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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『子午線の祀り』

そのスケールの大きさ、その世界観の独自性。木下順二の名作戯曲『子午線の祀り』は我が国の演劇界で稀有な作品と言えるだろう。 武家の世界を切り開いた平氏と源氏。その最終決戦の壇ノ浦。木下順二は『平家物語』に題材を得て、壮大な物語を構築した。 兄の宗盛(河原崎國太郎)に代わり平家を率いる知盛(野村萬斎)。それを支える四国の豪族、阿波民部重能(村田雄浩)は主戦論を唱えるが、知盛は和平のため舞姫・影身の内侍(若村麻由美)を京へ送ろうとする。一方、源義経(成河)は、兄頼朝から目付役として遣わされた梶原景時(吉見一豊)と対立していた。木下順二は愚行を俯瞰、というより天上高くから見下ろした視点から描いている。初演の1979年、宇野重吉が総合演出し、知盛を嵐圭史、義経を野村万作、重能を滝沢修、内侍は山本安英が扮した。萬斎が演出し、2017年版を再構築した今回。壮大な歴史絵巻に圧倒されるに違いない。

21/2/19(金)

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