「人生をさらけ出した」アンドレ・レオン・タリーが自身のドキュメンタリーを語る
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「アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者」ビジュアル
ドキュメンタリー映画「アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者」の監督であるケイト・ノヴァクと、本作で取り上げられたアンドレ・レオン・タリーのインタビューが到着した。
本作は、アフリカ系アメリカ人として初めてVOGUEのクリエイティブディレクターに就任したアンドレの生涯を紐解くもの。2022年1月に他界した彼が残した数々の功績を、アナ・ウィンター、トム・フォード、マーク・ジェイコブス、イヴ・サン=ローランといったファッション界の人物たちのインタビューとともに振り返る。
ノヴァクはアンドレに惹かれた理由と彼の映画を作ろうと思ったきっかけについて「私の祖父が服飾関係の仕事をしていて、デザイナーたちのために服を製造していたことも影響していると思います。マサチューセッツ州・ローウェルにある祖父の工場を訪ねていましたし、私にはファッションのDNAが受け継がれているんです」と明かす。
またノヴァクの夫であるアンドリュー・ロッシは本作の制作を担当。ノヴァクはアンドリューが監督した「メットガラ ドレスをまとった美術館」にアンドレが出演した際にも彼と交流があったそうで、「アンドレは、教会で愛唱していた『Precious Memories(かけがえのない思い出)』という賛美歌を聞くと今でも涙が出ると話してくれました。思い出には人を支え続ける力があることを歌っていて、私も聞いてとても感動しました。これが本作を作るキッカケとなり、ビジョンの源となりました」とエピソードを語った。ノヴァクによると本作はファッションドキュメンタリーであるだけでなく、アメリカの歴史についても描かれているという。その理由としてアンドレがファッション業界で初めて高い地位を得たアフリカ系アメリカ人男性であることに触れ、「彼がファッションに恋をした原点である黒人教会や家族の女性たちの存在も、映画を通じて皆さんに知ってほしいと思ったのです」と述べた。
自身のドキュメンタリーを作ることに関して、アンドレは「どんな経験になるか少しもイメージできませんでしたし、最初は苦しかったです。内面にずかずかと入り込まれ、開胸手術のように自分をむき出しにされているように感じました」と、最初は不安だったという。しかし「とにかくケイトを信じるだけでしたが、彼女の描く方向性や高度なリサーチ力、私の物語と人生に対する敬意に、やがてとても信頼を寄せるようになりました。彼女は私を感心させるほど過去を深く掘り下げてくれたので、最後まで続けようと思えたのです」と続けた。
さらに「本作では心と魂と人生をさらけ出しました。私はとても派手に見られますが、本当はすごく引っ込み思案でシャイな人間です。なので、服は私の戦闘服であり、自分を守るための毛布であり、“シフォンの塹壕”たるこの業界を生き抜く鎧なのです」と自身について述べるアンドレ。ドキュメンタリー撮影の過酷さについては「とても大変で圧倒されました」とその胸中を明かしつつも、「でも、これが彼女が作りたかったドキュメンタリー映画であり、彼女が伝えたかった物語なので、私は引き受けてよかったと思っています」と語った。完成した作品の感想を聞かれたアンドレは「美しい映像とケイトの高度なリサーチによって紡ぎ出された物語に、友人と一緒にただただ感激しました。彼女のリサーチ力は見事です! 」と称賛。しかし「今になってみれば、メイクアップアーティストを契約して常に同行させておけばよかったと後悔しています」とも付け加えた。
「アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者」は東京のBunkamura ル・シネマにて公開中。
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