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ゆずはルーツを重んじながら未来へ進む 新曲「SEIMEI」と弾き語りドームツアーのメッセージ

音楽

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リアルサウンド

 5月11日、12日の愛知県・ナゴヤドームを皮切りに、全国ドームツアー『ゆず弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ~拍手喝祭~』を開催するゆず。日本音楽史上初となる弾き語りドームツアーを目前にした彼らから、2019年第1弾楽曲となる配信シングルが届けられた。タイトルは「SEIMEI」。遥か昔から引き継がれている生命のバトンを受け取り、繋ぎながら、この先の未来に向けて進んでいく意思、そして、〈不可能の壁なんて超えてゆけ〉という強いメッセージがまっすぐに伝わってくるナンバーである。

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 作詩・作曲は北川悠仁。弾き語りドームツアーに向けて「ライブで新曲を聴いてもらいたい」とリハーサルと並行して制作されたという弾き語り楽曲だ。曲を構成している要素ももちろん、アコースティックギターと歌(あとはタンバリンが少し)。軽快なビートを生み出すストローク、フォーキーな素朴さと洗練されたポップ感を併せ持ったコード進行、切なさ、力強さ、温かさ、壮大さを内包したメロディ、そして、二人の声質、ボーカル力を存分に活かしたハーモニーなど、ゆず本来の魅力がたっぷりと込められた楽曲に仕上がっている。

 ご存知の通り、ゆずの原点は北川悠仁、岩沢厚治の弾き語り。もともとのルーツをしっかりと持ち続けたうえで、サウンドメイク、歌詞の世界を広げながら進化と変化を続ける。それこそが彼らが20年以上に渡って支持されている理由なのだと、「SEIMEI」は改めて示しているのだと思う。二人の呼吸、目に見えない感情のやり取りが手に取るようにわかる、ライブ感にあふれたサウンドメイキングも素晴らしい。

 歌詞のテーマは、前述した通り、“過去から未来へと受け継がれる生命のバトン”だ。すべての人の存在は、遠い昔からつながってきた命、遺伝子に支えられている。我々がやるべきことは、目の前の現状を憂いたり、誰かのせいにするのではなく、未来に向けて一歩踏み出し、受け取った命や光を次の世代に手渡すこと――下手をすると大げさになってしまいそうなテーマだが、こういう内容の歌に確かな説得力を持たせ、リスナーひとりひとりに語りかけることができるのも、ゆずの大きな武器。それを担保しているのはもちろん、一片のてらいもなく、どこまでも真っすぐに言葉を届けようとする二人のボーカルだ。

 ジャケットのアートワークに用いられているのは、弾き語りドームツアーのシンボルでもある「YUZZDRASIL(ユズドラシル)」。アルバム『2-NI-』(2011年)ではビーズによる印象的なアート作品を手がけた陶芸家・現代芸術家の名和晃平氏が、今作のアートワークも手がけている。そのテーマは、天界と下界を貫くように存在する“生命の象徴”だという。ヨーロッパ、アジア、ネイティブアメリカンなどの神話に登場する”世界樹”(世界が1本の大樹で成り立っているという概念)をモチーフに、人間、動物、植物を含むあらゆる生命と物質、さらに過去、現在、未来という時間軸をつなげる存在を描いているのだ。このビジュアルもまた、“ルーツに根差しながら進化する”ゆずのスタイル、楽曲「SEIMEI」のコンセプトと強く重なっている。

 また、「SEIMEI」のリリースと同時に、これまでリリースされた全楽曲310曲(一部楽曲を除く)がストリーミング解禁されることも大きな話題を集めそうだ。1998年デビュー曲「夏色」から最新曲「SEIMEI」に至る22年の軌跡を追ってみると、ゆずの音楽が“変わらないもの(ルーツミュージック)”に根差しながら、その時期のトレンドを効果的に取り入れながら、常に“新しいポップミュージック”を体現してきたことがわかる。軸になっているのは、アコースティックな響きをたたえた二人の弾き語り。そこにロック、エレクトロ、EDM、ラテン、歌謡曲、R&B、ヒップホップなどのテイスト(“匂い”と言ってもいだろう)を加えることで、“らしさ”と“新しさ”を共存させてきたのだ。

 そのスタンスは、サウンドだけではなく、歌詞にも共通している。デビュー当初は自分たちの身の回りにある風景、そのなかで生まれる感情を抒情的に描くことが多かったが、活動の規模の拡大、リスナーの数の増加とともに楽曲のメッセージ性も自然と大きくなり(その最初の集大成が「栄光の架橋」だろう)、今回の新曲「SEIMEI」にまでつながっている。どんなに広大で深遠なことを歌ったとしても、“等身大の目線で描く”という姿勢を貫くことで、リスナーの心をしっかりと掴み、揺さぶる。この一貫したスタイルもまた、ゆずの変わらない人気の理由の一つなのだと思う。

 『ゆず弾き語りドームツアー2019 ゆずのみ~拍手喝祭~』で彼らは、これまでのキャリアを網羅するようなパフォーマンスを見せてくれるはず。その根底にあるのは、「SEIMEI」と同様、“ルーツを大事にしながら前に進む”という意思だ。弾き語りの路上ライブからはじまったゆずが、その根本のスタイルを変えず、日本最大級の会場で高らかに歌とギターを響かせる。それは二人の歴史にとって、きわめて大きな意味を持つことになるだろう。(森朋之)