市川團十郎、“十二世團十郎十年祭”「若き日の信長」は「今の時代にフィットした歌舞伎作品」
ステージ
ニュース
市川團十郎
歌舞伎座新開場十周年「團菊祭五月大歌舞伎」の出演者である市川團十郎の取材会が、本日4月13日に東京都内で行われた。
團十郎は、“十二世市川團十郎十年祭”と銘打ち昼の部で行われる「若き日の信長」に、織田上総之介信長役で出演。「若き日の信長」は、大佛次郎が十一世團十郎のために書き下ろした作品で、1952年に初演された。團十郎は「祖父の代表作。信長は大佛次郎先生が祖父に当て書きしたお役で、父が受け継ぎ、私も何度も演じてきました。ですので、十年祭にふさわしいのではと」と上演の経緯を明かし、「改めて台本を読み返すと、正直、祖父の時代、父の時代、そして私が前回信長を演じた2015年ですら、上演するに早すぎた作品だと感じています。信長のセリフは先を見据えたものが多いので、今を生きる人々と考え方が近い。“2023年のお客様”にこそ、信長の考え方をご理解いただけるのでは。今の時代にフィットした、ミステリアスな魅力を秘めた歌舞伎作品だと感じています」と作品の魅力に触れる。
信長像について「信長という人間自体、どの時代に生まれるかによって日本の未来が大きく変わっていたような人物。そしてその本性というものは、彼が大成する前の若い頃に集約されていると思うんですね。若い頃の信長は、周囲からうつけもの、野武士と散々な言われ方をしましたが、それは周りの人々が、信長を自分のものさしで測りきれなかったがために、そういう表現しかできなかったから。信長の考え方が本質をついている現れ」と語る。また「信長は、日本で最も好かれている戦国武将の1人。大河ドラマでも3年に1回は信長が出てきますし、数多くの俳優さんたちが演じてこられましたが、各々が新しい信長を作り上げている。豊臣秀吉や徳川家康はイメージがある程度固まっている印象がありますが、信長は時代に合わせて常に変化している、稀有な人物。演じられる方々それぞれが、“自分の信長”を追うことができるのでは」と分析する。
父である十二世團十郎について「大佛先生は、父が初めて信長を演じるとき『歌舞伎俳優は神経質になっちゃいけない。おおらかで明るく、ドーンとしている方が大成するから。そういう意味で、新團十郎(十二世團十郎)の信長には期待しているし、彼は大成するだろう』とおっしゃっていました」とエピソードを明かす。さらに「最近、父のことをよく思い出します。襲名興行で、父から教えられた弁慶や助六を演じていると、教わっていたときの光景が走馬灯のように頭の中を駆け巡って。当時の若い自分には理解し切れていなかった部分もあったのですが、襲名興行で演じている中で『父はこういうことを言っていたのか』とわかり、教わったことが自分に浸透していく感覚がありました」と振り返る。記者から、十二世團十郎は今の團十郎をどのように見ていると思うかと問われると、「父と私のスタイルは違っています。過去の團十郎がそうであったように、時代ごとに必要な團十郎が現れると思うのですが、私と父では團十郎としての役割自体も異なります。きっと見守るしかないと思っているのではないでしょうか」と語った。「團菊祭五月大歌舞伎」は5月2日から27日まで東京・歌舞伎座にて。
歌舞伎座新開場十周年「團菊祭五月大歌舞伎」
2023年5月2日(火)~27日(土)
東京都 歌舞伎座
昼の部
一、「寿曽我対面」
出演
工藤左衛門祐経:中村梅玉
曽我五郎時致:尾上松也
曽我十郎祐成:尾上右近
小林朝比奈:坂東巳之助
化粧坂少将:坂東新悟
八幡三郎:中村莟玉
梶原平次景高:中村吉之丞
近江小藤太:中村亀鶴
梶原平三景時:大谷桂三
鬼王新左衛門:大谷友右衛門
大磯の虎:中村魁春
二、「十二世市川團十郎十年祭『若き日の信長』」
作:大佛次郎
美術原案:守屋多々志
出演
織田上総之介信長:市川團十郎
木下藤吉郎:市川右團次
弥生:中村児太郎
五郎右衛門:市川男女蔵
甚左衛門:大谷廣松
監物:市川九團次
林美作守:片岡市蔵
僧覚円:市川齊入
林佐渡守:市村家橘
平手中務政秀:中村梅玉
三、「『音菊眞秀若武者』岩見重太郎狒々退治 初代尾上眞秀初舞台」
脚本:今井豊茂
演出:尾上菊五郎
出演
岩見重太郎:尾上眞秀
弓矢八幡:尾上菊五郎
局高岡:中村時蔵
長坂趙範:尾上松緑
藤波御前:尾上菊之助
大伴家茂:市川團十郎
腰元梅野:中村梅枝
村の若い者萬兵衛:中村萬太郎
同 光作:坂東巳之助
同 佑蔵:尾上右近
趙範手下鷹造:坂東亀蔵
渋谿監物:坂東彦三郎
重臣布勢掃部:市川團蔵
重臣二上将監:坂東楽善
家老射水頼母:市川左團次
夜の部
一、「宮島のだんまり」
出演
傾城浮舟太夫実は盗賊袈裟太郎:中村雀右衛門
畠山庄司重忠:中村又五郎
典侍の局:中村梅枝
悪七兵衛景清:中村歌昇
相模五郎:中村萬太郎
大江広元:尾上右近
白拍子祇王:中村種之助
御守殿おたき:中村歌女之丞
浪越采女之助:中村東蔵
平相国清盛:中村歌六
二、「春をよぶ二月堂お水取り『達陀』」
作:萩原雪夫
美術原案:守屋多々志
出演
僧集慶:尾上松緑
青衣の女人:中村梅枝
幻想の集慶:尾上左近
練行衆:片岡市蔵
同:中村松江
同:中村歌昇
同:中村萬太郎
同:坂東巳之助
同:坂東新悟
同:尾上右近
同:大谷廣太郎
同:中村種之助
同:中村児太郎
同:中村鷹之資
同:中村莟玉
同:中村玉太郎
同:市村橘太郎
同:中村吉之丞
堂童子:坂東亀蔵
三、「『梅雨小袖昔八丈』髪結新三」
作:河竹黙阿弥
出演
髪結新三:尾上菊之助
弥太五郎源七:坂東彦三郎
手代忠七:中村萬太郎
お熊:中村児太郎
車力善八:尾上菊市郎
勝奴:尾上菊次
家主女房おかく:市村萬次郎
家主長兵衛:河原崎権十郎
加賀屋藤兵衛:中村錦之助
後家お常:中村雀右衛門