清原翔の“佇まいだけで魅せる”表現力 『なつぞら』で俳優としての真価が問われる?
映画
ニュース
怒涛の展開が続く『なつぞら』(NHK総合)に、ヒロイン・なつ(広瀬すず)の兄役で登場する清原翔。草刈正雄扮する祖父・泰樹に似たのか、清原の演じる照男にはどこか寡黙な印象があったものだが、ようやく彼の性格が掴めてきた。
【写真】照男(清原翔)に訪れた出会い
清原といえば、2013年より「MEN’S NON-NO」(集英社)の専属モデルとして活躍する存在である。現在も同誌の“顔”の一人でありながら、その一方で、2015年のCMへの出演を皮切りに、ドラマ、映画と、俳優活動も展開させてきた。彼の演じ手としてのキャリア自体は比較的まだ短いものの、“佇まいだけで魅せる”ことに長けている印象が非常に強い。放映中の日本経済新聞のCMでの彼の姿を思い出してみても、数少ないセリフ量であるのにもかかわらず、つい見入り、聞き入ってしまうという方も多いはずだ。やはり、モデル出身者ならではの成せる所業なのだろうか。
昨年の下半期には『忘却のサチコ』(テレビ東京系)、『深夜のダメ恋図鑑』(ABCテレビ・テレビ朝日系)、『PRINCE OF LEGEND』(日本テレビ系)といった深夜ドラマに数多く出演し、着実に俳優としての階段を上がってきた。今年はすでに、前出の『PRINCE OF LEGEND』の劇場版でも顔を見せ、そのうえ、朝ドラへもレギュラー出演しているというのだから、俳優としての階段を“駆け上がってきた”と言う方が適切だろう。
そして、清原の俳優としての真価が問われるているのが『なつぞら』である。これまで彼の参加してきた作品とはまた違い、老若男女問わず幅広い世代に視聴されるのが朝ドラの魅力の一つだろう。しかし登場したはいいが、人物数の多い朝ドラでは、口数の少ないキャラクターというのは印象に残りづらい。だがこれこそ彼の得意とするところ。ファッション誌でよく見ていたからそう感じるだけなのかもしれないが、清原自身の“シティ派”な印象の強かった切れ長の目は、わだかまりを抱える照男の無粋な青年像にも見事にフィットしているように思える。さらにここ最近では、彼にフォーカスが絞られ、この“わだかまり”をこそ、清原は演技者として表現しなければならなかった。
清原が演じる柴田照男とは、幼少期の頃より、厳格な祖父・泰樹に認められることを第一義としてきたフシがある。にもかかわらず、戦災孤児のなつが柴田家にやってきたことによって、祖父の関心はなつばかりに注がれていた。それは照男が、柴田牧場の一人前の働き手となった今も変わらないようなのだ。そんななか、照男が初めて祖父に必要とされたのが、なつを十勝に、この柴田家にとどめておくために、「結婚しろ」というものである。ひょっとすると劇中に描かれていないだけで、酪農の仕事中に泰樹が照男を必要とする瞬間はあったのかもしれない。しかし実際、私たちはその光景を目にしていない。
それ以降、演じる清原が終始浮かべる苦悶の表情には胸を締め付けられる思いがした。対面するなつに向ける言葉の一つひとつには、“慎重さ”が感じられ、そのたびごとに、またも胸を痛めていた方も多いことだろう。ここでは清原の“佇まいだけで魅せる”上手さだけでなく、セリフを喋ってこその俳優としての実力も垣間見られるものとなった。なつが遭難した際は、その責任の一端が自分にあると激しく感情を露わにし、これまで多くを語らなかった者だからこそ、彼がなつを“大切な妹”として見ていることも明らかになったのである。
本作での連日の好演によって、その魅力を持続的に示すことになっている清原。金曜ドラマ『インハンド』(TBS系)の第6話にもゲスト出演するようだが、今まさに朝ドラで注目を浴びているところとあって、こちらでも大きな話題を呼びそうである。『うちの執事が言うことには』、『HiGH&LOW THE WORST』の公開も控えているが、情報開示前のさらなる映画の企画も水面下で進んでいるはず。『なつぞら』は彼の役者人生にとって、早くも大きな転機となっているのであろうし、彼を追っていくためにも、これは見逃してはならない。
(折田侑駿)