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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
サンダーロード
20/6/19(金)
新宿武蔵野館
俺の人生、なんでうまくいかないんだろう。誰もがそんなことを1度は思っただろうし、経験しているはずだ。ましては、今はコロナ禍。明日をも知れぬ生活に気を病んでいる人もいるだろう。そんな人にちょっとだけ時間を作ってもらって、観て欲しい映画だ。 題名の由来はブルース・スプリングスティーンの名アルバム『明日なき暴走』(1975年発表)のオープニング曲から。邦題『涙のサンダーロード』は優しく語りかけるように始まるラブソングであり、人生の応援歌だ。 物語は愛する母の葬式からスタート。主人公の警官ジムは失語症を抱える、少し不器用な男。母との思い出を語りながら、大好きだったスプリングスティーンの曲をかけようとするが、ラジカセが故障。仕方なく自分で歌い、泣きながら踊りだす。その姿はやさしく、悲しくもおかしい。この悲しみに暮れるジムには、さらなる悲劇が待っていた……。 16年サンダンス映画祭でグランプリを受賞した12分のワンシーンワンカットによる同名短編のセルフ・リメイクの長編版。短編版では実際に『涙のサンダーロード』がかかるが、この長編版では曲すら流れない。そこに、おかしみと悲しみが増している。 監督・脚本・編集・音楽・主演はジム・カミングス。『ファイトクラブ』に刺激を受け、映画の道へと進み、長編版はSXSW映画祭でグランプリを受賞するなど高く評価されたインディーズ映画界の新星だ。短編版は公式サイトで期間限定、無料配信されているので、気になった人は、こちらをぜひ! 圧巻の演技に注目。本作は短編のその後が描かれている。
20/6/18(木)