SPAC「人形の家」開幕、宮城聰「鏡として見ると自分たちが見えてくる」
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SPAC「人形の家」より。
SPAC「人形の家」が2月11日に静岡・静岡芸術劇場にて開幕した。
これは宮城聰が演出を手がけるSPACの新作。1879年に発表されたヘンリック・イプセンの代表作を、1935年の日本に舞台を移し、“和装の「人形の家」”として立ち上げる。舞台美術は、宮城が演出したイプセンの「ペール・ギュント」と呼応したものとなる。
開幕に際し、演出の宮城は「『人形の家』を見ていると、これは百何十年前の話ではなく、今もなお『家庭』というものを持ったからには、その要素としてこれとこれとこれは必ず含まれていなければいけないと、人々が男女問わず思ってしまう。これらの要素を全て持っていなければいけないというイメージに囚われているという点では、現代の日本人の多くはこの『人形の家』に出てくるヘルメル、描かれている夫婦とさほど違っていないんじゃないか。これを自分たちの”鏡”として見ると、いかに自分たちが囚われているかがよく見えてくるんじゃないか。そんなことを今日、実際にお客様の前で上演して感じました」とコメントした。上演時間は2時間20分。公演は3月12日まで。
宮城聰コメント
ちょうど今、「異次元の少子化対策」が話題になり、フランスと同じ「N分N乗の税制」も口の端に上っていますが、フランスと日本では前提がまるで違っている。つまりフランスの場合は、男女が法律上の結婚をしてしない状態で生まれる子どもが、全体の半分を超えているわけですよね。日本では2%くらい。この大前提が違うのを棚に上げて、「N分N乗」を議論していてもあまり効果がないだろうと思ったりするんです。
では、なんで日本の少子化が進み、子どもが増えていかないのか。それは「ファミリー」というより「家庭」、「家庭」というもののイメージが、50年前となんら変わっていないからではないか。50年前から固定されている「家庭」のイメージを再生産することに二の足を踏む人たちが、結果的に子どもも作らないということになっているのではないだろうか。そんなことを考える材料として、「人形の家」という戯曲は非常に相応しい。つまり「人形の家」を見ていると、これは百何十年前の話ではなく、今もなお「家庭」というものを持ったからには、その要素としてこれとこれとこれは必ず含まれていなければいけないと、人々が男女問わず思ってしまう。これらの要素を全て持っていなければいけないというイメージに囚われているという点では、現代の日本人の多くはこの「人形の家」に出てくるヘルメル、描かれている夫婦とさほど違っていないんじゃないか。これを自分たちの”鏡”として見ると、いかに自分たちが囚われているかがよく見えてくるんじゃないか。そんなことを今日、実際にお客様の前で上演して感じました。
SPAC「人形の家」
2023年2月11日(土・祝)・12日(日)、19日(日)、3月4日(土)・5日(日)、11日(土)・12日(日)
静岡県 静岡芸術劇場
作:ヘンリック・イプセン
訳:毛利三彌
演出:宮城聰
出演
ノーラ(ヘルメルの妻):たきいみき
弁護士クログスタ:加藤幸夫
ドクトル・ランク:武石守正
リンデ夫人:葉山陽代
弁護士ヘルメル:bable(ベイブル)
家事手伝い / ヘルメルのこども:森山冬子