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中国アイドルと韓国アイドルの違いと魅力は? NINE PERCENT ノンノンの現地ファンに聞く

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リアルサウンド

 前編では、2018年の『偶像练习生』、そして今年の4月6日に最終回を迎えたシーズン2『青春有你』という中国のアイドル番組がいかに社会現象になっているかを紹介した。それでは、この番組を見て出演者のアイドルにはまり、追っかけをするようになった中国の若者はどのように自国のアイドルを見ていて、どんな追っかけの日々を送っているのだろうか? 今回の主役は、陳立農(チェン・リーノン、通称:ノンノン)が大好きな大学生の女性だ。

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 まず、私自身、『偶像练习生』を初めて見たその瞬間から釘づけになってしまったノンノンのことを簡単に紹介したい。出身は台湾。2000年10月生まれだから、まだ弱冠18歳だ。『偶像练习生』初回の放送時、ピンクの服を着て登場した。180cm以上ある身長にピンクというギャップと何よりも彼の優しい笑顔に、私をはじめ、多くの女性がメロメロになった(はずだ)。彼の人気はぐんぐんと伸びていき、最終回の放送時は人気ナンバー2でデビューした。デビュー後も人気は衰えることなく、現時点で、彼の微博(weibo)のフォロワー数はなんと約1220万! この数字を見ただけでも、彼の人気ぶりがわかるだろう。

 上海の大学に通う大学3年生の徐(シュー)さんは、ノンノンを好きになった日をはっきりと覚えているという。2018年1月23日。存在を知った瞬間から彼の熱狂的なファンで追っかけをしている。「『偶像练习生』の放送が始まるのは知ってたんだけど、見るつもりはなかったんです。でも、寮にいて暇だったからサイトを開いて番組を見たんですよね。それが2018年1月23日」。『偶像练习生』の初回放送が2018年1月19日だから、数日遅れで見たことになる。

 「中学の頃から韓国のBIGBANG、特にG-DRAGONのファンです。もちろん、今でも好きだけど、メンバーが兵役に行っていることもあって活動休止しちゃっているし。これまで中国のアイドルに惹かれることはなかったんだけど、ノンノンは別格ですね。初めて見たとき、ピンクの服を着ていて、こんなに可愛いくて、かっこいいアイドルがいるんだ! って思いました」。

 シューさんの寮の部屋に入ると、真っ先にノンノンの笑顔のポスターが目に飛び込んでくる。彼のイメージカラーであるピンクが背景色になったポスターだ。シューさんの生活する寮は4人一部屋で、ロフトベッドと、その下にある机だけが、個人のプライベートな空間だ。シューさんの机には、これまたひときわ目を引くメモが貼られていた。「シュー、早く勉強しなさい。土曜日にノンノンに会いに行くんでしょ!」と書かれている。自分で書いたそのメモは、勉強したくないけど、週末にノンノンに会えるんだという自分を鼓舞するために書いたもの。そうか、彼女にとってノンノンの存在は、毎日の元気の源なんだ。そして、そのメモの横にはノンノンとG-DRAGONの写真が仲良く並んでいた。

 2018年1月23日のその日からシューさんは毎日、『偶像练习生』の投票サイトからノンノンに票を入れた。「最終回の生配信でノンノンの名前が呼ばれるまでは、本当にドキドキしていました。ずっと上位で進んできたけど、意外な展開っていうのもあり得るでしょ。2位でノンノンの名前が呼ばれたときは、本当にホッとしました」。わかる、とってもよくわかるのだ。私も最終回の生配信を見ていたので、出演者が緊張して表情が固まっている様子を見ては、「加油!(中国語で「頑張って」の意味)」「大丈夫!」と画面につぶやいていたから、とてもよくわかる。

 無事にNINE PERCENTのメンバーとしてデビューを果たしたノンノンを応援すべく、シューさんはファンの友人たちとWeChatで繋がり、情報交換して応援を重ねていった。NINE PERCENTのデビューライブは、上海でももちろん開催された。午後1時のフライトでNINE PERCENTのメンバーたちが上海入りするという情報を得たシューさんは、他のファンの子たちと一緒に空港に駆けつけた。しかし、シューさんたちが着いたときはすでにグループナンバー1人気の蔡徐坤(ツァイ・シュークン)のファンたちが中央部分を陣取っていた。

 「さすがって感じでした。ツァイ・シュークンのファンたちは朝の7時くらいから場所取りしていたらしいんです。しかも、みんなお揃いのユニフォームを着て万全の体制で待っていたんですよ」。ノンノンファンは出遅れたらしく、端のほうのスペースで待機していたそうだ。空港出口付近には、NINE PERCENT9名それぞれのメンバーごとにファンが9つの区域に別れて待機していた。しかし、結局、メンバーはVIP出口から出てきたそうで、ファンは遠くの出口から出てくるメンバーに写真を掲げて名前を叫び、ファンが考えたスローガンも口にしていたそうだ。「BIGBANGのファン同士ってとても仲良かったんですけど、NINE PERCENTはみんな、個人を応援しているので、別のメンバーのファンとはピリピリした関係なんです」。そのときも、どのメンバーのファンが一番大きな声が出るかで競争になっていたらしい。

 日頃、ノンノンの情報は、事務所のweiboと本人が発信しているweiboから得るのだという。「事務所のweiboでも、やっと近日中のノンノンのスケジュールがシェアされるようになって、私たちも準備しやすくなりました。でも、ファンの私たちの方がSNSの使い方をわかっているから、たまに『なんで人が見ないような時間帯に情報を流しているの?』とファンの子たちと愚痴ったりしています。私たちの方がPR力があるかもしれないですね」。

 ちょっと信じられない話だが、ダフ屋から情報を買っている人もいるという噂だ。「ダフ屋って色々売っているみたいなんですよ。アイドルが乗るフライト情報とか、ひどいものになるとアイドル本人の携帯番号を売っていたりなんて話も聞きます」。行き過ぎた追っかけのなかには、アイドルが宿泊するホテルの部屋番号を入手して、実際に部屋のドアをノックする人もいるんだとか。これでは、プライベートも何もあったものではない。シューさんは、もちろん節度を持ってノンノンを応援している。

 一番近距離でノンノンに会ったのは? と聞くと「うふふ、私とノンノンのラブストーリーを話しますね。2018年7月に番組の収録で上海郊外に来たときです」と興奮気味に語ってくれた。「オンライン番組の収録がこの寮から近いと知って、そんな近くに彼がいるんだと思うと、毎晩全然寝れなかったです」と恋する乙女の顏で話してくれた。

 実際に会いに行ったとき、ノンノンをはじめ、番組出演者が市場で買い物をするシーンの収録があった。市場の外で、出演者たちが出てくるのを待っていたシューさんたち。ノンノンはアイスを食べながら出てきたそう。「ノンノンたちが車で立ち去ったあと、ファンのみんなで市場に入って、彼が食べていたアイスと同じのを買って食べましたよ、もちろん」。なんとも、可愛いらしいファンたちではないか! 「私のそばを通ったときは、本当にドキドキしました。うわー近い近いって! ライブで見るノンノンとはもちろん違いますよね。だって、現実の生活の場に彼が存在しているんですから!」

 シューさんは、これまでにも何度もライブに足を運んだ。ラッキーなことに、チケットが抽選で当たったこともあった。また、ネットで、100元弱(1,600円以下)で購入した電光プレートを持って応援に行ったこともある。電源を入れると「陳立農」の文字がピカッと光り、ライブ会場ではこれをステージに向けて応援するのだ。

 「バイトはしていないです。だから、化粧品を買うのを控えて、ノンノンの応援にあてたりして工夫しています」。ノンノンのファンになって1年以上。これまでノンノンの応援のためにかけたお金は7,000元(約11万円)。話を聞いているともっとお金をかけているファンはざらにいるようだし、シューさんは自制心があり、無理な応援、追っかけはしていない感じだ。「私が知っているすごいファンは、イギリス留学をやめてノンノンのために中国に帰国した子がいますよ。ノンノンがいる場所には必ず飛んで行くといった感じの子で、多分20万元(約320万円)以上はノンノンにお金費やしたんじゃないかな」。

 中学の頃からBIGBANGのファンだったシューさん。2018年の番組をきっかけに中国アイドルを応援するようになった。韓国アイドルとの違いは何なのだろうか。「やっぱり中国アイドルだと中国語を話しているから、近い感じがしますね。それは全然違うかな」。また、番組を通してリアルタイムでノンノンの成長が見えて、自分もノンノンを育てているという感じがしたという。さらに、ノンノンの中国各地でのイベントにも行きやすいのは、BIGBANGのときとは全然違う。BIGBANGは韓国のアイドルなので、基本韓国での活動が多い。高校を卒業して、中国で開催されたBIGBANGのファンミーティングに参加したことはあるけれど、それ以降は、BIGBANGには会えていないそうだ。

 「それに、ノンノンは親孝行なんです。家族のことを考えていて、親には楽させたいって。まだ18歳なのにすごいって思います」。中国、特に大都市で生活をする若者のなかには、地元や家族から離れて生活をしている人が多い。中国人は家族との絆をとても大切にするので、ノンノンのように家族思いなのは、彼女たち中国の若者にも響くのだろう。

 「BIGBANGも今はグループで活動をしていないですし、もし、ノンノンが私の人生に登場しなかったら、大学生活はこんなに楽しくなかったかもれないです。NINE PERCENTが解散してもノンノンはアイドルを続けるわけだし、もちろん、引き続き変わらずに応援していきますよ!」

 シューさんのように、韓国アイドルから自国の中国アイドルに夢中になる若者が増えているらしい。それでは、これまで中国アイドルは存在していなかったのかというと、もちろん、ちゃんと存在していた。しかし、昔の中国アイドルと去年から登場した中国アイドルの違いをシューさんはこう話す。「今までの中国アイドルは、中国色が強すぎて何か違うなって感じがしたんです。でも、去年登場した中国アイドルは、『完成系』って感じがする。ダンスも歌も完璧だし、中国色は強くないし、その辺が全然違いますね」。

 そう、私が『偶像练习生』が初めて見たときに感じた、良い意味での違和感もこれだったのだ。“中国っぽくない”のだ。どこか韓国アイドルっぽさがありながらも、それでも中国人らしい素朴で初々しい雰囲気があったから驚いたのかもしれない。そこで、私はとても基本的な疑問が湧いた。「じゃあ、中国にはアイドルっていつから存在していたんだろう?」「韓国アイドルと中国アイドルの違いって?」。最終回では、アイドル産業に身を置く当事者へのインタビューをお送りしたい。(小山ひとみ)