瀬戸康史、『パーフェクトワールド』で踏み出した新たな一歩 2019年は大躍進の年となるか
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『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)で松坂桃李演じる主人公の恋敵・是枝洋貴役を演じるのは瀬戸康史。川奈つぐみ(山本美月)に想いを寄せる奥手なメガネ男子が、ストーリーの結末を左右するドラマ終盤のキーパーソンになっている。また、ネットに刻まれた消せない過去をめぐる『デジタル・タトゥー』(NHK総合)では高橋克実とのダブル主演で、政治家の父との確執を抱える青髪のユーチューバー・タイガとして強烈な印象を残した。
参考:『パーフェクトワールド』山本美月が気づいた、松坂桃李への後悔 最終回が迫るなか波乱の予感
1988年生まれ、福岡県出身の瀬戸康史は、ワタナベエンターテインメント所属の若手男性俳優集団D-BOYSの一員として2005年にデビュー。若手俳優の登竜門であるミュージカル『テニスの王子様』の菊丸英二役、『仮面ライダーキバ』(テレビ朝日系)の紅渡役など着実にステップアップを重ね、主演からバイプレイヤーまで多彩な役柄をこなす若手トップクラスの俳優として活躍している。連続テレビ小説『まんぷく』(NHK総合)では主人公の腹心の部下、神部茂としてドラマ全編にわたって出演。また、ドラマや舞台、映画以外にもNHK Eテレ『グレーテルのかまど』では、気さくで愛きょうのある15代目ヘンゼルとして、かまど役のキムラ緑子と軽妙な掛け合いを繰り広げてきたことは記憶に新しい。
様々な顔を見せる瀬戸康史だが、7月からはじまるドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)で泥棒一家のヒロイン深田恭子の交際相手の警察官、蜷川実花監督による映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』で小栗旬の親友役など、話題作に切れ目なく出演予定。待ちに待った本格ブレイクの兆しが感じられる。
俳優としての瀬戸康史の特徴は、「2.5」と「弟キャラ」というキーワードで表すことができる。言わずと知れた2.5次元舞台を代表するミュージカル『テニスの王子様』(テニミュ)。原作マンガのイメージを尊重しつつ、若手キャストをそろえてリアルの熱気を表現したテニミュは熱狂的なファンを獲得。2.5次元舞台という新しいジャンルに道を開いた。大ヒットした原作もの、そして舞台という二重の制約がある条件下では俳優の演技力が試される。多くの若手俳優を輩出してきた2.5次元舞台だが、青春学園随一のテクニックを持つオールラウンダーで、愛されキャラの菊丸を演じた瀬戸康史の表現力も2.5次元舞台で磨かれたと言っていいだろう。
また、目鼻立ちの整ったイケメンではあるが、どちらかと言えば親しみを感じさせるその風貌は、キリっとした2枚目も、おどけた3枚目も違和感なく演じられるという意味で「2.5枚目」ポジションと言える。『海月姫』(フジテレビ系)の女装男子をはじめ、『まんぷく』の神部は主人公の家に泥棒に入る復員兵、『パーフェクトワールド』の是枝も幼なじみへの想いが煮詰まりまくった究極のプラトニック野郎であり、内面的にもイケメンを逸脱したひとクセあるキャラクターをそれぞれ好演している。
そのつぶらな瞳とどこかあどけなさを残したルックスが“永遠の少年”を感じさせる瀬戸康史。アヒル口をとがらせた不機嫌な表情でも目が笑っているなど、同性からも好かれるナイスガイぶりはプライベートでも発揮。D-BOYSの先輩である城田優や共演した高橋一生など経験豊富な兄貴分との交遊で知られる。そんな「弟キャラ」は俳優・瀬戸康史を語る上で欠かせない要素だ。
ドラマ『恋空』(TBS系)で演じた、主人公の恋人で病に冒されるヒロには松下奈緒演じる姉がいたし、『デジタル・タトゥー』のタイガは、死んだ兄との絆が父との相克を乗り越える上でポイントになっていた。『グレーテルのかまど』も忙しい姉グレーテルの帰りを弟ヘンゼルが待つ設定である。役の設定が俳優の性格を決めるわけではないが、自然とにじみ出るイノセントな雰囲気とほどよい距離感が愛される弟キャラを引き寄せているとも考えられる。
つぐみへの想いから樹への嫉妬を抑えることのできない『パーフェクトワールド』の是枝は、これまでの瀬戸康史のイメージから一歩踏み出した新境地といえる役だ。惹かれ合う2人を知って、それでも愛することをやめられない是枝の感じる苦味が、スイートなラブストーリーをより完璧なものに仕上げている。
期待作が目白押しの2019年。愛されキャラにはじまり、多面的な魅力をもつ俳優としてたしかな爪あとを残したその先には、大河ドラマ主演など更なる高みへの可能性も見えてくるだろう。瀬戸康史劇場はこれからが本番だ。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。