HOWL BE QUIETがリキッドで“卒業式”、13年の歴史に終止符「みんな幸せになれよ!」
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肩を組んで挨拶するHOWL BE QUIET。(撮影:山川哲矢)
HOWL BE QUIETのラストツアー「Evergreen」が昨日3月22日に東京・LIQUIDROOMで幕を閉じた。
2010年に結成し、2016年3月にシングル「MONSTER WORLD」でメジャーデビューしたHOWL BE QUIET。TikTokで火が点いた「ラブフェチ」や、テレビアニメ「迷宮ブラックカンパニー」のオープニング主題歌「染み」など共感性の高いラブソングで高い支持を集め、メンバーの竹縄航太(Vo, G, Piano)はSexy Zoneの楽曲「名脇役」「アナタノセイデ」の制作にも携わり、作家としての才能も開花させた。HOWLの活動は順風満帆に見えたが、3月にラストアルバム「HOWL BE QUIET」をリリースし、同月の東名阪ツアー「Evergreen」をもって約13年間の活動に終止符を打った。
「Evergreen」ツアーのチケットは愛知・ell.FITS ALL、大阪・Music Club JANUS、東京・LIQUIDROOMの全公演で即日ソールドアウト。中でもLIQUIDROOMはHOWLにとって“いつもギリギリで売り切れなかった会場”であり、ラストライブにして悲願の即完売となった。そんなLIQUIDROOMには、HOWLの最後の姿を見届けようと大勢のファンが駆けつけた。開演時刻を迎え、ステージに姿を現した竹縄、黒木健志(G)、松本拓郎(B)、岩野亨(Dr)。インディーズ期の楽曲「From Birdcage」でラストライブの幕開けをさわやかに彩ったHOWLは、ループするギターリフをきっかけに「つよがりの唄」を披露し、ダンサブルなロックチューン「染み」でオーディエンスを存分に踊らせた。
メンバーを代表して竹縄は「正真正銘ラストになるんですけど、楽しい1日にしたい気持ちでいっぱいで。今日を思い返したときに『最高だったな』と思える日にしたいです」と公演に懸ける思いを口に。その後、HOWLの真骨頂とも言えるほろ苦いラブソング「ベストフレンド」や「クローバー」がパフォーマンスされ、場内が切ない雰囲気で満たされたが、曲の合間にはフロアのそこかしこからファンの温かな声援が上がる。観客とコミュニケーションをとりながら黒木は「僕らピアノロックバンドとしてやってきました」とバンドを紹介し、「初めて僕らのライブに来てくれた方には申し訳ないけど……解散します!」と改めて宣言。岩野に「伝説の解散ギャグ!」とツッコまれつつ、「名古屋、大阪公演が雨だったんだけど今日は晴れ。『WBC』(『WORLD BASEBALL CLASSIC 2023』)で日本が優勝したし、縁起がいい!」と声を弾ませた。
竹縄の「13年間やってきて当然浮き沈みがあったけど、俺らを救ってくれたのがこの曲です」という言葉をきっかけに演奏されたのが、HOWLの代表曲とも言える「ラブフェチ」。華やかなサウンドと突き抜けるようなボーカルに合わせ、観客がリズミカルにハンズアップした。熱気冷めやらぬムードから一転、Sexy Zone「名脇役」のセルフカバー、クリスマスソング「Merry」 といったセンチメンタルなナンバーが続くと、ファンはじっくりと耳を傾けていた。その後も、メロウな音色が際立つ「ぼくらはつづくよどこまでも」や心温まるメッセージソング「ケシゴムライフ」の演奏が会場に静かな余韻を残す。湿っぽい空気を断ち切るように岩野は「まずは全公演満員御礼、即完ありがとうございます! うれしいです。ホントにいいバンドだなと思いながら、今も楽しく演奏させていただいております」と持ち前の明るさで会場を盛り上げ、竹縄も「ガンガンいきますよー!」と気持ちを高めたところでライブは後半へと突入。4人はアップテンポな「Dousite」「I'M HOME」「Higher Climber」でハツラツとしたサウンドを奏で、フロアに瞬く間に熱気を呼び込む。HOWLの音楽を全身で受け止め踊るオーディエンスの姿に、メンバーから自然と笑みがこぼれた。また、恋人との別れを描く「208」「サネカズラ」の演奏中には先ほどの盛り上がりが嘘のようにフロアが静まり返り、HOWLとの“別れ”が刻一刻と近付いていることをファンに思い出させた。
竹縄は「この4人でステージに上がるのは最後。HOWLとしてみんなの前でライブすることはできなくなってしまうけど、この先、今日のことを絶対に思い出すと思う。リキッド史上ナンバー1の景色を見せてくれますか。俺ら今日で最後なんだよ!」と言い放ち、ライブのラストスパートに向けて感情を高ぶらせる。そして彼らは、新たな道へと進む自らを鼓舞するように「ライブオアライブ」を熱演。ライブアンセムの「レジスタンス」ではダイナミックなアンサンブルに乗せて、観客のシンガロングやハンドクラップが響きわたった。本編も残すところあと1曲となり、竹縄は「バンドをやってる以上、夢は大きくあったし、もっと売れたかったし、もっと大きな場所にみんなを連れて行きたかった」と率直な思いを述べつつ、「その夢は叶わなかったけど、HOWL BE QUIETっていうバンドを愛してもらえたなと思います」と声を震わせながら懸命に感謝を伝えた。キャリアの中で叶わぬ恋を数多く歌にしてきたHOWLだが、竹縄の「みんななら絶対幸せになる。幸せになれよ!」というメッセージを添えてパフォーマンスされたのは、ラストアルバム「HOWL BE QUIET」に収録されているウエディングソング「メアリー」。祝祭感あふれるムードの中、本編は終わりを迎えた。
「ライブオアライブ」のシンガロングパートを歌い、メンバーの再登場を待ち望むオーディエンス。ファンの思いに応えて舞台に戻ってきたHOWLは「GOOD BYE」でアンコールを始めた。本編で何度も感謝を伝えた竹縄だったが、アンコールでも「おじさんばかりのスタッフさんたちと、集まってくれたみんなのおかげでこうやって卒業式ができています」と重ね重ねお礼を述べる。そんな惜しみない感謝を込めるように、竹縄はサプライズで「かさぶた」を弾き語ると、叙情的なムードを増幅させた。
黒木、松本、岩野の3人はファンに向けて思いを伝えていく。松本は「俺は来月で26歳になるんですけど、黒ちゃんにバンドに誘ってもらったのが20歳でした。見た目とは裏腹にメンタルヤンキーなのでケンカもしたし、ああしたい、こうしたいとかいろんな思いもあったけど、この人生を選んでよかったなと思います」とHOWLとして過ごした特別な日々を振り返り、「グッズを買ってくれた皆さん、もう着て行くライブがないのに……ありがとうございます」と切なそうに語る。岩野は「『もっとでかいところでできたバンドだよね』とたまに言っていただけるんですよ。だけど大きい会場でライブすること、CDが売れることだけが果たして成功なのかっていう。このライブを観て『失敗だね』って言う人は1人もいないと思うんですよ。バンドとしての成功は、どれだけ素敵な人たちに出会えたかどうかだと思っていて、何よりメンバーに対して思うんだよね……素晴らしいバンド人生をありがとうございました」と涙声で明かした。黒木は「今言うタイミングじゃないと思うんですけど、僕は今回黒いグッズばかりを作ったんですよ。だけど、黒の売れ行きがよくないそうで」とぼやく。その後メンバーのほうを向き、「それぞれに言うわ。拓郎以外は高校の同級生ですでに輪ができている中で、拓郎はホントに大変だったと思う。ベースを弾いてくれてホントにありがとう」と涙声に。すると松本は照れ隠しかのように「俺は黒いグッズ、好きですよ」と優しく声をかけた。「2人にはまとめて言うわ」と竹縄と岩野を見た黒木は、「竹と亨はホントにうるさいんですけど、2人のおかげでバンドの雰囲気は明るくなって、陽気な部分に助けられたなと思います」とメッセージを送った。そして岩野の高らかなカウントをきっかけに、HOWLの記念すべきメジャーデビュー曲「MONSTER WORLD」を始めると、メンバーは身を寄せ合い心の底からライブを楽しむように演奏した。
「『ありがとう』って言い続けちゃうから、最後はバンドらしくもう1曲やっていいですか!」と叫び、「なんの変哲もない日常が続くけど、どこかでみんなとばったり会えるといいな。この先、みんなとつながれることを祈って歌いたいと思います」と願いを語った竹縄。彼の言葉によってライブはダブルアンコールへと突入し、それぞれの未来に期待を膨らませるように「Wake We Up」がパフォーマンスされた。約3時間のステージを終えた彼らは肩を組み、「ありがとうございました。HOWL BE QUIETでした!」とバンドの歴史に幕を下ろした。4人の表情はそろって晴れやかだった。
HOWL BE QUIET「Evergreen」2023年3月22日 LIQUIDROOM セットリスト
01. From Birdcage
02. つよがりの唄
03. 染み
04. ベストフレンド
05. クローバー
06. 解体君書
07. 味噌汁
08. ラブフェチ
09. 名脇役
10. Merry
11. ぼくらはつづくよどこまでも
12. ケシゴムライフ
13. Dousite
14. I'M HOME
15. Higher Climber
16. 208
17. サネカズラ
18. ギブアンドテイク
19. ライブオアライブ
20. レジスタンス
21. メアリー
<アンコール>
22. GOOD BYE
23. かさぶた
24. 孤独の発明
25. MONSTER WORLD
<ダブルアンコール>
26. Wake We Up