(ドラマ『ヒミツのアイちゃん』主題歌)も収録。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。