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FUKIが語る「KISS.」への思いと12カ月連続リリースへの挑戦「大切なのはやっぱり“今”」

音楽

ニュース

リアルサウンド

 2月14日「バレンタインデー」、7月7日「七夕」、12月24日「クリスマスイブ」など、世に存在する恋愛にまつわる記念日を毎月ピックアップし、そこに寄り添ったラブソングを12カ月連続で配信リリースしていくという、女性アーティスト初となるプロジェクトをスタートさせたFUKI。5月23日「キスの日」には、その第1弾となる新曲「KISS.」が届けられた。新たな試みとなるラップパートと柔らかでナチュラルな歌声が印象的な本作は、恋愛のシーンだけではなく、聴き手の人生にまで寄り添ってくれるような、まさにFUKIならではの仕上がりで、壮大なプロジェクトへの期待値を大きく膨らませてくれる作品となっている。リアルサウンドではリリースに合わせて毎月インタビューを掲載。今月は幕を開けた連続リリースに向けた思いと、「KISS.」の制作にまつわる話を聞いた。(もりひでゆき)

今の感情をフレッシュな状態でお届けできる 

ーー毎月の恋愛にまつわる記念日をテーマにしたラブソングを12カ月連続で配信リリースすることになったFUKIさん。女性アーティストとしては初の試みとなるそうですが、そのアイデアはどんなところから生まれたんですか?

FUKI:私は基本的に実体験を元に曲を作っているんですけど、最近はもうちょっとその幅を広げたいなと思っていて。普段から映画が大好きでよく観ているので、じゃあこの映画の主題歌を書いてみようかなとか、おもしろかった本から影響を受けた曲を書いてみようかなとか、そういう作り方をするようにもなっているんですよ。

ーーノンフィクションだけにこだわらず、様々な事柄をヒントにソングライティングしていくことにトライしていると。

FUKI:はい。毎週やっているラジオのトークテーマを決めるときに、その週の記念日をよく調べていたんですね。そうしたら、世の中にはいろんな記念日、いろんな“〇〇の日”があることを知ったので、それを元に曲を作ることもできそうだなって思ったんです。それをスタッフに提案したところ、おもしろがってくれて。どうせやるなら毎月、12カ月連続でやったらどうかっていう話になったんですよね。

ーーラブソング縛りにしたのはFUKIさんらしいところですよね。

FUKI:記念日にはゴーヤの日(5月8日)とか単純な語呂合わせから生まれたものもあるんですけど(笑)、ロマンチックでポジティブな意味を持つものもすごく多いんですよ。なので、やっぱり私がやるならラブソングがいいかなって。1年分、12個の記念日を選ぶのはスムーズでしたね。あまり悩むことなく。

ーーまあでも新曲を毎月リリースしていくのは相当大変そうですよね(笑)。

FUKI:まだ始まったばかりですが、スケジュール的にはすでにギリギリな感じもあって(笑)。ただ、今回は配信でのリリースなので逆に言えばギリギリまで悩める良さもあるんですよ。サブスクリプション、ストリーミング配信の時代だから極端な話、昨日書いた曲を翌日にリリースすることだってできちゃうわけじゃないですか。今までのようにCDでのリリースだと、冬の曲であれば夏に作っていたりしたから、実際世の中に出る頃には自分の中の思いがちょっと変化していることだってあるわけで。

ーーそういう意味で今回は、タイムラグも気持ち的なズレもない状態で新曲が発表できるわけですね。

FUKI:そうそう。人間は1週間くらいでも考えてることがガラッと変化することがあるじゃないですか。その日の気分もくるくる変わるし。だから毎月リリースすることで、FUKIとしての今の感情をフレッシュな状態でお届けできるのはすごくいいなって思いますね。

ーー1年分の構想みたいなものはもうできてるんですか?

FUKI:いやいや、どんな曲がここから生まれていくのかは全然未知数です(笑)。でもそれが逆に楽しみだし、せっかくだから今までやっていなかったことにもいろいろ挑戦していきたいなとも思ってるんですよね。リリーススパンが短い分、みなさんに退屈に思われないように、いろんなFUKIを見せたいとは思ってます。私は普段けっこうロックが好きでよく聴いているので、もしかしたらそういう表情も新たに出てくるかも、ですね(笑)。ここ最近はいつも「次はどんな曲にしようかな」って考えながら、かなり活動的にはなっていて。普段行かない場所に出かけたり、いろんな人と触れ合ったりしながら、曲のヒントを手に入れようとしてます。

ーーそんな今回のプロジェクトの第1弾となるのが、5月23日の“キスの日”とコラボした「KISS.」ですね。

FUKI:日本で初めてキスシーンの登場する映画(1946年の『はたちの青春』)が公開されたのが5月23日、だからキスの日になったそうです。曲にするにあたっては、“今”という瞬間の大事さを描こうと思いました。過去を気にしたり、未来を不安に思う気持ちはあるけど、大切なのはやっぱり“今”、この瞬間だなって私は思うんですよね。で、それを伝えるためには、キスってすごくわかりやすい瞬間だなって。キスした瞬間に何かが変わる気がするとか、キスした瞬間に時が止まって2人だけの世界になるとか、そういう感覚が芽生えたりするから。

ーーお互いの思いを交わし合う行為だし、そこで得る安心感みたいなものは確実に“今”という瞬間への幸福に繋がりますもんね。

FUKI:ただ、この曲は人と人とのラブソングとして書いてはいますけど、それって別に対象は人じゃなくてもいいと思っているところもあって。相手がペットであっても、大切にしているモノであっても、空でも太陽でも星でもいいと私は思うんです。それらとキスした瞬間には何かのスイッチが切り替わって、きっとポジティブな感情になるはずだから。もっと言っちゃえば、この曲自体がそういうスイッチになってくれたらいいなって。

ーーなるほど。じゃあ、この曲で描かれている“キス”は、唇を合わせる行為というよりも、もうちょっと概念的なイメージなのかもしれないですね。

FUKI:そうだと思います。唇と唇のほうが伝わりやすいからそういう表現、書き方はしていますけど、私の中ではもうちょっと広くて大きなイメージではありますね。私自身、いつも星空を見上げながらお家に帰っているんですけど、そうすると「明日も頑張ろう!」って素直に思えるんですよ。この曲に込めた思いは、そういう感覚に近いんだと思います。

ーー歌詞に関して特に気に入っているところはありますか?

FUKI:2コーラス目のAメロ、〈I want you to know that I’m for you/ずっと隣にいるよ/君が嫌といっても離れないの〉の部分ですかね。そんなこと普段なら絶対言えないんだけど(笑)、でもキスをきっかけにスイッチが入った瞬間ならこういう言葉を発することができるんじゃないかなって。2人だけの世界だからこそ言えるキュンとするような気持ちを、このフレーズから感じ取ってもらえたらうれしいですね。

ーー僕はその前の〈不器用な僕の言葉と受け止めてくれる想いを/重なり合わせて浮かぶ絵を“みらい”と呼ぼう〉の部分もすごくいいなと思ったんですよね。キスすることで生まれる大切な瞬間を積み重ねていくことで、それが未来にも繋がっていくだなぁって。

FUKI:そうですね。“今”にフォーカスした曲ではあるんだけど、その“今”を経て、2人の将来、未来に向けて歩いていこうっていう気持ちも表現したかったから。

ーーあとはサビの〈Kiss of life time〉はFUKIさんならではのフレーズのような気がしました。ここ最近のFUKIさんは「LOVE=LIFEである」といった思いで曲作りをされていますからね。

FUKI:ラブソングというと恋愛のことを歌っていると受け取られがちだけど、私はそうは思ってないですからね。ラブソングは愛の歌であり、人生の歌でもあるというか。だからキスに関しても恋愛の一部というよりは人生の一部といった感覚なんです。そういう部分も伝わってくれたらいいなって思います。

“キス”は単語ではなくセンテンス 

ーー曲に関してはどうやって作っていきましたか?

FUKI:今回はラップ調の歌を盛り込んだものを作ってみたかったんですよ。なので、Aメロ、Bメロはちょっとフロウを感じられるようなものにして。そこは案外スラスラと作れましたね。ただ、サビはけっこう悩んだというか。優しい聴き心地のあるいいメロディを探すまでにプロデューサーのEIGOさんと一緒に何度もやり直しながら、追及して作っていった感じでした。

ーーラップパートを入れようと思ったのはどうしてだったんですか?

FUKI:今の自分のモード、ですかね(笑)。今回のプロジェクトはその時々の自分の気分を大事にしたいと思っているところもあるので。ラップっぽい部分は歌詞を書くのも歌うのもすごく楽しかったですよ。言葉数を多く詰め込むことで思いがより伝えられる実感があったし、韻を踏むことを意識するのも普段の作詞とは全く違うアプローチだったからすごく新鮮で。普段の私はメロディから作ることが多いけど、ラップの部分は歌詞先行で作っていきましたしね。

ーーラップのレコーディングもスムーズに?

FUKI:楽しみながら臨めたけど、難しさはやっぱりあったかもしれないですね。私の場合、どうしてもラップもメロディっぽくなりすぎちゃう感じがあって。そこは元々ラッパーだったEIGOさんに「もっと音程をなくして」みたいなディレクションしてもらいながらやっていきました。実際、EIGOさんがラップしてくれたものを聴いて、それをコピーしつつ。

ーーBメロではFUKIさんの持ち味であるメロっぽさとラップがいい塩梅で融合している雰囲気もありますよね。

FUKI:確かに確かに。歌とラップの中間くらいなイメージになってますね、Bメロでは。そこは自然とそういう構成にはなったんですけど、結果的にサビへのいい流れが生まれているとは思います。

ーーサビではナチュラルな表情の歌が堪能できます。

FUKI:今回は曲の内容的にもトラック的にも強く歌うのは合わないなと思ったので、とにかく力を抜くことを心掛けました。歌詞にあるように考えすぎて眠れない朝の5時くらいに聴いてほしい曲でもあるので、そういうときにぐわーっと強い歌はあまり聴きたくないじゃないですか(笑)。なので極力、優しく歌おうと。

ーーサウンドもすごくシンプルですからね。

FUKI:そうですね。全体としてはほんとにシンプルで、ひとつひとつの音と私の歌がしっかり聴こえてくるような雰囲気にしたかったんです。アレンジをしてくださった乾(修一郎)さんはライブでもご一緒させていただいている関係なので、細かい部分まで意見を交換しながら一緒に作っていくことができて。その作業もすごく楽しかったです。

ーーすごくいい仕上がりだと思います。ちなみにタイトルにピリオドをつけた理由は?

FUKI:“KISS”というワードを聞いただけで、ものすごくいろんな妄想が膨らむじゃないですか。「相手は誰なんだろう」とか「そのときはどんな服装だったのかな」とか、細かい部分までストーリーが見えてくる感じがあるというか。そういう意味ではもう“キス”は単語ではなくセンテンスだなと思ったんですよね。なので最後にピリオドをつけました。あともうひとつの理由としては、ネット検索したときに引っかかりやすいように(笑)。「KISS」という曲は世の中にいっぱいあるから、ピリオドをつけることで差別化できるかなと。

ーーこの曲がリスナーにどう響いてくれたらうれしいですか?

FUKI:恋愛中はもちろんだけど、それ以外の日常の中でもちょっと気持ちに余裕がないとき、自分に自信がなくなってしまったとき、寂しいときなんかに、気持ちを前向きにするスイッチにしてもらえたらいいなって思いますね。かしこまって「聴くぞ」っていう感覚ではなく、その人ごとの生活に寄り添って自然と流れているような、心地いいBGMになってもらえたら最高ですね。

ーー様々なトライを盛り込んだ楽曲で、12カ月連続リリースのいい幕開けが飾れましたね。

FUKI:ですね。ラップに関してはこの曲ができたことで、もうちょっと激しいものもやってみたくなりましたから(笑)。

ーー今ちょっとラッパーっぽい手の動きがついてましたね(笑)。

FUKI:ついつい手の動きがそれっぽくなっちゃいますよね(笑)。普段はそんな性格じゃないんですけど、今回のレコーディングのときはブースの中でも手が勝手に動いてました。

ーー来月は6月12日「恋人の日」になります。どんな曲になりそうか、軽く予告していただけますか?

FUKI:つい数日前に完成した出来立てほやほやなんですけど、次は夏に向けて気持ちがグッと上がっていくような曲になっていますね。夏を迎えにいくぞ! 的な。私は夏になるといつも以上に恋をしたくなるんですよ。なので誰かに会いたくなるような、愛に向かって駆け出したくなるような内容にしてみました。今回の「KISS.」とはサウンドも含め、ガラッと変わっているので楽しみにしていてください。

ーー1年分、12曲が出揃ったらそれらを通して聴けるライブにも期待したいところですが。

FUKI:やりたいですよねー。全部をまとめたアルバムをリリースするっていうのももちろん実現させたいですけど、やっぱりライブでみんなに聴いてもらいたい気持ちは大きいです。プロジェクトの途中でやるのではなく、すべてが出揃った段階でドーンとお届けしたいですね。

ーーじゃ引き続き「月刊FUKI」、楽しみにしてます!

FUKI:「月刊FUKI」っていいですね。ハッシュタグにしようかな(笑)。

(取材=もりひでゆき/写真=竹内洋平)

■リリース情報
『KISS.』
配信限定
発売:2019年5月23日(木)
配信リンク

FUKI オフィシャルサイト