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「ひとり紅白」は異世代との最高のコミュニケーション 住吉美紀アナが振り返る桑田佳祐の名演

音楽

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リアルサウンド

 Act Against AIDS(AAA)の名物企画として、桑田佳祐が繰り広げてきた「ひとり紅白歌合戦」。その完結編となる『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』が6月5日、Blu-ray&DVDでリリースされた。そして、8日放送のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(JFN系38局ネット)では、その「特別試聴会」を開催。多くのリスナーがあらためて、桑田の歌唱と卓越したバンド演奏に聴き入った。

 サザンオールスターズの全国ツアーが佳境を迎えている桑田佳祐に代わり、MCを務めたのはおなじみの住吉美紀アナウンサーだ。『第三回ひとり紅白歌合戦』をパシフィコ横浜で、生で観覧したという住吉アナがガイドとなり、リスナーのリクエストに応えていく。一曲目にオンエアされたのは、「さすらいのギター」(小山ルミ)。リスナーからは、「父親と音楽の話などしたことがなかったが、本家紅白、そしてNHKで放送された『ひとり紅白』の特集をきっかけに、50歳手前にして初めて話すようになった」とのメッセージが届き、住吉アナは「(ひとり紅白は)異世代とのコミュニケーションには最高のソフトですよね」とコメント。古くは1948年の「憧れのハワイ航路」(岡晴夫)から、およそ70年に及ぶ歌謡曲の歴史が詰まった本コンサートは、まさに世代を超えて盛り上がれる一大イベントだ。

 その後も、桑田がサングラス姿で登場し、和装のダンサーたちと届けた「夢芝居」(梅沢富美男)、桑田も「天才」と評する弘田三枝子の名曲「人形の家」と、印象的な楽曲がオンエアされていく。「プレイバック part 2」(山口百恵)のリクエストに対して、住吉アナが「山口百恵さんの原曲が素晴らしいのは言わずもがなですが、もしパラレルワールドがあったとしたら、この桑田さんバージョンもオリジナルかもというくらい、ハマってますよね。セクシーさも醸し出されていて素敵です」とコメントしていたのが印象深い。原曲にリスペクトを込めながら、桑田節で披露される名曲の数々は、ときに“桑田佳祐の楽曲”として聴き入ってしまうクオリティがある。

 そのことがよく表れていたのは、「ひとり紅白」のなかでは比較的新しい楽曲である「ハナミズキ」(一青窈)だろう。リスナーからは「桑田さんが歌うことによって、曲に新たな生命が吹き込まれ、新しい解釈が生まれることがある。あらためて、こんなに魅力のある素敵な歌だったんだ、と気づかせてもらった」とのメッセージが寄せられたが、実はこの曲、初日は原曲に近い形だったものが、桑田のアイデアで急遽、ロック調にアレンジされたという。自分がその楽曲をベストな形で届けるにはーーという探究心と、音楽に対する誠実さ。住吉アナはそれを称賛し、あらためてリスナーと感動を共有していた。サプライズ登場したサザンオールスターズメンバーと披露した、平成の名曲「世界に一つだけの花」(SMAP)にもリクエストが殺到。朗らかで楽しく、ポジティブな面が強調された歌唱だが、こちらも同時になぜか涙があふれるような、心に残るパフォーマンスだ。

 ちなみに、住吉アナの個人的なベスト3のうち、トップ2もこの日オンエアされた(3位は先週オンエアされた、久保田早紀の「異邦人」だ)。2位は「与作」(北島三郎)。住吉アナはその歌唱を「理屈を超えて、体が好きと言っている。桑田さんの大きな声の船に乗って、プカプカしているような気持ちよさがある」と表現した。そして1位は、すべての観客が感動の拍手を送った「愛燦燦」(美空ひばり)だ。荘厳な衣装と、楽しそうで、しかし真剣極まりない桑田の表情は、ぜひBlu-ray&DVDで確認してほしい。

 住吉アナと同じように、筆者もコンサートを生で観られる幸運にあずかったが、驚くのは、桑田の歌唱とスペシャルなバンド演奏が、こうして音源として聴いてもまったく色あせないことだ。その名演を振り返りながら、いつかこのような企画がまた行われるとしたら、そのときの選曲はーーと想像を広げてしまう、音楽ファンにとって楽しい一夜だった。(文=橋川良寛)