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宇多田ヒカル、秦 基博、Perfumeらリリースへ アナログレコード需要増加の背景にある意外なもの

音楽

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リアルサウンド

 大物アーティストによるアナログレコードの発売が続々と増えている。11月リリース作品だけでも、宇多田ヒカル、秦 基博、Perfume、back numberなど錚々たるアーティストによるアナログレコードが発売。例年に比べても、2018年は増加傾向にある。アナログレコードというものが、コレクターだけでなく多くの音楽好きに注目される対象となっているのだ。また、同時に普及しているのがサブスクリプションサービス。こちらも大物アーティストによるサブスクリプション解禁が徐々に増えている。

(関連:井上陽水、松任谷由実……大物アーティストのサブスク解禁が音楽シーンに与えるメリットは?

 しかし、手軽にありとあらゆる音楽を聴くことができるサブスクリプションとプレーヤーを用いて聴くアナログレコードは、真逆の立ち位置にあるメディアだ。ここまで音楽が便利に聴けるようになった今、なぜアナログレコードの需要はこれほどまでに増え続けているのだろうか。デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に話を聞いた。

「アナログレコードの需要が伸びている理由として、アナログが新しい音楽の聴き方になっていることがいえます。iTunesやYouTubeなどデジタルを使い倒した世代が、デジタルではないものを求めているのです。音楽体験として、レコードは高価ですし、サイズは大きいし、レコードプレーヤーも必要。しかし手をかけて音楽を聴けるというのはアナログくらいなんです。若い世代の人たちは、サブスクリプションやアプリですぐに音楽を聴ける環境でありながらも、普通とは何か違う聴き方をしたいと思っています。また、配信ではできない“音楽をコレクションする”ということも、若い世代にとっては新鮮なのだと思います。例えば、Instagramにアナログレコードの写真を載せている人を見て、コレクションすることに興味を持ったという人も少なくないはず。アナログレコードは音質がいいとよく言われますが、その魅力を伝えることは難しい。一方で、家やオフィスに飾れるという利点も人気であるポイントの一つなのではないでしょうか」

 サブスクリプションが当たり前になるほどに、アナログレコードは新鮮なメディアとして求められていくのでは、との見解を示したジェイ氏。一方で、CDの売り上げは低下傾向だ。では今後アナログレコードがCDの売り上げを上回ることはあるのだろうか。

「アナログレコードの需要は増えていますが、国内ではCDも売れているため、アナログレコードを売る代わりにCDを無くすということはまずないと思います。ただ、アナログレコードが欲しいと思う方が今後もっと増えてきた場合、販売できる流通網が少ないので、万人に届けることが難しい。また、アナログレコードのプレス工場が少ないなど生産体制の問題もあります。今後は効率的にプレスする機械や、少ない生産枚数であっても引き受けてくれる工場が増えるなど需要増加に伴った環境整備が行われれば、アナログレコードの需要はさらに伸びると思います」

 新たな音楽の聴き方/楽しみ方として再び求められているアナログレコード。しかし、レコードが一般に浸透していくには問題もまだある。2017年にソニーがアナログレコードの自社生産を再開するなど、需要に伴ってプレス環境にも変化が見えてきたように思えたが、依然として環境が整っているとは言い難いようだ。今後アナログレコードがどれほど伸びていくかは、流通網の増加や工場の設備向上が鍵を握るかもしれない。(北村奈都樹)