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Boy Pablo、Yumi Zouma……高橋芳朗が選ぶ、秋晴れに映えるさわやかなギターポップ8選

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 今回は秋晴れに映えるさわやかなギターポップ作品を8タイトルほど。すべてここ2カ月ぐらいでリリースされたものになります。

 まずはノルウェーのシンガーソングライター、Boy Pabloの2nd EP『Soy Pablo』。来日公演もソールドアウトの盛況ぶり、英『NME』でも大きな記事が組まれるなど、いよいよ本格ブレイクの兆しが見えてきた彼ですが、まさにこの7曲入りEPが決定打になりそうな充実ぶり。過去最もダンサブルな冒頭の「Feeling Lonely」からして超強力で、先行公開されたあの「Losing You」に勝るとも劣らないキラーチューンを軽々と用意してくるあたりに現在の好調ぶりがうかがえます。コンプとコーラスがきいたクリアなギターサウンドもトレードマークとしてすっかり定着した印象。ナヨナヨした歌詞も好感度大です!

boy pablo – Feeling Lonely (Official Audio)
boy pablo – t-shirt (Official Audio)

 続いては、こちらもリリースを重ねるごとに評価を高めているニュージーランドの4人組、Yumi ZoumaのEP『III』。2014年から足掛け4年で続けてきたEPトリロジーの完結編となるわけですが、これが惚れ惚れするほどに研ぎ澄まされたソングライティングが堪能できる問答無用の最高傑作。2015年リリースの『II』から試みられているダンスビートに対するアプローチもぐっと洗練され、もはや一切の隙が見当たらないほど。このCocteau TwinsとThe Sundaysを掛け合わせたような凛とした美しさ、オープニング曲のタイトル「Powder Blue」(淡青色)通りの音像を完璧に手中にしたと言っていいでしょう。

Yumi Zouma – Powder Blue / Cascine Park
Yumi Zouma – In Camera

 今年4月には日本独自編集アルバム『Tailwhip』で国内デビューを果たした紅一点のエマを軸とするモントリオール出身の3ピース、Men I Trustのニューシングル『Seven』。今年2月に出したシングル『Show Me How』を含めてここ最近の曲はチルアウト要素が強く、持ち前のディスコ色は希薄な傾向にありましたが、この『Seven』はそのへんの塩梅がなんとも絶妙。ちょっとゆるすぎるきらいもありますが、ギターポップ愛好家の方にも十分おすすめできる内容です。一時はYumi Zoumaと比較されることもあったようですが、ここにきてお互いの個性や指針とするものが明確になってきたのではないかと。

Men I Trust – Seven

 元Cherry GlazerrのSasami AshworthがSASAMI名義で<Domino Records>とソロ契約、第一弾シングルとして『Not The Time』をリリースしました。彼女がこのシングルを出す直前、Wild Nothingのニューアルバム『Indigo』(タイミングが合えば当コーナーでも取り上げたかった2018年を代表するギターポップ傑作!)にバックグラウンドボーカルとして参加していたことに象徴的ですが、ここではCherry Glazerrのようなガレージ色は大きく後退してレーベルメイトのThe Drumsにも通ずるサーフロック調のシンプルで疾走感のあるギターポップを披露しています。前半の混沌とした曲調からメロウに展開していくカップリングの「Callous」もなかなか。

SASAMI – Not the Time

 詳細不明ながらカリフォルニア出身の5人組、Vanillaromaのニューシングル『Check Your Optimism』。なんでもWeezerの大ファンらしくミュージックビデオはスパイク・ジョーンズが監督を務めた彼らの「Undone – The Sweater Song」のオマージュになっているのですが、音のほうはストリートな風貌に反して思いっきりThe Velvet Underground。それも「What Goes On」~「Rock & Roll」路線でかなりかっこいいです。こうして紹介するとThe Strokesを連想する方も多いと思いますが、彼らよりも良い意味でラフでルーズ。そんなわけでいわゆる一般的なギターポップのイメージからは外れる音ではありますが、トライしてみる価値は十分にあると思います。

Vanillaroma – Check Your Optimism

 影響源としてThe Smiths、The Beach Boys、Al Green、Steve Lacy(The Internet)などを挙げている北ロンドンの4人組、STIIRのデビューシングル『Free Yourself』。すでに2ndシングル『Luxury Butter』がリリースされていますが、ギターポップ的な文脈でいけば断然こちら推し。ギターのカッティングが心地よいこのファンキーで快活なドライブ感は、Orange JuiceやJosef Kといったグルービーなネオアコ、あるいは昨今のシティポップリバイバルとも相性が良さそう。いずれにせよ、新人とは思えない安定感がありますね。今後大化けする可能性もあるのでは。

STIIR – Free Yourself

 韓国で生まれて現在はマレーシアを拠点に活動する19歳のシンガーソングライター/プロデューサー、Jang EunsungによるソロプロジェクトになるSummer Soulのニューシングル『I Feel Love』。メランコリックな儚さはどちらかというとドリームポップ/チルアウト方面で支持されることになりそうですが、このキュートなたたずまいはギターポップ好きの需要にもばっちり応えてくれるはず。Jangの声に魅了された方は、前シングルの『How Beautiful』、Charming Lipsとコラボした「Kill Your Darling」などもぜひチェックしてみてください。

Summer Soul – I Feel Love
Charming Lips & Summer Soul – Kill Your Darling

 最後はブリストル出身の4人組、Tungzのニューシングル『Fruit』を。これはKindnessあたりを想起させるベイパーウェイブの流れを汲んだディスコサウンドでギターポップとして当欄で取り上げるのには多少の逡巡もありましたが、彼らも先述のVanillaroma同様、ブラックミュージックの影響を受けた英国産80’sギターポップに共通する魅力を持ったバンドだと思います。ファンキーでいてこの爽やかな透明感、好事家の皆さんならまちがいなく許容範囲内かと。

Tungz – Fruit

■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。