『ハッピー・マニア』『働きマン』『さくらん』などで厚い支持を得る漫画家・安野モヨコがデビュー30周年を記念して開いている個展。安野が長らく第一線で描き続けられているのは、漫画を構成する二大要素たる絵と言葉の双方に秀でているからだと、各作品の原画やセリフ抜き出しなどが並ぶ展示を通覧すると気づかされる。絵師としては、初期のころからセンスに溢れた絵柄を描いていたことが知れる。彼女の描く絵は、線が命という漫画絵の特性にたいへんよく合致している。絵だけじゃない、同時にストーリーテラーとしての才能も抜きん出ているのは、ハッとさせられるセリフ、時を経ても胸に刺さってくる名言が各作品に散りばめられていることからよくわかる。絵と言葉、どちらも高いレベルで才能を備える表現者はひじょうに稀で、安野モヨコはそのひとりだとこの展示がはっきり示している。

20/9/2(水)