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春日 太一
映画史・時代劇研究家
クリシャ
21/4/17(土)
ユーロスペース
“ぼっち”という言葉がある。周囲に溶け込めず、いつもひとり“ぼっち”でいる状況のことを指す。基本的にはネガティブな意味合いだ。 私も長いこと「ぼっち」状態で暮らしてきたのだが、あまり苦になっていない。というより、煩わしい関係に疲れないで済むので、むしろ好都合なのだ。ひとりは楽しい。 ただ、困るのは、凄く親切な人がいて、そんな“ぼっち”を勝手に見かねて「絶対に楽しいから来なよ。いい奴ばかりだから、みんなよくしてくれるよ」などと言われてホームパーティーに招かれた時だ。 口車に乗って行ってみたら、最初のうちはその人も他の参加者も気を使ってはくれるのだが、すぐにみんな既に構築されている内輪の盛り上がりになり、いつの間にかひとりぽつんと取り残される。そのことに誰も気づいていない。それぞれ楽しんでいるのだから。 そういう時、“ぼっち”はツラい。ひとりでいる時はなんともないのだが、周囲が盛り上がっている中でぽつんと入り込めないでいる時に孤独を感じるのだ。 ……本作の主人公の置かれている状況をそう解釈し、勝手に身につまされていた。さらに、終盤にはもっと苦く重い展開が待っている。かなりえぐられた。
21/4/17(土)