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NAOKI MAEDAが明かす、小坂りゆと手がけた『はるかなレシーブ』ED曲制作秘話

音楽

ニュース

リアルサウンド

 7月より放送がスタートしたTVアニメ『はるかなレシーブ』(TOKYO MXほか)は、『まんがタイムきららフォワード』(芳文社)で連載中の漫画を原作に持つ、ビーチバレーを舞台とした作品。このアニメ、本編はもちろんなのだが、劇伴はアニメ好きでも知られる世界的プロデューサーのラスマス・フェイバーが手がけ、エンディングは音楽ゲームのプロデューサーとして名を馳せてきたNAOKIが、かつてゲームやソロ作品でプロデュースした小坂りゆと再タッグを組んだ「Wish me luck!!!!」と、音楽面にも注目が集まっている。

 リアルサウンドでは今回、2016年2月ぶりとなるNAOKI MAEDAへのインタビューを行い、前回から変化した立ち位置や、「Wish me luck!!!!」の制作秘話などについてじっくりと話を聞いた。(編集部)

「自ら仕掛けたセカンドステージを自ら閉じた」

ーーまずは、前回お話を伺ったときから変化したNAOKIさんの現状について聞かせてください。

NAOKI MAEDA(以下、NAOKI):僕はもともと「音楽を創るプロデューサー」と「ゲームを創るプロデューサー」という2つの顔があって。どちらも現在進行形なんですけど……「音楽を創るプロデューサー」については、現在はフリーで活動推進している感じですね(笑)。

ーーなるほど。作家としてフリーになったのは、『CHUNITHM』への楽曲提供があった頃とみていいのでしょうか?

NAOKI:そうですね。業界の中で僕がフリーで曲を書けると知ったSEGA社からお声をかけていただいたんです。これまでは同業他社という関係上、ライバル的存在だったんですけど、彼らのコンテンツの創り方に興味がありましたし、オーダーを受けてどれだけアウトプットできるか、という作家としてのモチベーションも高まっていたし、「初心に返ろう」という気持ちもあったので、受けさせていただきました。

ーー「初心に返ろう」という気持ちになったのは、どういった心境の変化があったのでしょうか。

NAOKI:長年大手メーカーに所属して、歴史ある音楽ゲームの立ち上げからずっと関わらせてもらっていましたけど、多くのお客様に支えられているタイトルやシリーズが得られる安定というものは、いつしかクリエイターにとって刺激的な挑戦や大胆な試みが出来にくくなるジレンマが生じたりします。また、この先も人気は続くだろうから、わざわざ事を荒らすようなことをしなくても大丈夫、というような安堵感というか、錯覚に陥るようなシチュエーションがわりとあって、それが僕のクリエイター側面にどうもしっくり来なくて……。気付けば、自分の中のクリエイティブに対する信念や情熱を抑えきれなくなり、何もない更地のようなところから、いちから挑戦しようと心機一転を図ったわけです。周りの反応は、「嘘? なんで? わざわざ今を捨ててまでして?」というものでしたけど……(笑)。

 ゼロからのスタートはやはりゼロであって、最初こそ上手くいきましたけど、新境地では当然ながら音楽ゲームというものに対する見解やノウハウがなくて苦しいことが多々あり、ビジネスですから結果を急がされてしまったところもあったりして、自分ひとりでやれることの限界を痛感しつつも、足掻きつつ……(苦笑)。断腸の思いを抱きながら、自ら仕掛けたセカンドステージを自ら閉じました。この後しばらく自重モードに入っていたのですが、絶対にオファーをもらえないだろうと思っていたSEGA社から、コンポーザーとして参画してほしいとお声がけいただいて、「僕にできることがあれば」という形で曲を提供させていただく運びとなりました。

ーー『CHUNITHM』に提供した「otorii INNOVATED」は、ご自身の“リブート”となる曲だとTweetされていました。

NAOKI:SEGA社の音楽ゲームプロダクションのスタッフの方々は、音楽ゲームに対する熱量がハンパじゃなく、造詣も深いからこそインスパイアを受けることも多く、奇抜なアイデアをすごく持ってきてくれて……それに圧倒されたというか、彼らに目覚めさせられた感が明らかにあって、再覚醒を感じたままに閉じ込めた楽曲になっていると思っています。アイデアといえば、2018年4月1日の『CHUNITHM』での僕を絡めたエイプリルフール企画や、2018年6月にリリースされた「セガ ラッキーくじ CHUNITHM&maimai+オンゲキ」の僕のCDなんかは特に(笑)。

ーー『Dynamite Dynamite Rev. -NAOKI SPECIAL ALBUM-』のジャケット、面白かったです(笑)。

NAOKI:あれも僕のアイデアじゃないですからね!(笑)。

「今回の依頼は自分にとっても超刺激的でした」

ーーそれをノリノリで受けるNAOKIさんもすごいと思いますよ(笑)。そして音楽作家としてのお仕事はより広がっていて、今クールのアニメ『はるかなレシーブ』(AT-X、TOKYO MXほか)ではエンディングテーマ「Wish me luck!!!!」の作編曲を手がけています。

NAOKI:これは『オンゲキ』の音楽制作を担当しているKADOKAWAの方と繋がったことがきっかけで、お話をいただいたんです。

ーー音楽作家としてはフリーランスになったとはいえ、アニメの楽曲を手がけるとは思ってなかったんじゃないですか?

NAOKI:実は多数ある別名義で……ということはさておき(笑)、久々の機会だったこともあり、だからこそ気合が入りました。特に音楽ゲームにおいて、明るめなテイストのものを創ることは何度もあったんですけど、本来の自分はダークなテイストのイメージが強く。きっかけがないと明るい曲を進んで創ることはなかったので、今回の依頼は自分にとっても超刺激的でしたね。

ーーいつもと違う自分が引き出されたような。

NAOKI:ビーチバレーがテーマのアニメということで、不健康な夜闇の中で暮らしていた人間が日差しのもとに引きずり出されたような感覚でした。でも、担当の音楽プロデューサーさんが色々と的を射たサジェスチョンをしてくださり、次第に自分の中にある夏やスポーツ感、ポップでキャッチーな要素が引き出されていきました。

ーーそもそも、劇伴をラスマス・フェイバーが担当する時点で驚きですからね。NAOKIさんのなかで突破口が見えた瞬間は?

NAOKI:ユニゾンじゃなくて、複数人がソロパートで声を重ねていく構成にする、というアイデアをもらった時に、覚醒した感じはありましたね。もともとEDMっぽくというリクエストはあったんですけど、最終的な形としては久しぶりにギターも弾いたりして、アナログでもありデジタルでもある、ある種ミクスチャーみたいな形のサウンドになりました。

ーー個人的にはNAOKIさんがNM名義で創っていた「KEEP ON MOVIN’」にも近いテイストを感じました。

NAOKI:なんとなく近いかもしれないですね。ライトなギターも弾いてるし。でも、ここに『はるかなレシーブ』の世界観にマッチする歌詞を乗せるのが大変で。そういう歌詞を創れる人って誰やろう? と思った時に、小坂りゆの顔が浮かんだんですよ。

ーー「作詞:小坂りゆ、作編曲:NAOKI MAEDA」というクレジットは、往年の音ゲーファンには堪らない字面でした。

NAOKI:彼女自身、明るいアニソンの歌詞を何曲も書いたことがあるし、『はるかなレシーブ』の漫画を読み込んで、世界観に浸って作詞したとのことでした。完成した歌詞を見た時点で「これは良い曲になるぞ!」という予感がピキッときましたね。

ーーNAOKIさんの手がけた曲ではあるんですけど、小坂さんの詞が乗ることによって、若干歌にも彼女の成分が入っているような気がしました。

NAOKI:あの独特な歌い回しや言葉の乗せ方に、彼女らしいものはありますよね。だから、個人的にはうまく僕らしさと彼女らしさ、そして作品のテイストがリンクしたと思っています。実際のレコーディングは一部しか立ち会えなかったんですけど、声優さんたちの声が乗っかって、やっぱり声を武器にしている人は違うなと思ったし、そこで初めて楽曲に生命が吹き込まれたような、僕なりの『はるかなレシーブ』がようやく形になったような気がしてホッとしました。

ーーひとつひとつの言葉が跳ねている感じやライトなギターが、どことなくNAOKIさんっぽいんですけど、声優さんの声が重なることで新鮮に聴こえてくるのは、個人的にも面白かったです。

NAOKI:最後の〈大きな声で叫ぼう〜〉とリフレインするところなんかは、まさにその象徴ですよね。4人のキャラクターを浮かべながら書いて、声が乗ってまさにその通りになったお気に入りポイントです。

ーーあと、NAOKIさんに反応もしてもらったんですが、先日行われた、世界的に活躍する若手音楽プロデューサーのポーター・ロビンソンによるサイドプロジェクト=Virtual Selfの来日公演で、NAOKIさんの手がけた「PARANOiA」「TRIPMACHINE」がスピンされていました(参考:Virtual Selfが来日公演で見せた、音楽ゲーム・アニメ楽曲の先鋭的な再解釈)。このように、自身の蒔いた種が時を経て世界の音楽に影響を与えていることについて、ご自身ではどう感じますか?

NAOKI:なんか複雑ですけどね(笑)。でも、約20年前から自分たちのやってきた音楽が、サブカルチャーになって色んな人たちに影響を与えていたり、好きでいてもらえたりすること自体は嬉しいですよ。公言している人でもそうでなくても、なんとなく曲を聴いたりするとそういうテイストを感じたりして、それこそボカロPのコンポーザーからは、プンプン臭ってたかも(笑)。それだけ時間が経ったんだなと言ったらおっさんみたいですけど、そう感じざるを得ないエピソードでした。でも、それってゲームをすることがサブカルチャーでも特殊でもない、それこそゲームクリエイターが人気の職種になるくらいの多様化享受の時代になったからこそ、当たり前の感覚なのかなとも思っていて。

ーー確かにそうですね。いまやほとんどの人が何かしらのゲームをやっているような時代になりました。

NAOKI:そのゲームに対して変な偏見もなくなったし、プレイしている人がミュージシャンだったら音楽にも耳がいくし、影響を受けることも増えてくると思うんですよ。実際に音楽ゲームプレイヤーであったユーザーが、立派なプロミュージシャンになっているという話もよく耳にします。当時はいつか消えていくようなジャンルなのかなと思ってたんですけど、気付けば定着した1ジャンル、音楽+ゲームの複合文化になっていたという。

「クリエイティブの着眼点はグローバルで在りたい」 

ーーそれぞれ形を変えながらではありますが、ちゃんと引き継がれていっていると思います。ご自身もこういう形の“継承”を目の当たりにすると、刺激になりますか?

NAOKI:もちろん。だからこそ「これで終わりだ、これが最高傑作だ」とは思わないようにしています。そう思っちゃうと自分が錆びていくような気がしていて。人間、大人になるにつれて動くより考えることのほうが先に行ってしまうし、技術を持ってしまうとよりその方向に行きがちなんですけど、僕はそれが嫌なんです。創作じゃなくて“仕事”になっちゃうから。大人として生活をしていくという意味では必要かもしれないけど、そこに情念を入れることをしないと、人を感動させるようなコンテンツにはならない。それは自分が発注する側でも同じで、「ダブステップ」をオーダーしたとしても、そのままの「ダブステップ」が上がってきてほしいわけじゃない。その人の個性やカラーを存分に出したものが欲しいだけで、注文はあくまで枠組みでしかないんです。

ーーそこを踏まえた上で、驚かせてくれるものが欲しいと。

NAOKI:そう。ただその枠組みのままで作ることは、技術を持ってる人なら誰でもできる。僕はそんな量産型のものを求めてるわけじゃなくて、その人にしかできないサウンドカラーが欲しいわけで。ちょっと特殊かもしれないですけど、その方がお互いに刺激し合えると思うんですよ。

ーーそのほうが、結果的に最初は予想もしてなかったけど、めちゃくちゃいいものが生まれてきたりするわけですか。

NAOKI:そういう化学反応を期待しちゃうんですよね。その相手が若手だろうがベテランだろうが関係なくて。自分にとっても一生勉強だし、色んな人とご一緒することで、クリエイティブな部分やそれぞれの表現方法を吸収させてもらったりします。十人十色のものがあるなら、僕はそれぞれを学んで吸収したいと思っていて。

ーーなるほど、そうなんですね。

NAOKI:過去に渡って、様々なモノから得た化学反応的なパワーで創った曲がいっぱいあります。こういう曲は自分の心の中にすごく残るものになっていて、アニメやゲームや特撮などのクールジャパンと呼ばれるもの、日本が誇るサブカルチャーで結ばれるものに関してはもっともっと果敢にチャレンジして、世界に向けて発信していきたいなと思っています。常に日本のみの受けに留まるのではなく、クリエイティブの着眼点はグローバルで在りたいと思っていますし、世界の人々に愛されるコンテンツ制作を今後も念頭において、自分のやれる最大で努めていきたいと思っています!

(取材・文=中村拓海/撮影=林直幸)

■リリース情報
『FLY two BLUE』
歌:大空 遥(CV:優木かな)、比嘉かなた(CV:宮下早紀)
発売:2018年8月22日(水)
価格:¥1,200+税
【アニメ描き下ろしジャケット仕様】

<収録内容>
01. FLY two BLUE(TVアニメ「はるかなレシーブ」OPテーマ)
作詞・作曲・編曲:西川マコト
02. タイトル未定
03. FLY two BLUE(instrumental)
04. タイトル未定(instrumental)

『Wish me luck!!!!』
歌:大空 遥(CV:優木かな)、比嘉かなた(CV:宮下早紀)、トーマス・紅愛(CV:種﨑敦美)、トーマス・恵美理(CV:末柄里恵)
発売:2018年8月22日(水)
価格:¥1,200+税
【アニメ描き下ろしジャケット仕様】

<収録内容>
01. Wishmeluck!!!!(TVアニメ「はるかなレシーブ」EDテーマ)
作詞:小坂りゆ 作曲・編曲:NAOKI MAEDA
02. タイトル未定
03. Wish me luck!!!!(instrumental)
04. タイトル未定(instrumental)

■アニメ情報
『はるかなレシーブ』
<CAST>
大空 遥(CV:優木かな)
比嘉かなた(CV:宮下早紀)
トーマス・紅愛(CV:種﨑敦美)
トーマス・恵美理(CV:末柄里恵)
遠井成美(CV:島袋美由利)
立花彩紗(CV:伊藤かな恵)
大城あかり(CV:木村千咲)

<STAFF>
原作:如意自在(芳文社「まんがタイムきららフォワード」連載)
監督:窪岡俊之
シリーズ構成・脚本:待田堂子
キャラクターデザイン:小田武士
音楽:ラスマス・フェイバー
音楽制作:KADOKAWA
アニメーション制作:C2C
製作:はるかなレシーブ製作委員会

■関連リンク
『はるかなレシーブ』公式サイト
『はるかなレシーブ』公式Twitter(@harukana_anime)