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KAKUTA、2年半ぶりの新作は“ゼロからの再出発”を描く渾身の作品

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KAKUTAの新作『らぶゆ』が6月2日(日)より本多劇場で上演される。劇団結成以来20年にわたりコンスタントに活動を続けてきた彼らだが、2016年の『愚図』以来2年半にわたって活動を休止。しかしその間に新劇団員の加入、作・演出の桑原裕子が外部に書いた『荒れ野』が読売文学賞、「悲劇喜劇」賞を受賞するなど、話題には事欠かなかった。KAKUTAの休止と再開について、また新作『らぶゆ』について、桑原に聞いた。

「20周年記念公演を終えて、息切れを感じてしまったんです。『痕跡』(2014年初演)が賞をいただいて、もちろんうれしかったけれど、“作品の質を上げなければ”というプレッシャーも大きくなった。失敗しても自分たちが面白いと思うことをやりたいという本来の姿からずれてきて、しばらく考える時間がほしいと申し出ました」。セゾン文化財団のサバティカル制度を利用し、アメリカ、フランス、スウェーデン、フィンランドを回った桑原。前半こそ解散の可能性も検討していた桑原だが、北欧にたどり着いた頃には自然と「KAKUTAの次作をどうしよう」と考えるようになっていたという。

「一から創作する面白さをもう一度感じて、自分たちの力を信じられる作品にしたかった」と語る新作『らぶゆ』は、客演にみのすけ、松金よね子、小須田康人、中村中を迎えた群像劇。「4人とも本当に好きな方だけれど、互いに絡んでいるところを見たことがなかった。KAKUTAがこの実力あるみなさんをいっしょくたに混ぜる場所になれたらと思いました」。

過去にさまざまな犯罪を犯し、刑務所で一緒になった面々が出所後に再会するところから物語は始まる。「自分のせいでいろんなものを失った人たちが、ユートピアを取り戻そうとする話をやってみたいと思いました。人ってどん底にいても、新しい関係を構築したり、自分を再生させようとする。そういう人たちがたまたま組み合わさった時に、思わず救いあげられるという希望があると思うんです。けれど一方では人生そんなに甘くないと思い知らされることもある。その甘さと苦さを何度も経験していくことって、文明でもあるし、愛の道ゆきでもあると思う。『らぶゆ』とタイトルをつけたときはもっと純粋な恋愛モノにするつもりでしたが、今となってはこのタイトルがマイナスからスタートする人たちの物語にうまく当てはまっていると思います」。

この物語にある「再出発」のキーワードは、一度は解散も視野に入れていたものの、こうして新作に辿りついたKAKUTAそのものとも重なる。「仲が悪いわけじゃなかっただけに休むのは勇気がいりました。けれど、劇団休止中に役者として『俺節』という大きな商業演劇に参加したり、オフィス3○○の公演に出させていただいたのは大きかった。銀粉蝶さんや渡辺えりさん、木野花さんといったレジェンドとご一緒して、40歳そこそこで“息切れした”なんて言ってる自分はまだまだだ、って演劇欲に再び火をつけてもらったんです」。

そしてできあがったのが、桑原渾身の、キャスト16人の群像劇だ。「生きていくってちょっと窮屈だな、と感じている人に観てもらいたい。決して重い話ではないので、ぜひ楽しんで観ていただきたいです」。

KAKUTA『らぶゆ』は、6月2日(日)から9日(日)まで本多劇場にて上演。

取材・文:釣木文恵