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パスピエ 成田ハネダ×tofubeats特別対談 サウンドメイクにおける“音楽的ユーモア”の重要性

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リアルサウンド

 結成10周年を迎えたパスピエから、ニューアルバム『more humor』が届けられた。前作『&DNA』(2017年1月)以降(ドラマー・やおたくやの脱退に伴い)、大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(Ba)の4人編成となったパスピエ。ミニアルバム『OTONARIさん』『ネオンと虎』を経て生み出された本作は、『more humor』という題名が示す通り、刺激的なポップネスに溢れた“音楽的ユーモア”に貫かれた作品となった。

 バンドの新機軸と呼ぶべき本作のリリースに際し、パスピエの成田ハネダ(Key)と新曲「Keep on Lovin’ You」をリリースするtofubeatsの対談を企画。サウンドメイク、リスナーとの距離の取り方、活動における変化などについて聞いた。(森朋之)

「バンドの人は普通、こんなことやらない」(tofubeats)

ーー成田さんとtofubeatsさんは、ふだんはどんな交流があるんですか?

成田ハネダ(以下、成田):同じレコード会社なので、会えば挨拶するくらいですね(笑)。

tofubeats:ワーナーミュージックのなかでもお話しする機会が多い方とそうでない方がいるんですが、パスピエのみなさんは喋られる方々なので。あとはパスピエの企画(『印象D』/2015年)に呼んでもらったり、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のバックヤードで一緒にごはんを食べてもらったり。僕はフェスでも一人なので、けっこう孤独なんですよ。そのときに助けてくれるのがパスピエのみなさんっていう。

成田:いやいや(笑)。tofuくんのことはもちろん以前から知っていて、“カルチャーを踏襲している音楽”という印象があったんですよね。80年代の音楽、ニューウェイブも通ってるだろうし、そういう時代感をブラッシュアップして提示しているというか。あと、いろんな音楽を網羅してるだろうし。

tofubeats :いえ、ヘビィメタルとかは聴いてないんで。

成田:そうか(笑)。

tofubeats じつはニューウェイブもぜんぜん詳しくないんですよ。聴けばカッコいいなと思うんですけどね。成ハネさんとの共通点で言えば、シンセサイザーかなと思っていて。8ビートのシンプルなロックバンドはあまり聴けないんですけど、パスピエはリズムもおもしろいし、シンセも印象的なので。

ーー成田さんがシンセをフィーチャーした音楽に興味を持ったきっかけは、やはり80’sの音楽なんですか?

成田:そうですね。YMOもそうだし、そこから日本のニューウェイブも聴くようになって。

tofubeats:僕もYMOは好きです、人並みに。<Salsoul Records>とか<Motown>よりも、80年代以降のディスコやダンスミュージックはずっと聴いてましたね。打ち込みが入ってきて、編集されるようになってからの音楽というのかな。だからシンセも好きなんだと思います。

ーーなるほど。パスピエのニューアルバム『more humor』は、トラックメイク的な手法も取り入れられていて……。

tofubeats:そうですよね。僕も聴かせていただきましたけど、何曲かビックリした曲があったんですよ。ローファイなイントロから始まって、すぐにバンドの音になるように編集されていたり、「バンドの人は普通、こんなことやらないよな」って。ライブで演奏することを考えないで制作する方向に舵を切ったのかなと。

成田:ライブ音源を差別化するという意識はありました。曲を作ってる段階では、バンドのこともあまり考えてなかったんですよ。いままでは「こういう感じのギターを入れてほしい」みたいな感じでギターのフレーズを入れたりしてたんですけど、今回はシンセ、ドラム、仮歌だけのトラックである程度完成させて、それをバンドでどうリアレンジするか? というやり方だったので。

ーーそういう方法を採用したのはどうしてなんですか?

成田:10周年のタイミングだったんですけど、何か他のことでトピックを作りたいと思ったんですよね。僕らができる表現はやはり音楽だし、「音楽のスタイルが変わった」ということを提示したいなと。

tofubeats:そうなんですね。

成田:tofuくんはソロですけど、フィーチャリングアーティストを呼ぶ時期もあったし、一人で作る時期もあるじゃないですか。曲を聴くとタームによって色が違うのがわかるというか。バンドの場合は、「自分たちだけでどれだけ変化できるか?」ということですよね。よっぽど振り切った感じにしないと、変わったことが伝わらないような気もするし。

tofubeats:僕はわりと気楽ですね、そこは。「今日は弾き語りをやります」と言っても大丈夫だと思うんで(笑)。

ーー昨年リリースのアルバム『RUN』は基本的にゲストを呼ばず、tofuさん一人で制作されました。

tofubeats:今のモードがそうなんですよね。僕の場合は逆に「ギターを入れたい」というときに困るんですよ。自分の実力に縛られるというか。やれることが増えれば、それだけ音楽の幅も広がるんですけどね。バンドの場合は「メンバーの力をどう扱うか?」という感じなんですか?

成田:そうですね。今回の制作のときは、だいぶ悩んでたみたいですけど。けっこう時間がかかった曲もありますね。

tofubeats:メンバー全員で集まってアレンジするんですか? それとも音源を持ち帰ったり……。

成田:どっちもありますけど、ドラムが抜けてからは(楽曲制作の際に)メンバー同士でやりとりすることが多くなりましたね。実際に集まることも前体制の時より増えて。(メンバーの脱退を受けて)補わなくちゃいけないっていうのもあるだろうし。

「バンドの概念がどんどん変わってる」(成田)

ーー『more humor』のリードトラック「ONE」は、ここ数年のUSのR&B、ヒップホップの流れも感じられて。もはやバンドの音楽の枠を超えてますよね。

成田:バンドというものの概念がどんどん変わってると思うんですよ。アメリカもヨーロッパもそうですけど、音源はバキバキに打ち込みで、ライブは生ドラムというバンドが当たり前になってきて。ビートのスタイルもかなり変化してますよね?

tofubeats:確かにレンジは広がってますね。「ライブと音源が違っていても、別に良くない?」っていうのも浸透して。ビヨンセのライブ、生ドラムなんだ?!とか。

ーー去年の『コーチェラ・フェスティバル』ですね。

成田:特にコーチェラでは、ソロアーティストが生バンドでロックフェスにアプローチする流れもありますよね。

tofubeats:しかもライブ自体もすごくて。ドラムのことでいうと、打ち込みが完全に浸透してからのドラマーはビートの捉え方が全然違うと思うんですよ。トラップ以降のハイハットの叩き方だったり、リズム全体の精度も上がっているので。

成田:いまの若い世代、僕くらいの世代、もっと上の世代によってもリズムの感覚が違うだろうし。

ーービートのトレンドもすごい勢いで変化していますが、そこも当然、意識してますよね?

tofubeats:毎週新譜を聴くのは仕事だと思ってやってますけど、自分の曲に取り入れるかどうかは別ですね。ただ、クラブでは新譜をかけたいから、自分の曲もそっちに寄せないと上手く混じらないんです。なのでJ−POPとしてリリースしている自分のインスト曲をクラブでかけるときは、別バージョンにすることが多いですね。それはたぶん、バンドのみなさんがリリースした曲をライブのためにアレンジするのと同じだと思うんですが。

成田:そうですね。いま、ちょうどツアーの準備をしているところなんですが、(ニューアルバム『more humor』の曲は)初披露の曲ばかりなので、ツアーのなかでアレンジが変わることもあるだろうなと。人力の演奏はそのときの熱量次第というところもあるので、そのときに思い付いたアレンジが良ければ、そのままやるかもしれないし。

ーーtofuさんも“ライブならでは”の熱量も意識してますか?

tofubeats:よく言ってるんですけど、僕が途中で撃たれても、フェーダーさえ上げておけばライブは最後までやれるんですよ(笑)。

成田:ハハハハハ(笑)。

tofubeats:ワンマンライブだと、一部の楽器を演奏することもあるんですけど。でも、お客さんは僕がステージにいなくても、音楽が流れていれば楽しいわけじゃないですか。ライブ中にツマミを回したところで、お客さんにとって何の意味があるんだろう? って思うんですよね。もちろん自分はやっていておもしろいし、それなりに意味もあるんですけどね。

「ドラムマシンのリズムにも気持ちを込められる」(tofubeats)

ーーtofubeatsさんの新曲「Keep on Lovin’ You」についても聞かせてください。かなりポップに振り切ったナンバーですが、成田さんはどんな印象を持ちましたか?

成田:めちゃくちゃカッコ良かったですね。これは僕個人の印象なんですが、あえて“生感”を入れているというか。

tofubeats:ギターだけは生なんですよ。あとは全部打ち込みで。

成田:なるほど。ブラスやストリングスもかなり生っぽいし、でも、最初と最後はしっかりシンセが入っていて。すべてを打ち込みのビートに合わせるのではなくて、あえて外しているのもいいんですよね。僕らは人力でマシン的なリズムを表現することがあるけど、逆のアプローチだなと。

tofubeats:そうですね、クオンタイズをかけないこともあるので。ドラムマシンのリズムにも気持ちを込められると思ってるんです、僕は。“ドン、ドン、ドン、ドン”という一定の間隔で音が置かれているだけではグルーヴも何もないんですけど、そのなかでずっと踊ってると、だんだん気持ちよくなってくる。これは何かというと、定期的なビートと不定期的な体のズレから生まれるものだと思うんです。楽曲のアレンジに関しても、正確に音を揃えるだけではなくて、あえて手で打ち込むパートを加えることでグルーヴが出てくるんですよね。今回の曲でいうと、フルートのパートは鍵盤で弾いたものをそのまま使ってたり。“ズレ”をどう作るか? ということなんですけどね。

成田:理由がハッキリしてるのがすごい。バンドだったら、「いまの感じ、良かった」みたいなスタンスだったりするので(笑)。

tofubeats:いま言ったことは、先輩からの受け売りだったりするんですけどね(笑)。(石野)卓球さんが「パーカッションだけは手打ちなんだよね」みたいなことを仰っていたり。そうすることで作り手の気持ちを入れるというか……。クリックに合わせてドラムを叩いてれば、バンドも同じだと思いますけどね。

成田:そうですね。

tofubeats:「クリックに合わせて叩いても気持ちが入らない」というオジサンがいますけど(笑)、そんなことはなくて。「ここは合わせる」「ここは合わない」ということで個性が出るし、おもしろいところだと思うんですよ。

成田:聴く側の耳もそういう音に慣れてますからね。

tofubats:そう思います。特にポップスはガチガチに編集されているし、ボーカルもしっかり補正されているので。

ーー「Keep on Lovin’ You」にはタイアップ(「サントリー天然水 GREEN TEA」コラボ曲)も付いてますが、この楽曲は次のtofubeatsさんのモードと考えてもいいんでしょうか?

tofubeats:あ、そうですね。「今年は明るくて爽やかな曲ばっかり作るな」って自分でも思っていて。ついに外向きになってきたのかも(笑)。

成田:以前も“ポジ変”してませんでした?

tofubeats:『POSITIVE』(2ndアルバム/2014年)を出したときですね。あのときは外部的な要因というか、最初の1曲がなかなか出来なくて、レコード会社の担当者に「もうちょっとポジティブになってみたら?」と言われて。今回は自発的なポジティブですね。あと、シリアスなアルバムを2枚作ったから(『FANTASY CLUB』/2017年、『RUN』/2018年)、というのもあります。一人でやってるので、ほっとくと暗くなっちゃうんですよ。「暗い感じのアルバムを作った後は、明るくて爽やかなアルバムを作る」みたいな感じで変えていくほうがいいし、それを繰り返すことで両方とも上手くなれたらなと。成ハネさんはどういうことを考えて曲を作り始めるんですか?

成田:今回のアルバムに関しては、「とにかく思い付いたことをどんどん形にしていこう」という感じで鍵盤の前に座ってましたね。自分のなかでボツにしたものを含めると、90曲分くらいのデモを作って。

tofubeats:アルバム1枚のために90曲はすごいですね。全体像はあったんですか?

成田:いや、それはなくて。さっきのtofuくんの話と同じで、最初の1曲というか、自分のなかで軸になる曲、心の置き所になる曲を決めるのが大事なんですけど、どうしても時間がかかるので。

tofubeats:「この曲があるから大丈夫」という曲ですよね。

成田:そう。今回もそうですけど、そういう曲はアルバムの最後に置くことが多くて。

「最近のパスピエは正々堂々の度合いが増してる」(tofubeats)

ーー『more humor』の最後は「始まりはいつも」ですね。

成田:はい。もう一つ、「いままでとは違う」という方向に振り切った曲として「ONE」があって。2曲とも制作の最後のほうで出来た曲なんですよ。ミニアルバムやEPは(軸になる曲は)1曲でいいけど、アルバムだと2曲くらいは必要なので。

ーー歌詞もアルバムのモードを左右する大きな要因ですが、そこは大胡田さんと話し合ってるんですか?

成田:歌詞の心情については、完全に任せてます(笑)。

tofubeats:(笑)。分業制なんですね。

成田:メロディは自分で作るので、それに対して「このワードじゃないな」というときは言いますけどね。「サビの頭は、母音が“お”の言葉がいいと思う」とか。響きが心地よければ、意味はそこまで気にしないです。「ちょっと後ろ向きすぎるな」と思って、アレンジを明るくすることはありますけど。

tofubeats:サウンドにフィードバックされるんですね。僕はひとりで作ってるので、自分のなかで行ったり来たりです(笑)。歌詞と曲を分けて考えることがないから、いまの成ハネさんの話は新鮮ですね。

成田:バンドは複数人のチームだから、僕が曲を作ったとしても、絶対に原色にならなくて、音楽を提示するときに必ずグラデーションが出てくるんですよ。そこがバンドのおもしろさだと思ってるし、自分のイメージと大胡田の歌詞が真逆でも、それはそれでいいかなと。

ーーアルバム『more humor』の歌詞について大胡田さんは、「聴いてくれる人と向き合って、寄り添えるものを作りたい」とコメントしていますが、そのことについてはどう感じてますか?

成田:「10年目にして、ようやく」というか(笑)。

tofubeats:厳しい(笑)。

成田:「どういうきっかけで生まれた歌詞なのか」という話もしないんですよ。ライブのリハーサルのときに擦り合わせる感じなので。

tofubeats:演出を決める段階になってから、ということですね。そこまで歌詞の意味を気にしないのはおもしろいです。

ーーリスナーとの距離感について、tofuさんはどう思ってます?

tofubeats:僕はひとりで作ってるので、お客さんのことは意識してますね。ただ、あまり考えすぎるのも良くない気がしていて。難しいですね、そのあたりは。

成田:そうですよね。

ーーアルバム『RUN』の歌詞を読むと、以前よりも社会にコミットする意志を感じるといいますか。

tofubeats:それはリスナーに対してというより、自分のセラピーというところが大きいんですよね。歌詞を書いてるときは一生懸命なので、自分が何を考えているかわからないんですよ。曲が完成したときに初めて、「そうか、自分はこういうことを考えていたんだなと」わかるというか。「グリーンティーをテーマにすると、こういう歌詞を書くんだな」って(笑)。音楽を作っていておもしろいのは、そこなんですよね。歌詞にするというルールで書いていると、思ってもみないような言葉で出てくるので。あとは、聴いている人がイヤな気分になるのは良くないな、とか、よくわからないものは書きたくないという気持ちもあります。

ーーはっきりと明確な歌詞を書きたい、と。

tofubeats:そうですね。抽象的だったり、理解しづらいものではなくて、ストレートな言葉を置こうとしてます、特にここ最近は。無難な言葉に逃げないで、真摯さを出したいというのも意識していますね。

成田:なるほど。パスピエの歌詞はほとんど大胡田が書いてますけど、第三者がどう感じるかはともかく、彼女のなかで納得できていればいいと思っていて。リスナーが「ファンタジーみたいだな」と捉えたとしても、大胡田が「ストレートな方向に行ってる」と思えればいいというか。「ぜんぶわかってるよ」みたいな歌を歌ったら、「それはウソだろう」と思うだろうけど(笑)。

tofubeats:(笑)。成ハネさん、同じメンバーなのにプロデューサーみたいな目線ですね。最近のパスピエを見てると、“正々堂々”という度合いが上がってる印象があるんですよ。顔を出して活動しはじめたのもそうだし。

成田:そこはユルいんですけどね。ライブでは最初から顔を出してたし。

tofubeats:Instagramに大胡田さんが写真をアップしてると、いまだにビックリしちゃいますけどね(笑)。さっきの歌詞の話もそうですけど、ストレートにコミュニケーションを取ろうとしているのかなと。

成田:10年続けてきたことも大きいでしょうね、それは。

tofubeats:バンドを10年続けるのはマジですごいと思います。僕はいつから活動を始めたかが曖昧だから、周年がないんですよ(笑)。メジャーデビュー10周年まではがんばりたいと思ってますけど。

ーーDJ、トラックメイカー、アーティストの要素を兼ね備えていて、メジャーレーベルに所属しているって、かなり独特な立ち位置ですよね。

成田:ホントにそうですよ。

tofubeats:確かにメジャーにはあまりいない気がしますね。早く出てきてほしいんですけどね、いろんな人に。そうすれば、フェスの楽屋も寂しくないので(笑)。

ーー現在の立ち位置は、最初から目指していたんですか?

tofubeats:そうかもしれないです。ヒップホップを作るところから始まったんですけど、当時のシーンはストイックというか、ちょっと封建的だったんです。でも、僕は「いろいろやれたほうが得だし、絶対楽しいでしょ」という感じだったんですよね。J-POPもヒップホップもクラブミュージックも作れたほうがカッコいいと思っていたし、一本気なのもいいけど、そういうタイプではないので。いろいろ大変でしたけど、メジャーデビューして、いまはめちゃくちゃ楽しくやってます(笑)。気が付けば自分で歌うようになっていて、それはちょっと予想外でしたけど。

成田:フェスでDJをやっているときも、「歌ってほしい」って思いますからね。

tofubeats:ありがとうございます。前はシンガーの方に頼むことが多かったんですけど、めんどくさくなってきたんですよね。歌詞を書くのは自分で、メッセージも自分だから、それを1から説明して歌ってもらうのはすごく大変で。だったら、ちょっとくらい下手でも自分で歌ったほうがいいなと。やってることだけ見たら、シンガーソングライターですよね。

「ユーモアは自分たちからは生まれない」(成田)

ーーパスピエはもともと成田さんのプロジェクトとして立ち上がったわけですが、この10年間の間でいろいろな変化があったのでは?

成田:まずは「ここまで続いた」ということですよね。いつかやめようと思っていたわけではないけど(笑)、女性ボーカルのバンドの絶対数は少ないし、いつまでやれるかわからなかったので。10年続けられたことに対する安堵感もあるし、バンドとしてやりたいことも尽きないし、それを表現していきたいなと。バンドシーンのなかで居場所が出来たことも大きいですね。最初の頃は、音楽性だったり、大胡田が描いていたイラスト(デビュー当初のビジュアルは、すべてイラストだった)のイメージもあって、バンドのフェスというよりもカルチャー系のイベントに呼ばれることが多くて。それはそれでよかったんですけど、自分たちとしてはバンドシーンに両足を付けたいという気持ちがあったので、そちらに向けて自己紹介をする必要があったんです。そのためにアッパーチューンを増やした時期もあったし、そのうえで「パスピエにしかできないこと」を模索して。アルバムごとに変化している部分もありますね。

ーーこの先のビジョンについても聞かせてください。tofuさんは海外の活動も視野に入っていると思いますが。

tofubeats:自分でどんどん出ていくというより、曲が広がっていけばいいなと思っていて“ここにいながら旅をする”というのが理想です(笑)。あとは「おもしろいな」と思ってもらえるような曲を提供していきたいんですよね。アルバムの半分くらいはインスト曲なんですけど、そういうメジャーのアーティストもいないじゃないですか。ヒップホップもメジャーなラインではそこまで流行っていないし、紋切り型の音楽が多くなっている気がして。自分の役割は、“ポップでありながら、おかしい”という曲を定期的に供給して楽しんでもらうことだ思っているんですよ。おもしろいものが出てきやすい状況がないと、将来、自分が好きなものが減ってしまうし、それは損なので。

成田:パスピエに関しては、長いタームで考えることが減ってきて、“いま、おもしろいと思うものを作る”というところにフォーカスしていて。今回のアルバムで“トラックを作って、それをバンドでやる”というやり方もそうだし。最初にも言いましたけど、“バンドってなんぞや”という概念が変わっているし、極論、そこに人間がいればいいんじゃないかなって。

tofubeats:Kraftwerkみたいな?

成田:そうそう(笑)。僕はキーボードを担当してますけど、“ギターの三澤勝洸“”ベースの露義邦“という括りも要らないんじゃないかと思いはじめて。海外のバンドの映像とか観てると、自己紹介は名前だけで、担当楽器なんか言わないでしょ。

tofubeats:そうですよね。それもずっと不思議だったんですけど、バンドって、自分の担当楽器しか弾かないじゃないですか。「この曲は全員マラカス」みたいな曲があってもいいんじゃないかなって。

成田:ハハハハ(笑)。

tofubeats:Yo La Tengoが大好きなんですけど、「You Can Have It All」という曲だけ、メンバー全員で歌うんです。「こういうのっていいよな」ってめっちゃ思うし、おもしろいじゃないですか。

成田:いちばん楽しい状態を見てもらうっていうのは大事ですよね。

tofubeats:そうそう。フォーマットに曲を合わせるのか、曲にフォーマットを合わせるのかの差はかなりデカいと思っていて。バンドだからって、そこまで形にこだわらなくても良くない? っていう。

成田:そういうことも考えるようになりましたね、自分たちも。ドラムが脱退してから、ライブもやり方も変わってきてるし、この先も思い切っていろんなことをやりたいなと。

ーー最後にパスピエのニューアルバム『more humor』に掛けて、“音楽にとってユーモアとは?”について聞かせてもらえますか?

成田:ユーモアって、実は自分たちから生まれるものではないと思ってるんですよ。聴いてくれたり、観てくれる人が“おかしむ”ものというか。その反応を見て、「そうか、これをおもしろいと思うんだな」と気づいて、さらに広がっていくものじゃないかなと。自分たちは真面目にやってるのに、外から見ているとおもしろいという状態になるのがいいですね。

tofubeats:ユーモアはあったほうがいいと思います。おもしろいほうがオシャレですからね。言い方が難しいけど、オシャレに見えるものはじつはオシャレじゃないと思ってるので。

成田:なるほど。

tofubeats:僕も「どうぞイジってください」ということばっかりやってるんですよ。外国人と家族写真を撮ったり(3rd EP『STAKEHOLDER』のジャケット写真)。アレはちょっとやりすぎですけど(笑)、「イジってもらって大丈夫です」というのは大事ですね。

(取材・文=森朋之/写真=竹内洋平)

■配信情報
「野音ワンマンライブ “印象H” 2018.10.6 at 日比谷野外大音楽堂 digest」
1. MATATABISTEP(2018.10.6 Live at 日比谷野外大音楽堂)
2. トロイメライ(2018.10.6 Live at 日比谷野外大音楽堂)
3. マッカメッカ(2018.10.6 Live at 日比谷野外大音楽堂)
4. ネオンと虎(2018.10.6 Live at 日比谷野外大音楽堂)
5. S.S(2018.10.6 Live at 日比谷野外大音楽堂)
配信はこちら

■リリース情報
5th Full Album『more humor』(読み:モア・ユーモア)
2019年5月22日(水)リリース

通常盤(CD)¥2,500+税
初回限定盤(CD+DVD)¥3,241+税

CD:通常盤共通
DVD:「パスピエ 野音ワンマンライブ “印象H” 2018.10.6 at 日比谷野外大音楽堂」
01 OPENING SE~素顔
02 ネオンと虎
03 トロイメライ
04 (dis)communication
05 脳内戦争
06 マッカメッカ
07 ON THE AIR
08 MATATABISTEP
09 最終電車
10 S.S
11 正しいままではいられない

P.S.P.E盤(CD+DVD+オリジナル・T-シャツ) ¥5,000+税

P.S.P.E限定盤(ファンクラブ限定盤)スペシャルBOXパッケージ
初回限定盤(CD+DVD)+特製オリジナルTシャツ ¥5,000+税
CD:通常盤共通
DVD:初回限定盤共通
グッズ:オリジナル・T-シャツ

<早期予約特典>
対象店舗・ECサイトにて2019年4月21日(日)までにご予約頂いた方に“成田ハネダによるセルフライナーノーツ”をプレゼント
※一部対象外の店舗もございます。詳しくは店頭にてお問い合わせください。
※P.S.P.Eオフィシャルショップは早期予約特典の対象店です。

<チェーン別オリジナル特典>
以下の対象CDショップでお買い上げの方に、“オリジナルA4クリアファイル”をプレゼント
・タワーレコード全国各店/タワーレコードオンライン
・TSUTAYA RECORDS 全国各店 / TSUTAYA オンラインショッピング
TSUTAYAオンラインショッピングはご予約分のみ対象
・ローソンHMV全国各店/HMV&BOOKS online
・Amazon.co.jp
Amazon.co.jpでは、 特典付商品カートがアップされます。ご要望のお客様は特典付商品カートにてお買い求め下さい。
・楽天ブックス
楽天ブックスでは、特典付商品カートがアップされます。ご要望のお客様は特典付商品カートにてお買い求め下さい。
※デザインは後日発表
※一部店舗では特典が付かない場合がございます。事前にご予約・ご購入される店舗にてご確認下さい。
詳細はこちら

■ツアー情報
『パスピエ TOUR 2019 “ more You more “』
06月12日(水)東京 渋谷WWW X 
開場18:00 開演19:00 (問)SOGO TOKYO(03-3405-9999)
06月16日(日)広島 SECOND CRUTCH
開場17:00 開演17:30 (問)YUMEBANCHI 夢番地(広島)(082-249-3571)
06月20日(木)仙台 darwin
開場18:30 開演19:00 (問)Coolmine(022-796-8700)
06月22日(土)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
開場17:30 開演18:00 (問)キョードー北陸チケットセンター(025-245- 5100)
06月28日(金)神戸 VARIT.
開場18:30 開演19:00 (問)GREENS(06-6882-1224)
06月30日(日)福岡 DRUM LOGOS
開場16:45 開演17:30 (問)キョードー西日本(0570-09-2424)
07月06日(土)札幌 PENNYLANE 24
開場17:30 開演18:00 (問)WESS(011-614-9999)
07月12日(金)名古屋 DIAMONDHALL
開場18:00 開演19:00 (問)サンデーフォークプロモーション(052-320- 9100)
07月13日(土) 大阪 BIGCAT
開場17:00 開演18:00 (問)GREENS(06-6882-1224)
07月15日(月祝)東京 Zepp Tokyo
開場17:00 開演18:00 (問)SOGO TOKYO(03-3405-9999)
企画:パスピエ  制作:CENTRO / H3  後援:WARNER MUSIC JAPAN
チケット料金:
スタンディング ¥4,320(税込)整理番号付 
入場時ドリンク代別途必要

7月15日 Zepp Tokyo公演のみ 2階指定席 ¥4,860(税込)全席指定
入場時ドリンク代別途必要
※未就学児童(6歳未満)入場不可
※小学生以上チケット必要
チケット一般発売日:2019年05月25日(土)全公演一斉発売
チケット先行予約・公演詳細はこちら

パスピエ 結成10周年記念特設オフィシャルサイト
パスピエ オフィシャルサイト
パスピエ 公式Twitter
パスピエ 公式Instagram
パスピエ 配信サイト

■tofubeats リリース情報
デジタルシングル『Keep on Lovin’ You』
5月24日(金)リリース
「サントリー天然水 GREEN TEA」コラボソング
iTunesでの予約注文はこちら

■tofubeats ライブ情報
5月10日(金)tofubeats New Album「RUN」Release Tour Final in Sapporo
OPEN 19:00/START 19:30 前売¥3,500/当日¥4,000 ※入場時別途1D¥500
LIVE:tofubeats  OPENING ACT:パソコン音楽クラブ Visual:huez
5月26日(日)VaVa『VVORLD』Release Party@SUNHALL(大阪)
6月1日(土)森道市場@ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)/ラグナシア(蒲郡)
6月8日(土)『音泉温楽 熱海温泉・金城館 令ZERO』@(熱海) ※DJset
6月29日(土)NewJack@MAGO(名古屋)
7月14日(日)CHOICE@ユニバース(大阪)
7月20日(土)加賀温泉郷フェス(金沢)

tofubeats公式サイト