『コナン』75億! 『アベンジャーズ』40億! 10連休は映画業界のためにあった!?
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ゴールデンウィーク明けということで、2週分の成績が同時に発表された映画動員ランキング。10連休の最後の日となった5月6日の時点で、『名探偵コナン 紺青の拳』は動員591万人、興収75億円突破。『アベンジャーズ/エンドゲーム』は動員279万人、興収40億円突破。『キングダム』は動員267万人、興収35億円突破。10連休の真っ最中の5月3日に公開された『名探偵ピカチュウ』も、初日から4日間で動員67万6000人、興収9億4800万円。日本映画/外国映画/実写作品/アニメ作品を問わずとにかく景気がいい数字が出揃った。
参考:『キングダム』2位の好スタート 『コナン』『アベンジャーズ』の一騎打ちに「待った」をかける
中でも特に目を引くのは、4月26日に公開されて、最初の週末だけで動員96万人、興収14億円突破という圧倒的な数字を叩き出した『アベンジャーズ/エンドゲーム』だ。これまで11年の間に21作品が公開されたきたマーベル・シネマティック・ユニバース作品の中で、今回の『エンドゲーム』が過去最高興収を記録した2012年の『アベンジャーズ』第1作(36.1億円)を軽く超える成績を収めるであろうことは本コラムでも予測してきたが、まさか前作『インフィニティ・ウォー』比で約2倍のペースで数字を積み上げるほどの特大ヒットになるとは。『ブラックパンサー』と『インフィニティ・ウォー』が大きなムーブメントとなった昨年、世界でほぼ唯一の「マーベル作品が1週も動員1位にならなかった国」であった日本だが、今年は公開週の1週だけとはいえ強敵『コナン』を大きく引き離してみせた。
ちなみに全世界でほぼ同日公開となった『エンドゲーム』は、公開から11日間で20億ドルを突破、マーベル・シネマティック・ユニバース過去最高の成績を更新したのはもちろんのこと、現時点で『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や『タイタニック』を超えて早くも興収歴代2位の座まで到達。歴代1位の『アバター』を超えるのも時間の問題とされている。そう、『エンドゲーム』が規格外なのはとにかく興収を稼ぎ出すその「時間」だ。前述したように『エンドゲーム』は「11日間で20億ドルを突破」したわけだが、同じ20億ドルを突破するまでに『タイタニック』は3Dでのリバイバル上映のタイミングだったので5233日間を要し、『フォースの覚醒』は54日間を要し、『インフィニティ・ウォー』は48日間を要し、『アバター』は47日間を要したと補足すれば、現在どれだけとんでもない記録が更新中であるかがわかるだろう。
「アメコミ映画の興行は初速に偏重しがち」というのは、その興収のケタこそ違えど、海外にも日本にも共通する悩ましい傾向ではあったが、ここまですさまじい勢いだともはや「初速がどうこう」という次元ではない。過去作品の「予習」が要求される作りとなっていることを不安視する見方もあった一方で、ここ日本でもそれを超える熱狂が渦巻いていて、リピーターが続出していることや、連休が明けてウィークデイに入ってからも再び1位に返り咲いていることも含め、『エンドゲーム』はこれまでのマーベル・シネマティック・ユニバース作品にはなかった広がりを見せている。その記録がどこまで伸びるかも気になるが、自分がそれよりも重要視しているのは、今作の大ヒットがこれまで国外と日本で大きな温度差のあったマーベル作品、ひいてはアメコミ作品全体の底上げにつながるのではないかということ。実際、『エンドゲーム』をより深く楽しもうと、多くの人がマーベル・シネマティック・ユニバース過去作をストリーミングやレンタルで遡って初見/再見するという現象も起こっている。
ところで、そもそも「ゴールデンウィーク」という呼称自体が、1951年に当時の大映常務取締役、松山英夫によって作られた「宣伝用語」であったことをご存知だろうか? 2019年の映画業界は、自分たちの業界がひねり出した「ゴールデンウィーク」という言葉に引き寄せられて、その日程に関しては人為的に設定された改元によって生まれた国民的長期余暇から、68年の時間を超えて過去最大規模の恩恵を受けたことになる。「蒔いた種を刈る」とは、まさにこのことだろう。(宇野維正)