「ぬいしゃべ」細田佳央太、「観た人の葛藤や生きづらさを和らげられたら」
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左から駒井蓮、細田佳央太、金子由里奈。
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」の公開記念舞台挨拶が本日4月15日に東京・新宿武蔵野館で行われ、細田佳央太、駒井蓮、監督の金子由里奈が登壇した。
大前粟生による同名小説を映画化した本作では、大学のぬいぐるみサークルを舞台に、“男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手な七森、彼と心を通わせる麦戸、そして2人を取り巻く人々の姿が描かれる。細田が七森役で主演を務め、駒井が麦戸に扮した。
大学生の頃に原作小説に出会ったという金子は、「自分の無自覚な加害性に真正面から向き合わざるを得ない小説体験で、今の社会に喫緊に届けるべき作品だと思いました。私は創作するうえで、スクリーンから取りこぼされてきたようなものや景色、人を撮りたいという思いがあり、自分が映画化したいと思いました」と思いを述べる。
また本作の脚本は金子と、その兄である金子鈴幸の共同で執筆された。脚本を読んだ感想として細田は「今まで自分が抱いていた疑問って間違ってなかったのだと感じました。僕自身、生活していく中で疑問を感じることも多く、考えやすいタイプで『めんどくさい人間なのかな?』と思うこともあったんです。でも脚本を読んで間違ってなかったんだと安心しました」と語り、駒井は「原作、脚本に出てくる登場人物がみんな、自分が傷付いていることを素直に受け止め、受け入れることができる人たち。こういうキャラクターが出てくる脚本には初めて出会いました。と同時に、この作品が世の中に出ていったら何かが変わるんじゃないかなと思いました」と述懐。金子も「七森と麦戸の対話のシーンでは、自分たちの主義や主張をいくらでも2人に託すことができたと思うんですが、説教くさくならないよう、兄と話し合って、あくまでも“大学1年生の等身大の悩み”を描こうとこだわりました」と明かした。
細田は金子の印象について「オファーのときの『私はこの映画で革命を起こしたいんです』という金子監督の一言が決め手になりました。皆さんきっとそんな思いで作品と向き合っているとは思うんですが、言い切れる人って限られていると思うんです。面と向かって言ってもらえるのが幸せでしたし、この監督のためにがんばらなきゃと思いました」と回想。さらに「監督が撮らなかったら、こんな優しい作品にならなかったと思う」と笑顔を見せる。同じく駒井は「監督のしぐさや話し方が『ぬいしゃべ』の世界観そのもの!という感じがして、ぜひご一緒したいと思いました」と振り返った。
イベントの最後には、細田が「この揺れ動いている時代にとても合った作品だと思っています。この映画が起爆剤になって、観た人の葛藤や生きづらさを和らげられたらと思いますし、その和らいでいくのが当たり前な世の中になってほしいです」、駒井は「優しさを決め付けない映画です。人それぞれの優しさがあるし、観たあとに周りの人たちと、優しさについておしゃべりしたりしてくれたらうれしいです」とそれぞれコメント。続く金子が「この作品は何かを立ち止まって考えるきっかけや、対話の始まりがちりばめられている映画。対話の相手は、人だけじゃなく、ぬいぐるみでも、植物でも、街でもいい。何かしらのおしゃべりにつながったらうれしいです。そして、世の中には“あなたは大丈夫”というコンテンツがあふれていますが、それはある種の祈りのようなもの。この映画は“大丈夫じゃなさ”をうなずきたいと思って作った映画です。どうか届いたらと願っています」と締めくくった。
「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」は全国で公開中。
(c)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」