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「aftersun」監督が初来日、シャンタル・アケルマンからの影響明かす

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「aftersun/アフターサン」来日記念舞台挨拶の様子。左からシャーロット・ウェルズ、岸井ゆきの。

「aftersun/アフターサン」で監督を務めたシャーロット・ウェルズが初来日。本日4月10日、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で上映前の舞台挨拶に登壇した。また「ケイコ 目を澄ませて」で知られる岸井ゆきのが特別ゲストとして応援に駆け付けた。

11歳のソフィが父親と過ごした夏休みを、その20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点でつづる本作。2022年のカンヌ国際映画祭の批評家週間で初上映され、A24が北米配給権を獲得した作品だ。父親を演じたポール・メスカルが第95回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされるなど評判を呼んでいる。

ウェルズは初上映からの1年近くの歩みを振り返りながら「Q&Aなどの機会は、おそらく今回が最後だと思います。自分が想像していたよりも、はるか遠くまで、いろんな方に届いた作品となりました」と吐露。「フィクションではありますが、自分のパーソナルな部分、人生や少女時代のことが具体的に詰まっている作品です。本当にたくさんの方といろんな形でつながることができた。この映画が今夜、皆さんとどんなふうにつながるのか楽しみにしています」と挨拶する。

そして観客へのサプライズで岸井が登壇し、ウェルズへ花束をプレゼント。ひと足先に鑑賞している岸井は「いろんな人にとって、自分の物語になる作品。父親は多くを語らない。だからこそ、観る人が自分の過去や生きてきたことを体現させられる映画でした。父親の姿から感じる不安が、セリフというよりは、呼吸や後ろ姿、肌から伝わってきて。素晴らしい映画だと思います」と明かす。この感想に、ウェルズは「観客が映画に入れる余白を作ることは短編を作る中で学んだこと。皆さん自身をどこかで持ってきていただく必要がある映画です。もしかしたら少し忍耐が必要かもしれないけれど、最後には素晴らしい報酬があると思います。映画を観て、聞いて、できれば感じられるような作品になっていたらうれしいです」と応答した。

岸井は父親の呼吸に着目。具体的な演出方法を尋ねると、ウェルズは自身が敬愛する映画監督シャンタル・アケルマンの名を挙げ「彼女が足音の重要性を語っていたことがありました。観客は足音が聞こえるだけで、物語を肉付けする。それだけで何かを語ることができる。このことにすごく興味を持って、今回の映画で私は、呼吸で同じことをやりたいと思ったんです。呼吸が人物から別の人物へ変遷していったり、あるいは呼吸が人物の視点と関わりがあったり」と打ち明ける。なおヒューマントラストシネマ渋谷ではちょうどアケルマンの特集が開催中で「先ほどポスターで知りました」と話す一幕も。

自然体で過ごす親子の演出については、ソフィを演じた新人のフランキー・コリオには脚本ではなく、セリフだけ書かれたメモが渡されていたそう。またウェルズは2人の関係を自然に見せるために、クランクインの2週間前から毎日メスカル、コリオと1、2時間を過ごす機会を設けた。ウェルズは「ポールは本当に素晴らしい役者です。私を信頼してくれました。私の解釈を伝えて、彼自身の解釈を聞く。そして彼自身に息を吹き込んでもらう。岸井さんももちろんご存知のように、俳優が役を生きなければならない。そういった意味でもポールは素晴らしく、フランキーに対する愛情も見事に表現してくれました」と語った。

「aftersun/アフターサン」は5月26日より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

(c) Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022