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ホラー、動物モノ、トンデモ映画を発掘
春錵 かつら
映画ライタ―
CURED キュアード
20/3/20(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
ゾンビ物は数あれど、本作は“ゾンビ感染”によるパニックが収束後の世界が舞台という「ゾンビ映画」から一歩進化したゾンビ・スリラー。アイルランドで起きたパンデミックの6年後、「CURED」と呼ばれる治癒した元感染者たちが、感染中の記憶や社会復帰に苦悩するさまが描かれる。 おとぎ話や昔話の「めでたしめでたし」の結びのように、これまでゾンビ映画は「治療薬が登場」「汚染されていないコミュニティに到着」といった道半ばの“希望”で幕を閉じることが圧倒的に多かった。しかしそののちにも数多の物語が分岐するはず。本作で描かれるのはまさにソコであり、「ゾンビ」というホラーアイコンを通して、社会情勢や人間模様が描かれる。ディストピア的ではないのも妙にリアルだったりする。 近年、ゾンビ映画界が元気だけど、新型コロナウイルス感染症が世界を脅かしている今年は、特に作中にある世論の動向や個々の人々の反応が身につまされる。謂れなき差別、知らずのうちに加害者になった者の自責、行き場のない憤怒、メディアは今日も恐怖を煽る。ウィルスとの戦いも結局は人との戦いで、心との戦いだ。
20/3/19(木)