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MAN WITH A MISSION、女王蜂、KREVA……アーティストの“今”を映し出すリメイク楽曲に注目

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 MAN WITH A MISSIONが自身の代表曲「FLY AGAIN」をリメイク。「FLY AGAIN 2019」として4月29日にデジタルリリースをした。両者を聴き比べると、イントロ~Bメロに登場するリフをはじめとした曲全体の印象を決定づけるフレーズは健在だが、ギターやデジタルサウンドの重ね方に変化があり、より奥行きを感じさせるサウンドに生まれ変わっていることが分かる。また、ドラムの音量が徐々に大きくなってからイントロが始まるようになっていたり、転調の直前に2小節分のタメが増えていたりと、盛り上がりを増幅させるような変更も見られる。今年初の全国アリーナツアーを開催し、ワールドツアーも行っている今現在の彼らの規模感を反映したアレンジといえるだろう。

(関連:MAN WITH A MISSIONはシーンで“ニュートラルな存在”に? 最新ツアーで確認したバンドの現在地

 MAN WITH A MISSIONのようにライブを盛んに行うアーティストの場合、活動年数を重ねるにつれ、いわゆる代表曲を演奏する回数も当然増えていく。そんななかで彼らは、その曲を表現するための新たな方法を見出していくのだろう。2019年リリース作品の中から他の例を2つ紹介したい。

 女王蜂が1月30日にリリースしたシングル『火炎』に収録されている「あややこやや」は、2011年に発表した「告げ口」(アルバム『孔雀』収録曲)をリメイクしたものだ。「告げ口」は高音と低音をスイッチさせるアヴちゃん(Vo)のボーカル、静と動をスイッチさせるバンドサウンドによってこの曲特有の恐怖感が表現されていた。一方、「あややこやや」ではデジタルサウンドやフィンガースナップ、コーラスが効果的に取り入れられていて、アヴちゃんの歌い方もだいぶ違う。全体的に“静”の部分がさらに静かになっていて、おどろおどろしさが増した印象。「告げ口」ではギターの音で隠されていた歌詞が「あややこやや」で露わになっているのも大きな変化だ。

 ちなみに女王蜂はリメイクを行うのは2作連続である。『孔雀』収録曲の「デスコ」とシングル『催眠術』のカップリング「DISCO」もぜひ聴き比べてみてほしい。

 KREVAが6月19日にリリースする『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』は、計17曲の人気曲をバンドサウンドで新たにレコーディングし直した“ニュー・ベスト・アルバム”だ。アルバムリリースに先立って配信された「音色 ~2019 Ver.~」はソロデビュー曲「音色」をリメイクしたもの。両者の差異は端的に言うと“ボーカル&コーラス以外にメロディを鳴らす楽器がいるかどうか”というところに集約される。その他の楽曲も含め、演奏が生楽器になることで華やかさやライブ感がグッと増している。加えて「音色 ~2019 Ver.~」の方がキーが低いが、終盤で転調し、原曲と同じキーに戻る構成になっている点にも注目したい。『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』は、その名のとおり、バンド編成でのツアーを重ねてきたKREVAの進化を感じることができる作品だ。

 MAN WITH A MISSIONといえば、最新曲「Remember Me」がドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』の主題歌として現在放映中。先述の「FLY AGAIN 2019」は配信開始と同日に第4話の挿入歌として起用されていた。女王蜂はここのところ、ツアーを開催すれば各地でソールドアウトが続出する状況になっている。KREVAの『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』は先述の通り代表曲を網羅しているため、“KREVAに興味はあるが、どのアルバムから聴き始めればいいのか分からない”という人にはうってつけの作品である。以上を踏まえると、上記3作の場合、新規リスナーの流入が見込まれるタイミングで、最新型のスタイルを提示することがリメイクの狙いだったのではないだろうか。そう推測することができる。

 とはいえ、リメイク楽曲は新規ファンのみに向けられたアプローチではない。代表曲とは、言い換えると、ファンにとって馴染み深い曲である。馴染み深いフレーズの数々をそのまま残しておくか、それともあえて破壊して再構築するか、その匙加減はアーティストごとに異なるもの。“期待に応える”と“予想を飛び越える”のバランスを味わいながら、自分の好きなアーティストの性格と傾向を分析したり、その成長ぶりを噛み締めたりすることができるのは、オリジナルバージョンを知るファンだからこその特権だ。

 現在進行形のアーティストの“今”を映し出すリメイク楽曲を、ぜひご自身の視点から楽しんでみてほしい。(蜂須賀ちなみ)