評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
監督、役者に着目して選んだこの映画
樋口 尚文
映画監督、映画評論家
ミセス・ノイズィ
20/12/4(金)
TOHOシネマズ 日比谷
家庭の主婦として子育てもしながら作家業を続けている主人公は、新たな借家に引っ越して来て早々、ノイズィな隣の主婦に翻弄される。なんとなく今どきはありがちなご近所トラブル話かと思わせるところがミソだ。しかも、作家主婦が器量よしの篠原ゆき子で、ミセス・ノイズィがかなり個性派の大高洋子というのもトラップである。下世話で矮小なエピソードを装いつつ、いつの間にか物語は反転していって現代の寓話のごときステージに連れて行かれる。古くからあるご近所騒動の物語が、ネット社会の病いをモチーフにすることで今様の変容を遂げている。また、女性監督ならではのまなざしで、前半の作家主婦が創作活動を続けてゆくことの大変さはとてもリアルに伝わってきた。
20/12/4(金)