評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
TVプロデューサーが選んだ注目作
波多野 健
TVプロデューサー、ディレクター
アンモナイトの目覚め
21/4/9(金)
TOHOシネマズ シャンテ
傑作。今一番好きな女優シアーシャ・ローナンと、イギリスを代表する名女優ケイト・ウィンスレットのふたりが素晴らしい。実在したメアリー・アニングという19世紀前半に歴史的な化石を発見した女性をウィンスレットが演じている。一方ローナンは、メアリーが営む海岸の化石を売る店に訪れる考古学好きの夫に連れられてやってきた、心を病んだ妻シャーロットを演じていて、このふたりの出会いから物語は始まっていく…。 心を閉ざしていたシャーロットがメアリーに初めて笑顔を見せるシーンから、どんどん惹き込まれた。メアリー・アニングは研究者としても優れていたが、当時の社会の中では女性は認められなかった。しかし、ダーウィンの“進化論”に影響を与えたほどの発見をしたこの女性の生き方は、今の時代にこそ讃えられるものだろう。映像もよかったが、この映画で一番感銘を受けたのは“音”だった。海岸に打ちつける激しい波の音や、部屋の中でも聞こえる海鳴り、さらには馬車の御者が握る革の鞭の音などがものすごく迫ってきて、ストーリーを一層奥深いものに見せてくれた。こんな経験は初めてだった。思わずサウンド・デザインの「ジョニー・バーン」という名前をメモしてしまった。ものすごく、お薦めです。
21/3/29(月)