評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
写真を中心に注目のアーティストを紹介
山内宏泰
ライター
AKI INOMATA 貨幣の記憶
21/4/13(火)~21/5/22(土)
MAHO KUBOTA GALLERY
生物と協働するアーティストAKI INOMATAが、現在進行形のプロジェクト「貨幣の記憶」を作品化して見せてくれている。 都市を模したプラスチック製の殻をヤドカリに渡す「やどかりに『やど』をわたしてみる」、犬と人間の毛でケープをつくり着用する「犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう」などをものしてきたINOMATAが、今作で手を結んだのは貝だった。 真珠貝にお手製の「核」を挿入し真珠をつくってもらうのだけど、その核は福沢諭吉やジョージ・ワシントンら各国の通貨に描かれた人物像をかたどっている。 ある種の貝は、かつて貨幣として使われた歴史がある。「貨幣的人物」の真珠を内に宿した貝は、あたかも時空を超えた貨幣の概念そのもののよう。 貨幣とは、紙幣や硬貨そのもののことではなくて、信用に基づく価値の体系のことをいう。ここに新種の貨幣を生み出したINOMATAは、アートという「もう一つの価値の体系」があることを、高らかに主張している。
21/5/1(土)