「サイド バイ サイド」坂口健太郎へのオーダーは「何もしないで存在すること」
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左から伊藤ちひろ、坂口健太郎。
「サイド バイ サイド 隣にいる人」の先行上映が3月31日に大阪・大阪ステーションシティシネマで行われ、キャストの坂口健太郎、監督の伊藤ちひろが舞台挨拶に登壇した。
行定勲が企画・プロデュースを担当した本作は、そこに存在しない“誰かの思い”が見える青年・未山が他者の思いをたどったことをきっかけに、自分の過去と向き合うさまを描くラブストーリー。坂口が未山、齋藤飛鳥が未山のかつての恋人・莉子、市川実日子が未山と生活をともにする看護師・詩織、磯村アメリが詩織の娘の美々を演じた。
坂口は本作について「観た日であったり、誰と一緒に観たかで感想が左右される作品って面白いなと思います。時間が経ったら捉え方も変わるだろうし、また観ていただけると、そのときのその人の感覚でまた違った捉え方で観ていただけるだろうし、そういう楽しみ方ができる面白い作品ができたなと思いました」と、何度観ても楽しめる作品であるとアピール。伊藤は不思議な力を持つ未山のキャラクター設定について「未山はいろいろな人や物と共存する存在なので、目に見えない“誰かの思い”も含め、すべてのものが見えるのかなと思います。そして、すごく人の気持ちを理解することができる。“共感”の最大級のところに未山がいます」と解説した。
また伊藤から「坂口さんって、人の心をさらっていくというか、見抜くのが得意ですよね」と言われた坂口は、「この作品は、ちょっとしたあて書きのような感覚で書いてくださったと聞いています。僕と未山は同一人物ではないですが、僕のニュアンスも入ってこのようなキャラクターとなり、ある種の発見でもあったし、驚きでもありました」と述べ、「僕自身が人の念を感じられるかというのは分からないですが、人の気持ちは分かります。でも、むしろ分からないからこそ魅力的に映ったりする瞬間もあると思うんです」と続けた。
未山を演じるにあたり、坂口は伊東から「“未山として存在するということを大事にしてください”と言われました。存在感を出すということではなくて、存在をしてほしい、と」と指導があったことを振り返る。さらに「最初は難しいなと思いながら撮影に臨んでいましたが、次第に未山としてただただ存在するということの意味が分かってきました。監督の世界観の体現はしたかったので、いただいたオーダーをどう噛み砕いてどう演技に入れるかというのは苦労しました」と述懐した。伊藤は特にこだわったシーンとして未山の寝ている場面を挙げ、「未山の寝る姿は『生と死の狭間にいるような眠りをしてほしい』というオーダーはしました。本来役者さんは、何もしないで存在するという芝居が一番難しいと思うんです。素でいればいいということではない。何もしないで表現するというのが、ものすごく難しいことだと思いますが、坂口さんはそれを体現してくれました」と語ったうえで、観客に「皆さん、未山を好きになってもらえましたでしょうか?」と投げかけると、大きな拍手が沸き起こった。
イベントの最後には坂口が、「僕は映画を観たり小説を読んだりするとき、スッキリ爽快に解決するものってその瞬間はとても面白いんですが、のちのち思い出せなかったりするんです。そこに考える余白だったり、なんであのようなシーンがあったんだろうかとか、なんであのような文脈だったんだろうかとか、考える時間がある作品のほうが、時々頭の中で考えてしまうからこそ、思い出せる気がしています。そして考える時間ってとても豊かなものだと思います。この作品は、一緒に観る方や、日によっても変わる作品だと思うので、不思議だけどいい体験ができたなと感じてもらえるとうれしいです」とメッセージを投げかけた。
「サイド バイ サイド 隣にいる人」は4月14日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。
(c)2023『サイド バイ サイド』製作委員会