星野源、『FNS歌謡祭』で新曲「Pop Virus」をテレビ初披露 「アイデア」との共通点を考える
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星野源が12月12日放送の『2018 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)第2夜に出演。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌であった「アイデア」と、12月19日に発売するアルバム『POP VIRUS』の表題曲「Pop Virus」を披露するとのこと。なお「Pop Virus」はテレビ初披露となる。そこで本稿では、両曲の魅力と共通点について改めて考察していきたい。
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8月に配信限定シングルとしてリリースされた「アイデア」は大胆なアレンジが話題となった楽曲だ。1番ではマリンバやバンドサウンドを利かせた“陽”の要素を取り入れ、2番ではビートミュージックに内省的な歌詞をのせた“陰”をイメージ、さらに2番の直後には自身の原点である弾き語りを取り入れている。明るさの背景にある葛藤や怒りをも表現したアレンジは、聴き手を驚かせた。これまでの星野にとっても“陰”というのは大事な要素でもあったが、ここまで明確に打ち出されたことはなかったのだ。
そして「Pop Virus」は、「アイデア」にもあった感情の揺らぎをさらに突き詰めた楽曲。冒頭では、ほぼギターとキックのみという音数が少ないサウンドに、〈音の中で君を探してる〉〈霧の中で朽ち果てても彷徨う〉〈闇の中で君を愛してる〉など閉ざされた世界から物事を見ているかのような言葉が並ぶ。こうした閉塞感のあるワードの数々は、シンプルなサウンドのなかで強烈に響いてくる。そこにガラスが割れるような音やノイズのような音が突然入り込み、聴き手をドキッとさせ引きこんでいく。
さらに楽曲が進むにつれて、メロディアスな跳ねたストリングスや、温かみのあるキャッチーなシンセを導入。ノイズ、ストリングス、シンセ……それぞれの音が主張し合いながら混在する同曲からは、まるで喜怒哀楽全てが共存しているかのような感覚を抱く。まさに『POP VIRUS』のコンセプトでもある「言葉にするのが難しい感情/感覚」をそのまま表現しているかのようだ。そんな複雑な楽曲でありながら、開放的なメロディと歌声によって“ポップス”として成立させているところも星野の手腕を感じてならない。
また、全体的にR&Bの要素を強めた同曲は、昨今のシングル曲に感じられる歌謡曲に則ったような“星野源メロディ”とは一線を画している。前作アルバム『YELLOW DANCER』を聴いた際に心が躍ったのは、シングル曲には無い新たな星野の一面が見えたからだったことを思い出した。
「Family Song」や「恋」のような不特定多数に向けられた楽曲とは対照的に、「アイデア」と「Pop Virus」では自身の内にある“翳り”が取り入れられている。星野楽曲特有のポジティブさは維持されているものの、それによってより一層“翳り”を浮き彫りにさせているように聴こえてくる。『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、2017年はとても苦しい1年であったことを明言していていた星野。「アイデア」や「Pop Virus」は、彼自身がギリギリの状態であったからこそ生まれた作品なのだろう。両曲にはそうした危うさが漂っていて、だからこそ目が離せないし深追いしてしまうのだ。(北村奈都樹)