正真正銘の役者人・佐藤二朗 クイズ番組司会、ツイートまとめ本出版など活躍の場が広がる理由
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今や映画やドラマで見ない日はないほど、数多くの作品に出演している個性派バイプレイヤー・佐藤二朗。今までに出演した映画・ドラマは実に300本以上。ほとんどの作品で、アドリブなのか演技なのかわからない、佐藤にしかできない表現をのびのびと披露している。しかし決して自由気ままに演技をしているわけではない。佐藤は自身の演技を、演出の範囲内でどのように発揮すべきか考えながら演じている。
佐藤は大学在学中に役者を志した。大学卒業後に就職するも、入社日と同日に退職。その後、さまざまな劇団に出入りする。26歳の頃に再就職するも、俳優への思いを捨てきれず、1996年演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ。全公演の作・出演を担当し、会社勤めをしながら精力的に活動を続けた。佐藤の独特なアドリブ演技が話題を呼び、今日では、ハリウッド映画の吹き替えやクイズ番組の司会も担当している。
また佐藤は、『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)を手がけた福田雄一監督作品に欠かせない役者となった。本作では、主人公らを導く「仏」を演じていた。手作り感満載の舞台装置やゆるい演出が特徴的で、佐藤演じる仏も「導く者」としての威厳は0。台詞を甘噛みしたり、台詞を忘れると奇声を発したりする佐藤の姿に思わず笑ってしまった視聴者も少なくないだろう。映画『銀魂』では主人公・坂田銀時(小栗旬)らと敵対する鬼兵隊のひとり・武市変平太を演じた。剣術がからっきしダメという設定の変平太を演じる佐藤は、志村新八(菅田将暉)と戦いで、へっぴり腰で戦う姿を披露。「変態」と呼ばれてしまう変平太らしい言動に、クスリと笑ってしまう。続編『銀魂2 掟は破るためにこそある』では公開直前まで役名が伏せられていたにも関わらず、SNS上では佐藤演じるキャラクターへの予想が飛び交い、期待が高まっていた。中には「佐藤二朗役なのではないか」という声も。洋画吹替に初挑戦した『シャザム!』では、収録時間7分のチョイ役でありながら、吹替版を見た誰しもが「佐藤だ」と分かるほどの印象を残している。
佐藤の魅力は俳優業だけに留まらない。日常をつぶやく佐藤のツイートに注目が集まり、現在フォロワー数は130万人を超えている。「ほのぼのしてるのに笑える」「笑いがこらえきれなくなる」「佐藤二朗さんのTweet見たら元気でる」などのコメントが寄せられ、息子や嫁に関するツイートには数千、数万のリツイートやいいねがつく。酔っ払った佐藤がつぶやく意味不明なツイートも人気が高い。その反響の大きさは、ツイッター投稿を集めた本『佐藤二朗なう』(山下書店)の出版で理解できる。厳選された117のツイートがまとめられたこの本には、そのツイートに対する佐藤のツッコみが掲載されている。
5月19日に放送された『情熱大陸』(MBS)では、飄々として飾らない佐藤の姿が映し出された。役者やスタッフと談笑する姿も、演じる姿も、ファンに手を振る姿も、とにかく自然体だ。だが番組では、自然体な魅力だけではない佐藤のさまざまな表情が映し出された。かつて公演したことのある劇場に足を運んだ佐藤は、芝居に明け暮れていた日々を思い出したのかワクワクした表情を浮かべる。佐藤が監督・脚本を務める『はるヲうるひと』の制作風景では、脚本を執筆する佐藤の真剣な眼差しを捉えている。かと思えば、妻と息子と過ごす1人の男性としての姿もあった。佐藤はインタビューで「世間様に佐藤二朗のまだ5分の1ぐらいしかお見せできていない」と答えていた。唯一無二の演技で存在感を発揮しつつ、飾り気のない雰囲気で人を惹きつける佐藤の魅力は尽きない。
(片山香帆)