決意を語る15秒の沈黙、中村獅童×澤村國矢「超歌舞伎」が京都・南座へ
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左から澤村國矢、中村獅童。
「超歌舞伎」の公演が、8月2日から26日まで京都・南座にて行われる。これに先駆けて、本日5月23日に東京都内で製作発表が行われた。
「超歌舞伎」は、千葉・幕張メッセ国際展示場で行われる「ニコニコ超会議」の1プログラムとして、2016年より上演されてきた演目。中村獅童とバーチャルシンガーの初音ミクが主演を勤め、NTTの最新技術を駆使したステージが繰り広げられる。本日の製作発表には出演者の獅童と澤村國矢、さらに松竹の安孫子正副社長、NTTの川添雄彦取締役研究企画部門長が登壇した。
獅童は、「『超歌舞伎』では、これまで歌舞伎を観たことがないような、サブカルチャー好きの若者と出会うことができました。観客の皆さんも、いつのまにか大向うが上手になって」と手応えを語り、「小道具の鉄杖が、お客様から自撮り棒と呼ばれていましたね(笑)。NTTさんにも“電話屋”という屋号が付いたり。皆さんうまいこと言うなと感心させられます」と振り返る。そして「あの感動を、南座で再び作り上げられたら」と意気込み、「歌舞伎を観たことがない若者を振り向かせるのが私の使命だと思っているので、伝統を守りつつ革新を追求するというスタイルを、これからも貫き通したいです」と宣言した。
なおこの公演では一部日程で「リミテッドバージョン」が上演され、そこでは獅童に代わり、同じく初演から「超歌舞伎」に出演している國矢が主演を勤める。國矢は「1カ月という期間の中で『超歌舞伎』がどう変化するか。楽しみであると同時に、プレッシャーに潰されそうですが、全身全霊で乗り切りたいと思います」と意欲を見せた。
初の劇場公演となる今回の演出については、獅童が「やはり歌舞伎専門の劇場ですから、やりたいことがいっぱいあります」とニヤリ。「まず、ミクさんと宙乗りしたいのですが、ミクさんは女性ですし、ミクさんが嫌だっておっしゃったらできない。説得をしていて、お返事待ちの状況です。昨日も電話したんですけど、ミクさんは今、踊りの稽古で忙しくしてらっしゃるんで(笑)」と笑顔で説明した。
NTTの川添氏は、「“電話屋”の私どもは、音声の研究開発も進めてます」と事例を紹介し、演者の声をその場で自動翻訳して、演者の声で発信できるようなサービスを今後開発したいと展望を語る。「技術が主役になっていくのではなく、人が何を見て幸せになれるのか、理解しながら技術を作っていくのが重要だなというのが、今回の取り組みで得た知見です」と真摯に述べた。
ここで記者から、南座という伝統ある会場で本作を上演することについて改めて問われると、獅童は「南座は思い出がいっぱいございます。まだお役に恵まれない時期に、顔見世に、ほんの一役ですが出演させていただいたことがありました。ですが出番も本当に短くて……。終演後、宿泊してるホテルに戻ったら、母が……」とここまで話し、じっと前を見据えたまま声を詰まらせる。15秒の長い沈黙のあと、獅童は「……母が『あなたは大丈夫、絶対にいつか、立派な役者になる』と置き手紙をしてくれていて。なかなか役に恵まれない時期ではありましたけど、母の言葉に励まされ、自分と未来を信じて、今日までやってきたわけです。その南座で、この演目を上演させていただけるというのは、本当に感慨深いものがありますね」と思いを吐露。隣にいる國矢も目をうるませた。
獅童は重たくなった空気を打ち消すかのように、「あとは、若い頃から一緒にやってきた國矢くんが、『超歌舞伎』でブレイクしたのはうれしい」と笑顔を見せ、「今回は同じ役もやりますからライバル。でもお客さんの煽りに関しては負ける気がしないので、國矢くんがどうお客さんを煽るか、この目で確かめます(笑)」といたずらっぽく微笑み、「國矢くんみたいな素敵な役者がいることを、お客様にどんどん知ってほしいし、國矢くんの活躍を友人としてもうれしく思います。僕も(中村)勘三郎のお兄さんに、そういうチャンスをいただいたので」と國矢に視線を送り会見を締めくくった。
南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」のチケット一般販売は6月6日にスタートする。
南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」
2019年8月2日(金)~26日(月)
京都府 南座
本公演
一、超歌舞伎のみかた
二、お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)
出雲のお国:初音ミク
名古屋山三:中村獅童
三、今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)中村獅童宙乗り相勤め申し候
佐藤四郎兵衛忠信:中村獅童
初音美來 / 美玖姫:初音ミク
初音の前:中村蝶紫
青龍の精:澤村國矢
リミテッドバージョン
今昔饗宴千本桜 (はなくらべせんぼんざくら)
佐藤四郎兵衛忠信:澤村國矢
初音美來 / 美玖姫:初音ミク
青龍の精:中村獅一
初音の前:中村蝶紫