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劇団四季と宝塚と歌舞伎をこよなく愛する
原田 順子
演劇ライター
歌舞伎座三月大歌舞伎
21/3/4(木)~21/3/29(月)
歌舞伎座
【第二部】 一、『熊谷陣屋』 二、『雪暮夜入谷畦道』 3月の歌舞伎座第二部は、片岡仁左衛門の時代物と、尾上菊五郎の世話物という、見応えのある2作品です。 仁左衛門が熊谷次郎直実をつとめる『熊谷陣屋(くまがいじんや)』は、昨年暮れ、南座の顔見世で上演された際の配役とほぼ同じで、京都まで観に行けず残念に思っていたので、歌舞伎座で観られるのは嬉しいですね。 熊谷は、大恩ある藤の方の子で、主君源義経からも討つなと暗に命じられていた平敦盛を、自分の息子小次郎を身代わりにして助けます。主君への忠義と息子への愛の板挟みにあい、出家した熊谷が、最後、花道の引っ込みで言う台詞を、仁左衛門は「十六年はひと昔。夢であったなあ」と言いますが、成田屋型の「夢だ、夢だ」とはまた一味違い、ここも聴きどころです。 菊五郎が片岡直次郎を演じる『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』の「直侍」も、何度観ても飽きることがありません。前半の蕎麦屋では本物のおそばを食べるのですが、盃に入った灰を箸でよけるなど、菊五郎の細かい仕草ひとつひとつが本当にうまくて、いつも感心してしまいます。三千歳は、菊五郎を相手に何度もこの役をつとめている中村時蔵。息の合った芝居が観られるのも楽しみです。
21/3/5(金)