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原因は自分にある。“観測者の声”初めて響くワンマンで生まれた熱狂と感動「僕たち7人は本当に幸せ」

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ナタリー

原因は自分にある。(撮影:米山三郎)

原因は自分にある。が昨日4月14日に東京・Spotify O-EASTでワンマンライブ「LIVE 2023 -Loud & Shuffle-」を開催した。

2019年7月に結成されたげんじぶが初の有観客ワンマンを行ったのは、コロナ禍真っ只中の2021年4月。観客の声出しが制限された環境下でライブ活動を重ねてきた彼らにとって、この「Loud & Shuffle」は初めて観客の声出しが許されたワンマンとなった。昼夜2部制で行われた本公演を、音楽ナタリーでは第1部の模様を中心にレポートする。

砂嵐で乱れる画面に映し出される「原因は自分にある。」のロゴマークや廃墟を動くサーチカメラ……ステージ後方の壁面を成すLEDビジョンに流れる不穏なオープニングムービーが来場者の緊張感を高める中、現れた6つの影。縦1列に並んだ彼らが会場の明転を合図にはっきりとその姿を見せたその瞬間、げんじぶのワンマンライブに初めての歓声が響き渡った。

解き放たれた観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)の声とともに始まった1曲目は、3月にリリースされたばかりの「Mr. Android」。自我が芽生えてゆく壊れかけのアンドロイドの“CPU(心)”の叫びを歌うこの曲で、6人は硬質な身体表現とバイタリティに満ちたダンスをハイブリッドさせて“機械”と“人間”の間を行き来する、ドラマチックなパフォーマンスで聴衆を引き込んでゆく。原曲では楽曲提供者のizkiとともに歌うサビパートをこの日は1人で歌い上げる武藤潤、桜木雅哉、長野凌大の歌声は力強く、凌大は間奏のコーラスパートでもステージ中央でファルセットボイスを響かせた。また、この日はライブ欠席となった杢代和人の歌唱パートでは彼のメンバーカラーである緑色のサーチライトがあちこちから放射され、彼らが常に“7人”でステージに立っていることを観る者に印象付ける。

キャッチーなギターリフに乗せて2曲目の「嗜好に関する世論調査」へ進むと、吉澤要人は「ライブでの声の出し方、覚えてますか?」と観測者に呼びかけた。これまでのライブでは手振りで盛り上がっていた「2択 2択 2択」のパートでメンバーが声出しを求めると、観測者たちは大きな声でこれに反応。まっすぐに発せられる迷いのない声を受け止めた6人は一様に笑顔を浮かべ、メンバーは次々に自分のマイクをフロアへと向ける。そんな彼らが次に用意していたのは、げんじぶの数少ない“コール曲”とも言える初期曲の「ギミギミラブ」。大倉空人が「声出せるぞ、みんな! 行こうぜ!」と合図すると、観測者は息ぴったりに「炭酸水!」と歌詞のワンフレーズを叫び、3年のブランクを一気に飛び越えてみせる。サビパートではメンバーのジャンプに合わせて「Hey!」の声が響き渡り、凌大と雅哉が見せたハグにも大歓声が。せわしなく動くカラフルな照明演出もにぎやかなムードを盛り上げ、場内の熱気はぐんぐんと高まっていった。

ライブ冒頭から“声出し曲”を並べて観測者のリミッターを解除した6人もまた熱い声援に興奮を隠せない様子で、3曲を終えてのMCでは凌大が「げんじぶ史上初、ワンマンでの声出し! 盛り上がってますか? みんな最高やん!」と熱っぽく感想を伝える。2部で潤が「皆さんの声めっちゃ聞こえましたね。あと“炭酸水”!」と言うと、このパートを歌った雅哉も「気持ちよかったー! 和人に聞かせたいんで、和人が戻ってきたらまた聞かせてあげて!」と観測者に語りかけた。また、空人が「私、12日に誕生日を迎えまして。ボイトレを兼ねて一緒に歌いましょう?」と言うと、観測者は待ってましたとばかりに「Happy Birthday To You」の大合唱を空人に贈る。観測者とメンバーに全力で誕生日を祝われた空人は「マジかよ。俺ちょっと、帰っていい?(笑) 満足だわ……」「こんなにうれしい誕生日、今まであったかな?」と、冗談混じりに感激を伝えていた。

MCパートの最後、げんじぶの“ボイトレリーダー”雅哉がメンバーの名前を使ったコール&レスポンスをリードして一体感を高めたのち、小泉光咲が「3、2、1」とつぶやいて観測者に“魔法”をかけ、ライブは「魔法をかけて」で再開。6人は柔らかなメロディラインに息の合ったハーモニーを乗せ、ダンスの折々で見せるメンバー同士のアイコンタクトでも観る者を笑顔にする。そして、光咲が「次は『Loud & Shuffle』の“Shuffle”のパート、楽しんでいきましょう」と聴衆を誘うと、この日最も驚きと歓喜の入り混じる声が沸き上がったセクションへと突入した。

ライブタイトルにある「Shuffle」とは、本公演のために組まれたペアもしくはトリオで楽曲が披露されることを示唆したもの。ピンスポットに当てられた6人のうち、ステージに残った光咲、雅哉、要人が届けたのは「In the Nude」で、ジャジーなブラスサウンドを軽やかに乗りこなしながら艶っぽい身振りで観測者を魅了する3人は、シンガロングも積極的に求めてオーディエンスのテンションを高めていく。そして「半分相逢傘」のイントロが鳴り響く中で互いに顔を寄せ合う空人と凌大の姿が目に飛び込んでくると、観測者からは悲鳴のような歓声が。2人は鏡合わせで動きをシンクロさせたダンスを踊りながら、道ならぬ2人の関係性を歌うこの曲を直情的に表現してみせる。普段は光咲が担っているセリフパートも2人のためにアレンジが施され、2部では「ねえ空人、今日の夜どうする?」という女性の声に「どうするって? わかってるくせに」と返した空人、「ねえ凌大、このあとどうする?」という声に「俺の家来なよ。朝まで一緒にいたい」と返した凌大、それぞれの言葉が観測者の心を鮮やかに撃ち抜いていた。

そして、昨年3部作としてリリースされた「青、その他」「結末は次のトラフィックライト」「545」は、それぞれの楽曲のジャケットを飾ったペアやトリオが楽曲を披露するという「Loud & Shuffle」ならではの特別な趣向で届けられた。「青、その他」の和人の代わりはメンバーいわく「名前が似ている」要人が務め上げ、彼の深く優しい歌声は光咲の清涼感に満ちたボーカルと柔らかく混ざり合い、さわやかにライブハウスを満たしてゆく。疾走感あふれるバンドサウンドが特徴の、3曲の中で最もパワフルなナンバー「結末は次のトラフィックライト」でペアを組んだ潤と要人はダイナミックなジャンプを取り入れたダンスを踊って観測者を沸かせ、息の合ったサビパートのユニゾンでも聴衆を魅了。「545」チームの空人、雅哉、凌大は時折じゃれ合うような仕草を見せながら朗らかに楽曲を歌い上げ、空人は光咲パートのロングトーンを伸びやかな歌声で担ってみせた。

この日のために用意された特別なステージを終えた6人はMCでさっそくシャッフルパートを振り返り、光咲は「なかなかないことだよね」としみじみ語る。1部では「半分相逢傘」ペアの空人と凌大が「なんでこの2人なんだろうね?」「一番(曲の世界観から)遠い2人!」と言い合って首をかしげ、空人は「凌大、セリフパートのリハがひどかったんだから!(笑)」と、照れっぱなしだったという凌大の本番前の姿を観測者に明かした。また、2部では「Loud & Shuffle」のために用意されたレトロテイストなドレスシャツ&ベストの装いのお気に入りポイントを、1人ずつ発表していった6人。ここでは「(衣装が)見えなーい!」と声を上げる観測者のリクエストに応えて、メンバーが順に華麗なターンを見せたりポーズを決めたりするという流れができあがり、ステージ上とフロアをスピーディに行き来する言葉のラリーが今までの彼らのライブの空気感とはひと味異なる盛り上がりを生む。6人が感想や声を求めるたびに「最高!」と反応する観測者の言葉からもまた、まっすぐに思いを伝えることのできる喜びと楽しさがにじんでいた。

観測者のつぶさなリアクションと、それを完璧にさばく空人の進行によってトークの賑やかさがぐんぐんと加速していったMCタイムからスマートにモードを切り替えたのは雅哉。彼が「それでは中盤戦、僕らの世界観を見せていきます」と告げた「幽かな夜の夢」では、ステージ背景全面に貼られたLEDビジョンにリリックが踊る映像が映し出され、6人はダイナミックな青空や星空をバックに、チームワークが光るボーカルリレーとエネルギッシュな躍動を見せてオーディエンスを惹き付けた。そして、時計の針の音が「無限シニシズム」の始まりを告げると彼らは瞬時に舞台上の世界観を変化させ、シニシズム(冷笑主義)というタイトル通りの冷え切った微笑みで天を仰いで観測者の感嘆の声を誘ってみせる。ラストスパートをかける前にMCタイムを取った彼らは、ここで最新ナンバー「放課後ギュッと」を話題に挙げ、1部ではペンライトを使ったサビの手振りの動きを、2部ではミュージックビデオ撮影での思い出話を観客に伝授。しかしながら空人は「この曲、このあとやるかはわかりません!(笑)」と言って観測者のどよめきを誘い「ごめんね、みんな知ってるかな?って確認したくて。承認欲求!」と茶目っ気たっぷりに観衆からの期待の眼差しをかわした。

「やっとこの曲一緒に歌えます! 今日はあなたの声が聞きたいです。僕たちに届けてください、そして和人に届けてください!」。凌大の熱い呼びかけとともに、ライブは「原因は君にもある。」でクライマックスへ。昨年、結成3周年の記念曲として発表され、声が出せない中でもメンバーと観測者の間で熱いエネルギーの交換が行われてきたライブアンセムで「やっと来たよ、この時間。みんなの声聞かせて!」とメンバーが叫ぶと、観測者たちは間奏の「ららら……」のコーラスを思い切りシンガロングし、歌声でパフォーマンスに参加する。観測者の声を得て、この曲がようやく“完成形”を見せたことを実感した6人の顔には笑顔が弾け、雅哉は自身のパートを「好きだ、好きだ、めっちゃ好きだ!」と歌い替えてフロアに指差し。空人も踊りながら「観測者愛してるぜー!」とまっすぐに思いを伝えた。エモーショナルなムードが空間にあふれる中、ギターサウンドからの「1、2、3、4!」というカウントでドロップされたのは、6人が披露への期待感を高めていた「放課後ギュッと」。ポップで熱気あふれるパフォーマンスに触発された観測者から自然発生的に「はい! はい!」というコールが起こったり、「あーやってらんねー!」とメンバーが声を合わせるパートに観測者も阿吽の呼吸で参加したりと、初披露とは思えない結束感に6人とオーディエンスのテンションがぐんぐんと上昇してゆく中、続く「Lion」で場内の熱狂は最高潮に。ギターが唸りを上げるハードなロックサウンドに身を委ねた潤がパワフルな発声で歌い出しを担うとステージ前方からはスモークが勢いよく噴出し、盛り上がりを加速させる。エネルギッシュなコールやシンガロングを受けたメンバーは振り切ったテンションでワイルドに音に乗り、持ちうる力すべてを出し切るようなパフォーマンスで観測者を圧倒した。

げんじぶの楽曲の中で最も熱い「Lion」から、キュートなエレクトロポップの「チョコループ」へ。ジェットコースターのような振れ幅の急展開で6人が愛らしい表情や仕草を見せて観測者を翻弄したのち、光咲の「皆さん、最後の最後まで声出して楽しんでいきましょう!」という言葉に乗せて「桜Ground」が始まると、6人の背景は満開の桜が咲き乱れる春の光景に色を変える。ステージいっぱいに広がったメンバーは弾ける笑顔を浮かべながらさわやかに歌声をつなぎ、ハンドウェーブでフロアをひとつに。ラストサビで彼らが肩を寄せ合って人差し指を空へと掲げると、観測者も大きなシンガロングで彼らと声を合わせ、桜吹雪の景色の中でライブハウスは幸福感いっぱいのムードに満たされていった。

最後の曲を前に改めて観測者と向き合ったメンバーは、げんじぶの活動の中で1つの記念碑的なライブとなったこの日の感想を伝えてゆく。「改めて、初めてライブをしている感覚になって」と切り出した要人は「僕らがコールすると、レスポンスしてくれる。それが僕らにとっては感動で。声が届くって本当にうれしいと思ったし、声を出し合って、笑い合っていけば、もっともっといい空間を作っていけるんじゃないかなって、期待が高まる1日になりました。みんな、これからも一緒に作ってくれるかな?」と聴衆に語りかける。2部のMCでは、空人が「僕らが皆さんの声を聞いたのって、2ndシングルの『嗜好に関する世論調査』のリリースイベント(2020年1月)以来なんですよ! (「ギミギミラブ」の)炭酸水!が“最後の言葉”でした……」と言って笑いを誘いつつ「ただ、こうやってげんじぶも3年間で成長して、こうして声を出して一緒に空間を作ることができて、僕たち7人は本当に幸せです。これからのげんじぶが、今日のライブで見えたなと思いました。まだまだこれからも素敵なライブを。声出して一緒に作っていきましょう!」と瞳を輝かせる。また、このMCパートでは、その「嗜好に関する世論調査」以来のシングルとなる3rdシングル「Foxy Grape」が6月7日にリリースされることも発表に。会場のあちこちから飛び交う「おめでとう!」という言葉をうれしそうに受け止めると、空人は「最後にこの曲を観測者に届けます」と告げ、メンバーは活動初期から大切に歌ってきた「ラベンダー」でこの日のライブを締めくくる。甘くて切ないラブソングで観測者と笑顔を交わし、ラストナンバーを駆け抜けた6人の表情にはあふれ出る充実感が。潤が「声出して一緒に踊ってくれてありがとう。めちゃくちゃ楽しかったです。以上、僕たちは原因は自分にある。でした!」と挨拶すると、彼らは何度も「ありがとう!」を伝えながら観測者に手を振り、「また会おうね!」「また素敵な空間作りましょう!」と約束していた。

原因は自分にある。「LIVE 2023 -Loud & Shuffle-」2023年4月14日 Spotify O-EAST セットリスト

01. Mr. Android
02. 嗜好に関する世論調査
03. ギミギミラブ
04. 魔法をかけて
05. In the Nude
06. 半分相逢傘
07. 青、その他
08. 結末は次のトラフィックライト
09. 545
10. キミヲナクシテ
11. 幽かな夜の夢
12. 無限シニシズム
13. 原因は君にもある。
14. 放課後ギュッと
15. Lion
16. チョコループ
17. 桜Ground
18. ラベンダー