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ずとまよ ACAね、ロザリーナ、AAAMYYY、眉村ちあき、花譜……異なるアプローチで頭角表した女性アーティスト

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 MVにおける構築された世界観と独創的なライブパフォーマンスによって瞬く間にブレイクを果たしたずっと真夜中でいいのに。のボーカリスト・ACAね、THE ORAL CIGARETTESとのコラボレーションでも話題のロザリーナ、“弾き語りトラックメイカーアイドル”を掲げる異色のポップスクリエイター・眉村ちあきなど、異なるアプローチで2019年に頭角を現した女性アーティストを紹介。アニメ、ドラマ、バラエティ、ネットシーンなど、それぞれのジャンルの特性を活かしたコラボレーションも彼女たちの魅力だ。

ACAね(ずっと真夜中でいいのに。)

 ボーカリストのACAねを中心にしたユニット、ずっと真夜中でいいのに。は、インターネット上にアップしたMVをきっかけに知名度を上げた。最初の楽曲は、昨年6月にYouTubeで発表された「秒針を噛む」のMV。(「はじめまして。“ずっと真夜中でいいのに。”のACAねです。」というコメントともにTwitterも同時に開設された)。鮮烈なピアノのリフレインと尖ったギターフレーズ、言葉を詰め込みながら展開するドラマティックなメロディラインが一つになったこの曲によって注目度は一気にアップ。MVの再生回数は3400万回(2019年11月15日現在)を越え、“ずとまよ”の代表曲として認知されている。

ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』MV
ずっと真夜中でいいのに。『潜潜話』(通常盤)

 さらに「脳裏上のクラッカー」「ヒューマノイド」などを次々と発表。2010年代の邦ロック、ボカロ楽曲の潮流を汲みながら、繊細な感情表現と心地いい解放感を併せ持った楽曲、そして、楽曲の世界観を増幅させるACAねのボーカルは幅広い音楽ファンに支持された。MVもきわめて魅力的だ。既存のMVはすべてCGアニメーションで、主人公は切ない表情とシャープな視線が印象的な女の子。リリックビデオの手法も取り入れながら、レトロフューチャー的なイメージをもたらすMVは、ずとまよの優れたクリエイティビティに直結している。

 今年6月に発表した2ndミニアルバム『今は今で誓いは笑みで』がオリコン週間アルバムランキングで1位を獲得。ワンマンライブを重ねると同時に『FUJI ROCK FESTIVAL ’19』に出演するなど、さらに勢いを増してきたずっと真夜中でいいのに。は、10月30日に1stフルアルバム『潜潜話』を発表。配信シングル8曲に新曲「居眠り遠征隊」「ハゼ馳せる果てるまで」「グラスとラムレーズン」「優しくLAST SMILE」を収録した本作は、1年4カ月の軌跡が刻まれた、現時点での集大成と呼ぶべき作品だ。

ロザリーナ

 話題のアニメ作品の楽曲を次々と手がける一方、幅広いジャンルの表現者とのコラボレーションによって、シンガー/クリエイターとしての高い資質を証明したのがロザリーナだ。

 2018年4月に小袋成彬率いる<Tokyo Recordings>がサウンドプロデュースを手がけた「タラレバ流星群」でメジャーデビューを果たした彼女。昨年11月にアニメ『からくりサーカス』エンディングテーマとして書き下ろした「マリオネット」をリリース。今年に入ってからも「Over me」(アニメ『からくりサーカス』最終クールオープニングテーマ)、「ボクラノカタチ」(ドラマ『長閑の庭』主題歌)などを次々にリリースし、確実に存在感を高めている。

 「マリオネット」「Over me」のサウンドプロデュースは、エレクトロアーティストのTeddyLoidが担当。エレクトロサウンドと物語性のあるメロディ、「からくりサーカス」の世界観とリンクした歌詞がひとつになったこの2曲は、アニメファンからも共感を得て、ロザリーナのアーティスト性の高さをはっきりと示した。

 シンガーとしての彼女の魅力に注目が集まったのは、THE ORAL CIGARETTES初のフィーチャリング楽曲 「Don’t You Think (feat.ロザリーナ)」に参加したことだった。透き通った音像と美しい浮遊感をたたえたバンドサウンド、どこかノスタルジックな雰囲気を持った旋律が共存するバラードナンバーは、J-POP/バンドシーンの壁を越え、多くのリスナーに訴求したはず。山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)はロザリーナの歌声に対し、「ロザリーナの声は繊細で壊れそうだけど、強さを持っています。この声が“Don’t you think”で表現したいもの、そのものです」とコメント。(参照:THE ORAL CIGARETTES公式サイト)大阪の泉大津で行われたTHE ORAL CIGARETTSのワンマンライブに出演した際には、ORALファンから彼女の声を賞賛する反応が多く見られた。このコラボレーションは、ロザリーナにとっても大きなターニングポイントなったはずだ。

THE ORAL CIGARETTES「Don’t you think (feat.ロザリーナ)」Music Video
ロザリーナ『百億光年』(通常盤)

 さらに11月13日にはニューシングル『百億光年』をリリース。表題曲「百億光年」はTVアニメ『歌舞伎町シャーロック』EDテーマとしても話題のバラードナンバーだ。繊細な響きのピアノ、壮大なストリングスとともに〈眩しいこの街にも月が優しくささやく〉というフレーズが聴こえてきた瞬間、一気に楽曲の世界に導かれる。都会の夜の風景とともに描かれるのは、明確な未来像を持てないまま、それでもどこかにあるはずの希望を求めながら生きていく“僕”の姿。普段の生活のなかで誰もが感じている思いを普遍的なメッセージをたたえた歌に結びつけているのはもちろん、彼女自身のボーカルの力だ。優しさ、繊細さ、力強さ、そして、圧倒的な解放感を併せ持った「百億光年」の歌声は、シンガーとしての素晴らしい才能を改めて示している。楽曲プロデュースは亀田誠治。歌の魅力を引き立てることに心を砕いた、的確なプロデュースワークもこの曲の大きなポイントだろう。

ロザリーナ 『百億光年』Music Video

AAAMYYY

AAAMYYY『BODY』

 カナダ留学を経て、2017年から活動をスタートさせたAAAMYYY(エイミー)は、ヒップホップ、R&B、ポップス、ロックなどのジャンルを超え、個性的なアーティストとのつながりのなかで作品を生み出し続けているシンガーソングライター/トラックメイカーだ。

 2018年6月からTempalayに正式加入、ヒップホップクルー・KANDYTOWNの呂布のゲストボーカル、TENDRE(河原太朗のソロプロジェクト)のサポート、DAOKOへの楽曲提供など幅広い活動で注目を集めた彼女は、今年2月に待望の1stアルバム『BODY』を発表。「愛のため」をはじめ、儚くて美しいディストピアを想起させるサウンドスケープ、憂いと心地よさを同居させたボーカルによって高い評価を得た。

AAAMYYY「愛のため」

 さらに映画『HELLO WORLD』の音楽制作を手がけた「2027Sound」(OKAMOTO’Sを中心に結成された音楽集団プロジェクト)に参加。11月13日にはMONJOE(DATS)のコラボレーション楽曲「DAYZ」を配信リリースした。軽快なギターカッティング、心地よいファンクネスをたたえたトラック、しなやかに揺れるフロウがひとつになったこの曲は、現在のポップシーンの新たな潮流を感じさせるナンバー。クリエイター/アーティストとの化学反応によって進化を続けているAAAMYYYは、来年以降もポップカルチャーのなかで強い存在感を発揮するはずだ。

眉村ちあき

眉村ちあき『めじゃめじゃもんじゃ』

 “弾き語りトラックメイカーアイドル”を掲げる眉村ちあきは、あらゆる意味で規格外のアーティストだ。2016年から“眉村ちあき”としての活動をスタートさせた彼女は、ダンスミュージック、フォーク、ロックなどを独自のセンスで混ぜ合わせた楽曲、ユニークすぎる視点とエモーショナルな感情表現を併せ持った歌、そして、一人だけで行われる奇天烈にしてエンターテインメント性に富んだステージによって、異色のアイドル(もしくはシンガーソングライター)として徐々に注目度をアップ。バラエティ番組『ゴッドタン』(テレビ東京系)で披露した即興ソングが話題となり、現在は子供向け視聴者参加バラエティ番組『ビットワールド』(NHK Eテレ)にもレギュラー出演中だ。

 2019年5月にはアルバム『めじゃめじゃもんじゃ』でメジャーデビュー。洗練されたメロディとノイジーなギターが融合したポップチューン「ピッコロ虫」、彼女自身の日常を綴りながら、いつの間にか“何があっても、あなたたちはみんな素晴らしい”という真摯なメッセージへとつながる名曲「大丈夫」を含む本作は、彼女の規格外の才能をさらに幅広い層のリスナーに伝えたはず。キャラクターのおもしろさで注目を集めているが、眉村ちあきの本質は優れたポップスクリエイターなのだと思う。2020年1月8日にリリースされる2ndアルバム『劇団オギャリズム』も要注目だ。

眉村ちあき/ピッコロ虫

花譜

 最後に紹介するのは、花譜。現在15歳のバーチャルシンガーだ。2018年10月に自身のYouTubeチャンネルに「#01」を投稿。同年12月6日にボカロPのカンザキイオリによるオリジナル楽曲「糸」を公開し、本格的な活動をスタートさせた。儚さと凛とした強さを併せ持った歌声によってネットを中心に話題を集めた彼女は、今年2月に高校受験のために一時活動を休止。3月に活動を再開し、「夜が降り止む前に」が映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』の主題歌に抜擢されるなど、活動の幅を拡大してきた。

花譜 #25 「夜が降り止む前に」 【オリジナルMV】

 8月1日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されたファーストライブ『不可解』は、映画館でのライブビューイング、YouTube Liveでの生中継も行われ、Twitterのトレンドでは実況タグ「#花譜不可解」が世界1位にまで上昇。1stアルバム『観測』もヒットし、ネットシーンのみならず、幅広い音楽リスナーに認知された。現在増加中のバーチャルシンガーのなかでも、繊細な表現力を備えた歌声は際立っている。来年以降、その存在は音楽シーン全体に浸透することになりそうだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。