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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
明日の食卓
21/5/28(金)
角川シネマ有楽町
何故、我が子を殺すのか? 子供を持つまではそれについて理解できませんでした。「毒親」なのか?とも思ったけれど、いざ、子供を育てると理解できてしまう子育ての大変さ。貧しいから、親としての自覚がないから、自分勝手な行動から、だけではない家族の問題や環境の問題、子供の問題。それらのパターンが母親の視点から描かれているのです。 ニュースだけを鵜呑みにしてはいけないと児童虐待問題に取り組むルポライターや本にもある通り、一生懸命頑張っても頑張れないときがあるよね、と母親に寄り添った物語は、多くの母親を救うに違いないし、個人的には浄化される思いで涙が止まらなかったのです。 もし自分の子供がいじめっ子だったら? もし自分の子供がいじめられっ子だったら? もし自分ひとりが働きながら子育てをしないと生活できない環境だったら? 子供の視点と母親の視点だけに焦点を当て、それぞれの思いを交差させながら心を映し出した瀬々敬久監督の手腕が光る演出方法。何より圧巻だったのは、母親を演じた菅野美穂、尾野真千子、高畑充希という女優陣。子育ては大変だけれど子供を愛し、寄り添って行こうとする3人の母親像を目にし、社会や周囲が彼女たちのような人々に手を差し伸べてくれることを願って作られた気がしてならないのです。
21/4/26(月)